地中海の中央に突き出すブーツの形の半島、それがイタリアです。
世界でもっとも多くのユネスコの世界遺産を有するイタリア。そこには紀元前から栄えた文明の遺跡が残り、天才たちが残した美術品があふれ、美しい景色と美味しい食べ物が、来る人を迎えてくれます。
魅惑的なイタリアの町を観光するのならば、どのような点に注目すべきでしょうか。初めてのイタリア旅行でもハズさないよう、各都市の見どころをご紹介します。
イタリアの主要都市
日本と同様に、南北に長いイタリア。異なる町を訪れるたびに、まるで違う国にやってきたような錯覚を起こすほど。
初めてイタリアを旅行する方も必見、イタリアの主要都市の魅力をお伝えします。
ミラノ|ファッション好きは必見、流行の発信地

イタリアの経済の中心であり、流行の発信地としても名高いミラノ。イタリアを代表する大企業の本拠地があり、ファッションや家具の見本市も開催されます。
イタリア北西部に位置するロンバルディア州の州都であるミラノは、万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチにもゆかりが深い町。北イタリアらしい優雅と格式を感じる街並みは、初めて旅行する人でも魅了されます。
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ミラノの見どころ
ミラノの中心で威容を放っているのがドゥオモです。ヴァティカン市国にあるサン・ピエトロ大寺院に次ぐ広大さを誇るドゥオモは、ゴシック建築の傑作。ミラノ公国の権力者たちによって、篤く守られてきました。
ミラノのドゥオモは、内部を拝観できるだけではなく、尖塔が立つ屋根まで上ることもできるのが観光客に人気です。針のような尖塔の数々やミラノの街並みを、ドゥオモの屋根の上から見ることができます。
そのドゥオモに隣接しているのが、イタリアのブランド店が軒を連ねるヴィットリオ・エマヌエレ2世のガレリア。いかにもヨーロッパという雰囲気のガレリア内には、ブティックだけではなく、洗練されたバールや郷土料理の老舗レストランもあります。
またミラノといえば、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』が有名です。当時のミラノ公爵の命によりサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に残された同作品、鑑賞するためには予約が必要ですが、まさに世紀の傑作です。一生の一度の思い出に、見る価値があるかもしれません。
ミラノにはそのほか、ミケランジェロの最後の『ピエタ』が残るスフォルツェスコ城、ラファエロやカラヴァッジョの傑作が所蔵されているブレラ美術館などの人気のスポットがあります。ブレラ美術館周辺は、富裕層が集う洗練されたお店が並んでいます。ウィンドーショッピングをするだけでも楽しいかもしれません。
ヴェネツィア|フォトジェニックなアドリア海の真珠

アドリア海の真珠と呼ばれる美しい町、それがヴェネツィアです。
18世紀にナポレオンに占領されるまでおよそ1000年、オリエント貿易と巧みな外交によって大いに栄えたヴェネツィア。100を超える小島を400余の橋によってつないだ世界でも随一の海の都として、ユネスコの世界遺産に認定されています。町に張り巡らされた運河や、ムラーノ島を中心に製作されているガラスの工芸品が観光客には人気です。
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ヴェネツィアの見どころ
ヴェネツィアの特異な景観は、どこを切り取っても絵になります。
その中心にあるのは、守護聖人に捧げられたサン・マルコ大聖堂です。ヴェネツィア派と呼ばれる芸術の天才たちによって設計・装飾されたこの大聖堂、ヨーロッパに冠たる経済力を誇った栄華を感じとることができます。
大聖堂と同名の広場の一角には、ヴェネツィア1000年の歴史を支えた政治の中心ドゥカーレ宮殿があります。交易相手であったオリエントの影響も感じるエキゾチックな様式は、海の色に映えて写真映えもばっちり。
そのほか、運河にかかるため息橋やリアルト橋、ヴェネツィアの歴史を支えた貴族たちの屋敷が並ぶ大運河など、見どころは尽きません。
フィレンツェ|ルネサンスの中心地、文化や美術の都

女性的な優美さを感じるトスカーナ州の州都、それがフィレンツェです。
花の都の名にふさわしい豪奢で典雅な街並みが特徴のフィレンツェは、14世紀に興ったルネサンス文化の中心として栄えました。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロを生んだルネサンスの町を支えたのは、強力な経済力です。商人たちの財力によって美術品が町中にあふれ、トスカーナ公国の当主となったメディチ家が建造した宮殿や教会も、花の都の名にふさわしい華やかさで佇んでいます。
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フィレンツェの見どころ
フィレンツェ人の心の拠り所でもあるドゥオモ。
聖母マリアに捧げられたこの大聖堂は、まさにルネサンス文化の粋といっても過言ではありません。オレンジ色の巨大なクーポラをはじめ、ルネサンスの天才たちの手によるフレスコ画、隣接するサン・ジョヴァンニ洗礼堂など、最盛期のフィレンツェを彷彿とさせる美しさです。
また、ミケランジェロの手になる巨大なダヴィデ像が佇む(本物はアカデミア美術館所蔵)シニョーリア広場、レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロをはじめとする芸術家たちの傑作が並ぶウフィツィ美術館、2人の王妃を輩出したメディチ家の私邸であったピッティ宮殿(現在は美術館)、町の中心を流れるアルノ川にかかるヴェッキオ橋、グロテスク様式を体現したボボリ庭園など、フィレンツェは歩けば文化財に遭遇するという、稀有なる芸術の都なのです。
歴史あるレザーの商品も魅力的で、工房を訪ねつつショッピングも楽しめます。
ローマ|古代帝国時代の世界の中心

