2025年7月、アメリカのシリアル大手WKケロッグが約31億ドル(日本円で約4,500億円)で買収されることになりました。取得を決めたのは、イタリアの製菓メーカー「フェレロ(Ferrero)」です。
フェレロといえば、まず思い浮かぶのは「ヌテラ(Nutella)」でしょう。イタリアでは「これなしでは一日が始まらない」と言われるほど、国民的なヘーゼルナッツ入りチョコレート・スプレッドです。ほかにも「フェレロ・ロシェ」や「キンダー」など世界的に愛されるブランドを多数展開しています。
フェレロはケロッグ買収以前から、新たな分野への進出を試みてきました。今回紹介するのは、そのひとつ、ずばり家庭用ジェラートです。

発想源はあの人気チョコレート
フェレロのジェラートは、いずれも既存自社製チョコレートのイメージや風味を基にしているのが特徴です。以下に4つを選んで、レビューとともに紹介しましょう。
まずは『フェレロ・ロシェ・スティック』。元となったチョコレート「フェレロ・ロシェ」は、金色の包みをもつ、見た目からして特別感のあるボール状です。日本でも売られているので、記憶しておられる読者もいることでしよう。ヘーゼルナッツをまるごと一粒、サクサクとしたウエハースとクリーミーなチョコレートで包んだものです。

2021年に登場したジェラート版であるフェレロ・ロシェ・スティックは、形こそ違えど、フェレロ・ロシェをそのままジェラートにしたものといってよいでしょう。ひと口かじれば、クラッシュナッツ入りのチョココーティングが「パリッ」と割れ、香ばしいヘーゼルナッツと濃厚なチョコが口の中に広がります。加えられたとろみあるソースも味わいに奥行きを添えます。チョコレート版と異なり、クラシック、ダーク、ホワイト、キャラメル風味に加え、2025年夏にはオレンジやカスタードクリーム風味、とバリエーションが拡大しています。


次は『ラファエロ・ジェラート・スティック』。オリジナルの「ラファエロ」は、ホワイトチョコのフィリングをウエハースで包み、表面をココナッツフレークで覆った、まるで雪玉のようなプラリネです。中にはローストされたアーモンド一粒が入っています。

こちらもジェラート化にあたり、オリジナルの味を尊重しているのがわかります。プラリネと同じく、表面にはココナッツフレークがコーティングされ、アーモンド粒もカリッとしたアクセントを加えています。プラリネのミルキーな味わいはそのままに、ジェラートならではの爽やかさが加わって、トロピカルな雰囲気に仕上がっています。

ここまで2品のベースとなったチョコレートは、日本で食べたことがある方も多いでしょう。いっぽうで、次に紹介する『ポケットコーヒー・ジェラート』の“元ネタ”は、ちょっとした説明を要します。
コーヒーリキュール入りチョコレート「ポケットコーヒー」は、実は1968年誕生というロングセラーです。
「ドライブ中に、どうしてもコーヒーが飲みたくなる」といったイタリア人が、バッグにそっと忍ばせている姿が珍しくありません。
しかし、この商品が店頭に並ぶのは毎年10月から5月頃まで。気温が16℃を超える夏場は、風味の劣化や品質の変化を避けるため販売が休止されるのです。

2022年に登場したジェラート版は、そうした“夏の空白”を埋めてくれるものです。濃厚なエスプレッソのほろ苦さと、チョコレートの甘みが溶け合う、ちょっぴり大人の味わいです。夏でもポケットコーヒーの風味が懐かしいファンにとって、まさに待望の一品といえましょう。

そして、いよいよフェレロによるジェラート・シリーズの面目躍如たるプロダクトがこちら。『ヌテラ・ジェラート』です。2024年6月にヌテラ誕生60周年を記念して発売されました。従来の同社製ジェラートがいずれもバータイプであったのに対し、初の容器入りです。

ヘーゼルナッツ風味のジェラートにヌテラがミックスされています。クリームはなめらかで、口溶けとともにナッツとカカオの風味が広がります。オリジナルであるペーストのヌテラに比べると甘さはやや抑えられていますが、軽やかな口当たりで、濃厚ながらも食べやすい仕上がりです。

最新トレンドはスーパーを見よ
2024年、イタリアの家庭用市販ジェラートの市場規模は19億ユーロ(約2,900億円)に達しまた。そのなかで、フェレロはこの4年間で年平均成長率42.3%と、市場全体の成長率を大きく上回りました。前述のように知名度の高い自社製既存ブランドを、ジェラートに応用するという、消費者にとって親しみやすくインパクトのある商品開発が、成功の鍵といえます。
とくにヌテラ・ジェラートの人気は早くも急上昇しています。2025年3月、民間団体の主催で一般消費者1万2千人が新製品から選ぶ「プロダクト・オブ・ザ・イヤー」のひとつに選ばれました。
今回紹介したフェレロ社製ジェラートは、イタリアをはじめとする一部の国と地域のスーパーマーケットで販売されていますが、いずれも日本では未発売。次にイタリアを訪れたら、街角のジェラート店だけでなく、スーパーの冷凍ケースも覗いてみてください。ジェラート王国における最新トレンドを感じられるはずです。

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