グッチ銀座のエレベーターに乗って7階のギャラリーに足を踏み入れると、横尾忠則の新作の背景に聳え立つ真っ赤な足場!ラグジュアリーブランドが手がける、大胆なアートとのコラボレーションが話題を呼んでいます。
日本各地でアートプロジェクトを展開するグッチ
2025年、グッチは、創造性を通じたコミュニティとの共創をテーマに、東京・銀座のグッチ銀座 ギャラリーでの展覧会を皮切りに、「瀬戸内国際芸術祭2025」が開催されている豊島、国際都市として賑わう大阪という3つのエリアでアートプロジェクトを展開しています。
2020年、グッチ渋谷 ミヤシタパークのオープニングを飾ったウィンドウ アートプロジェクトを手がけた横尾忠則。そのダイナミックで創造的なコラボレーションをさらに発展させたのが、グッチ銀座 ギャラリーにて開催中の個展「横尾忠則 未完の自画像―私への旅」。テーマである「未完」とは、芸術の創造性は完成された瞬間よりも、むしろ未完成であることにこそ宿るという、横尾氏が一貫して掲げてきた美学に基づいています。

1960年代から約60年にわたり、千変万化するスタイルと森羅万象に及ぶテーマを駆使しながら数々の作品を生み出してきた横尾氏は、ひとつの完成形にはとどまらず、常に変貌と挑戦を繰り返してきました。その姿勢が、常に進化を続けるグッチというブランドの在り方とも響き合うと感じたのが、この展覧会のきっかけになったそうです。


55年の時を超えて出現した「未完の足場」
美術評論家の南雄介氏によるキュレーションのもと、「旅」を想起させるテーマを描いた横尾作品を中心に、今回初公開となる自画像や家族の肖像など最新作6点を含めた約30点の作品を展示。さらに、本展のために特別に解放された屋上スペースでは、1970年の大阪万博で大きな話題を呼んだ、横尾忠則による「未完」のイメージをシンボリックに提示した真っ赤な足場のインスタレーションを再現しています。

正直、筆者は「横尾忠則さんはスゴイ」と思いながらも、大規模な個展を見終わると疲労困憊してしまうこともあります。それが、このGUCCI銀座ギャラリーの「未完の自画像 – 私への旅」は、自分が足場を歩けるという体験型ということを含め、いままで観た横尾忠則の個展の中でも、もっとも好きな展覧会となりました。

初夏に描いた新作7点を追加展示
11月9日(日)までの会期延長にともない、新作を含む7点を追加展示いたします。そのうち6点は、今年初夏に描かれたもので、既に展示されている自画像・家族肖像シリーズの続編です。


本展は、横尾氏の作品すべてに共通するテーマ「未完」への新たなアプローチであり、「展覧会という発表の場でさえも未完成であることによって、より豊かな創造性が宿る」という考えを体現しています。

ラグジュアリーブランドが手がけるアートとのコラボレーションは、入場無料でアートの最前線に触れることができる機会。ぜひ銀座を訪れて、イタリアンブランドの新作をチェックしつつ、価値あるアートを体感してください。
「横尾忠則 未完の自画像 – 私への旅」
会期 : 11月9日(日)まで ※会期延長
11:00 – 20:00(最終入場 19:30)
会場 : グッチ銀座 ギャラリー(グッチ銀座7階)
入場無料・予約不要
https://www.gucci.com/jp/ja/nst/gucci-ginza-gallery
「未完」をテーマにしたインスタレーションは、グッチ大阪、心斎橋大丸 グッチショップ、心斎橋大丸グッチ サテライトショップでも展開
横尾忠則 新作インスタレーション「未完の足場」
会期 : 11月上旬まで
開催場所 : 香川県小豆郡土庄町豊島家浦889(家浦港より徒歩約3分)
※開催内容・時間は予告なしに変更となる可能性がございます。
※展示は天候・時間によってはご覧いただけない場合がございます。

横尾忠則
現代美術家。1936年兵庫県生まれ。72年にニューヨーク近代美術館で個展。その後もパリ・ベネチア・サンパウロの世界3大ビエンナーレに招待出品。アムステルダムのステデリック美術館、ハンブルグ工芸美術館、パリのカルティエ財団現代美術館、東京都現代美術館、東京国立博物館など世界各国の美術館で多数の個展を開催。2012年神戸に横尾忠則現代美術館が開館。2013年香川県 豊島に豊島横尾館が開館。2000年ニューヨークアートディレクターズクラブ殿堂入り。2015年高松宮殿下記念世界文化賞受賞。2023年文化功労者、日本芸術院会員。作品はメトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、大英博物館、ポンピドゥ・センター・メス、ウフィツィ美術館など世界各国の主要美術館に収蔵されている。2026年春にイギリスのThames & Hudsonより500ページの作品集が世界発売される。
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