イタリア共和国の首都であるローマ。
古代の帝国時代には「世界の中心」と呼ばれ、2世紀の最盛期は100万人都市であったといわれています。その遺構が町のあちこちに残るローマは、キリスト教の大本山ヴァティカン市国を擁し、1871年からイタリア王国の首都となりました。数世紀にわたり観光客のみならず巡礼者たちも受け入れてきたローマは、初めて訪れる人にもフレンドリーな空気を感じさせてくれる町です。
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ローマの見どころ
ローマの町のシンボルといえば、まずコロッセオがあげられます。1世紀に完成した巨大闘技場は、一部は崩落したものの、古代ローマのロマンを十全に感じさせてくれる遺跡です。
そのコロッセオを中心に、帝国の政治の中心であったフォロ・ロマーノの遺跡、そして皇帝や貴族たちが居を構えていたパラティーノの丘の遺跡が続いています。現在の市役所が置かれているカンピドーリオは、古代の遺跡をミケランジェロが再設計したもので、世紀の天才による古代とルネサンスの融合のシンボルといった趣があります。
時代をバロック時代に移せば、フェリーニの映画にも登場したトレヴィの泉、永遠の名作『ローマの休日』に登場したスペイン階段などを見ることができます。こうしたさまざまな時代が交錯しながら町を構成しているローマは、訪れる人をドラマチックな気分にさせてくれるのです。
ちなみに、日本でも大人気のパスタ「カルボナーラ」は、ローマを州都とするラツィオ州の郷土料理です。ぜひ本場のその美味しさも味わってみてください。
ナポリ|南イタリアの美食の都

レモンと青い空が美しい景色を生み出す南イタリア。その南イタリアの代表的な都市がナポリです。
「ナポリを見て死ね」ということわざが生まれるほど、風光明媚な町として知られてきたナポリ。かつては文豪ゲーテをはじめ、ヨーロッパのエリート層たちの憧れの地でした。
ギリシア人、ローマ人、ノルマン人、フランス人、スペイン人の支配下に置かれた歴史を持つナポリは、さまざまな文化や人種の交差点でもありました。それらを受け入れてきたたくましいナポリっ子たちのスピリットは今も健在で、美しい街並みと混沌とした空気が絶妙な調和を作り出しています。
ちなみにイタリアを代表するストリートフード「ピザ」はナポリが発祥。2017年にはナポリのピザを作る技術が、ユネスコの無形遺産に認定されています。
そしてナポリは、イタリア人も認める美食の都。ピザだけではなく、リコッタチーズを使ったお菓子や海の幸を堪能できます。
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ナポリの見どころ
ナポリは南イタリアを代表する海の町です。地中海の青い海と空が、「オー・ソレ・ミオ」や「サンタ・ルチア」などのナポリ民謡を彷彿とさせます。
ノルマン王家やフランスのアンジュー家、スペインのブルボン家が統治していた時代の王宮が町の中に点在しているほか、オペラの殿堂といわれるサン・カルロ劇場や、ポンペイから発掘された貴重な遺物を鑑賞できる国立考古学博物館などがあります。
また、町の中心を貫くスパッカ・ナポリ地区は、ナポリっ子たちの喧騒がいかにも南イタリア的。その雰囲気を味わいつつ、ピザやジェラートを片手に散策するのも一興かもしれません。
ナポリ近郊にはポンペイの遺跡があるほか、カプリ島やイスキア島などのリゾート地に向かう船も多く、南イタリア特有の明るい光がそこかしこにあふれています。
主要都市から足を伸ばしたいスポット
イタリアの魅力は、ご紹介した主要都市だけにかぎりません。
イタリア半島中に点在する小さな町々には、大都市とは異なる静かな時間が流れています。歴史を感じる石畳を踏みしめつつ、ぜひこうした町の美しさを感じてみてください。
いくつかのおすすめの町や場所をご紹介しましょう。
シチリア|バカンス先としても人気な地中海の島

イタリア人のバカンス先としても人気のシチリア。映画『ゴットファーザー』や『ニューシネマパラダイス』を思い起こさせる乾いた空気の中に、レモンの花が香ります。
中世のノルマン人の王たちに愛されたシチリア島は、アラブの影響を感じる州都パレルモを中心に、古代ギリシアの遺跡が残るアグリジェント、ローマ時代の劇場が残るタオルミーナなど、各町々に見どころが満載です。
イタリア国内でも知られる美味しいアーモンドや、エトナ火山の土壌から生まれるワインなどの美味も魅力的。朴訥としたシチリアの人々と交流しながら、島の町々を楽しんでみてください。
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アマルフィ|景観の美しさは必見

景観の美しさでは定評のあるアマルフィは、映画『アマルフィ 女神の報酬』で日本でも知名度を上げました。
アマルフィ海岸と呼ばれる断崖に立つその景観で有名なアマルフィ、かつては強力な海軍を持ち、経済的な繁栄を享受していました。現代のイタリア海軍旗には、ヴェネツィア、ピサ、ジェノヴァと並んで、アマルフィの町の紋章が描かれており、そのことからも、かつての栄華をしのぶことができます。
高低の激しい町を散策するときには、11世紀創建の町のドゥオモを目印に楽しんでください。ドゥオモのファサード部分にある見事なモザイクもお見逃しなく。
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ピサ|有名な斜塔やロマネスク様式の大聖堂

ピサの斜塔で有名なピサは、実はジェノヴァやフィレンツェの最大のライバルとして歴史に名を残してきました。
トスカーナ州のアルノ川をさかのぼった場所にあるピサは、交通の要衝であり、強力な海軍と経済力によって、11世紀にはイスラム海軍を破るほどの勢力を持つようになります。
その名残が、かの有名なピサの斜塔です。
現在は斜塔ばかりが有名ですが、本来はロマネスク様式の大聖堂の鐘楼部分に過ぎません。実際に目にするとその傾斜ぶりにびっくりする斜塔とともに、ぜひ大聖堂やピサの古い町並みも楽しんでみてください。
14世紀に創設された由緒あるピサ大学もあるピサでは、落ち着いた佇まいを堪能できます。
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マテーラ|世界遺産に登録された洞窟式の住居

1993年にユネスコの世界遺産に登録されたマテーラは、ブーツの形をしたイタリア半島の土ふまずのあたりにある小さな町です。
石灰岩をくりぬくように作られたマテーラは、かつては南イタリアの貧困のシンボルであり、特筆すべき産業もない町でした。ユネスコ世界遺産登録後、その特異な景観を求めて観光客が増え、サッシと呼ばれる洞窟式の住居が洒落たレストランやお店に変わり、賑わいを見せるようになりました。
家々の白い壁が太陽に反射する昼の美しさもさることながら、オレンジの街灯に町が浮かび上がる夜景も必見です。かつてはその土壌の豊かさを求めて古代ギリシア人たちが入植した南イタリア、温暖な気候と豊かな大事に育まれた食材を楽しめるのも嬉しいものです。
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地方色が強いイタリア|現代まで残る都市国家時代の名残
観光客が大挙するイタリアですが、国が統一されたのは1861年のことです。古代には地中海を囲むような広大な帝国が建設されたものの、帝国崩壊後のイタリア半島は、いくつもの都市国家が存在する時代に突入し、それは近代まで続きました。
たとえば、現在イタリアの首都があるローマは教皇領、花の都と評されるフィレンツェはトスカーナ大公国、ピザの発祥地といわれるナポリはナポリ王国といった具合に、イタリア半島内にはさまざまな都市国家が拮抗していました。時代ごとに興隆するヨーロッパの強国、スペインやフランス、オーストリアの支配下に置かれた都市もあり、その歴史は非常に複雑です。
そうした都市国家時代の名残が現代まで残るイタリアは、町ごとの地方色が濃いのが特徴です。歴史や文化、言葉、料理には、それぞれの地方の特色があり、それがまた世界中から観光客を牽引する魅力になっているのかもしれません。
ファションやデザインに興味がある方には刺激的なミラノ、イタリア映画が好きな方には町そのものが舞台のようなヴェネツィア、アートの世界に浸りたい方は天才たちの偉業を伝えるフィレンツェ、紀元前からの歴史を感じたい方には地中海の主役として名を馳せたローマ、南欧の海と空を堪能したいのならばカンツォーネに歌われるナポリ。そしてそんな大都市の合間に点在する、小さくも素敵な町の数々……。中世から変わらない面影を宿す小さな町に、より心惹かれる方も多いことでしょう。
より深くイタリアの魅力を味わいたい方は、以下でご紹介する目的別のおすすめスポットもぜひチェックしてみてくださいね。
イタリアをどう楽しむ?目的別おすすめスポット!
マニアックな観光スポットを訪れたい!「二度目のイタリア」シリーズ
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参考文献
小学館日本大百科全書
平凡社世界大百科事典