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イタリアの夏、中世祭りで数百年前へのタイムスリップを楽しむ

中世祭りとは?

皆さんこんにちは!
イタリアの夏と言えば、海、山、川と行楽が盛り沢山で、日本でもある程度その様子は知られています。が、規模が大きいのに意外と日本では知られていないイタリアの夏の風物詩があります。それがイタリア全国で開催される中世祭りです。なぜ日本での知名度が高くないか、というのは、この祭りは小さな町や村で行われるからなのです。
イタリアには中世の趣を残す造りの村や街が数多くありますが、そんな素敵な町並みを最大限に活かした大きな文化活動と言えるのがこのお祭りです。まるでタイムスリップしたかのような気分になる中世祭りを今回はご紹介します。

イタリアの中世祭りは町や村全体で開催され、当時の衣装を着た人々が行きかう

当時の衣装に身を包んだ人々が街を彩る
時代物の衣装に身を包んだ人々が賑やかに行きかう中、職人の仕事を眺めたり中世の音楽を聴いたり……それは本当にタイムスリップしたかのような錯覚に陥ってしまうほど、魅力のある空間。
もともとは、ローマ帝国時代、中世、ルネッサンスとそれぞれの時代の文化を研究し、伝承するために作られた文化アソシエーションで活動する人々のパッションが高じて、村や街そのものを舞台にしたリエヴォカツィオーネ(時代ものの行事の再現)を披露するためのお祭りでした。が、少しずつ村全体を舞台とした行事へと変化していったのです。それが全国にひろがり、近代のイタリアではすっかり夏の風物詩の代表格となり、驚くほど沢山の人たちが中世祭りに足を運ぶようになりました。

中世をテーマにさまざまな露店が出て、地域全体で盛り上がるイタリアの中世祭り

村全体が舞台になるのが中世祭りの良さ
どこの村でもその村を代表する競技があり、地区別にグループが組まれて競技が行われます。この時ばかりは村はそれぞれのグループの誇りを表すために、グループの旗を家の窓から垂らして総勢で自分たちの地区を応援するのです。
競技は乗馬であったり、弓矢であったり、剣による合戦とさまざま。宮廷人のパレードや音楽隊の行進など、それはそれは村が生き生きと華やぎ、来訪者を古き時代へと誘ってくれます。

中世当時の競技や宮廷人のパレードを見ると、本当に中世にいるような気持になる

パレードはどのお祭りでも見もの

中世当時の職人の手仕事が見られるのも魅力

さて、中世祭りの見もののひとつに、当時の職人たちが仕事ぶりを披露する市があります。

イタリア中世の道具を実際に作れるコーナーは子供にも人気

子供も大好きな実演コーナー
古い町のつくりを活かして当時の工房の様子を室内に再現したものや、青空市場のように野外で実演しているものがあります。私が見てきた幾つかの中世祭りの様子から特に興味深いと思ったものを紹介して行きましょう。

1.ガラス吹き職人・・・吹きガラスでグラスや小さな壷などを作っている職人さん。野外で実演している場合が多く、子供達にも人気があります。

中世当時の吹きガラスを実演で制作する

ぷっくりと膨らんでくるガラスを見るのは本当に楽しい
2.皮なめし職人(コンチャ・ディ・ペッレ)・・・家畜の毛皮や羊皮紙をなめしていた職人さん。ピーンと張った皮がいくつも展示され、とてもワイルドな印象です。
3.紙漉き職人(カルタイオ)・・・古い衣類の繊維をすり潰して作られ始めたコットン紙。フィリグラーナと呼ばれる漉き枠から浮き上がる透かしが美しい。

中世時代の紙漉を実演

長い伝統のあるコットン紙
4.染色職人(ティントーレ)・・・日本と同じく階級によって使える色が違った染色の世界。布や毛糸を染める様子がとても興味深いです。

糸の染色も実演。さまざまな色の使用は階級により決まっていた

色とりどりの染めものが美しい
5.ハーブ蒸留職人(エルボリスタ)・・・エッセンシャルオイル抽出の様子を大きな銅の蒸留器で薪で火をつけて蒸留します。とても見ごたえのある実演です。

エッセンシャルオイル抽出の様子を大きな銅の蒸留器で薪で火をつけて蒸留

大きな銅の蒸留器は大迫力
6.楽器職人(リュタイオ)・・・古い楽器を作る様子や修復をする様子が見られます。現在ではあまり見られなくなった形の楽器を見る楽しさを味わえます。

中世時代の楽器を作る様子や修復技術が見られます

楽器はいつの時代のものでも魅力的だ
7.製本職人(レガトリア)・・・古い製本技術を使って、ページの縫製や皮の表紙を作り上げていく、文房具好きにはたまらない実演です。

このように、思いつくものを挙げただけでもこれだけ沢山の職人技が見られるのが中世祭りの醍醐味。じっくり1つ1つの職人さんを眺めるのは本当に楽しいですよ!

著者おススメ! 4つの中世祭り

さて、イタリア全国で行われるこのお祭りですが、イタリアに来る機会がある方にはぜひ訪問していただきたいもの。著者の住むマルケ州や、近郊の州でこれまで見てきたお祭りの中でも、ぜひおススメしたいものをこちらにご紹介いたします。
「モンテチェリニオーネの”モンス・セリニオンス”祭り」

モンテチェリニオーネの”モンス・セリニオンス”祭りはマルケ州北部の小さな村で開催される

しつらえが目を引く展示がいっぱい
マルケ州の北部にある小さな中世の村で開催される中世祭り。普段は穏やかで小さな村が、この季節は丸ごと中世に大変身。1つの小さな村全体が時代ものの映画の舞台になるような感覚を体感できますよ。
開催時期:7月中旬
https://monscerignonis.com/

「モンダイーノの”パリオ・デッロ・ダイノ”」

ロマーニャ州とマルケ州の県境にあるモンダイーノの”パリオ・デッロ・ダイノ”

出店数も多く見ごたえたっぷりのモンダイーノ
ロマーニャ州とマルケ州の県境にあるモンダイーノ、小都市でありながらイベントの内容が充実しており、祭りのクオリティーがとても高いと定評があります。
開催時期:8月中旬
http://www.mondainoeventi.it/it/palio-del-daino.php

「ウルビーノの”フェスタ・デル・ドゥーカ”」

マルケ州北部の世界遺産の街ウルビーノ。ここはルネッサンス時代に栄えた街なので、中世祭りではなくルネッサンス祭りが行われます

旧市街地全体が舞台に
マルケ州北部の世界遺産の街ウルビーノ。ここはルネッサンス時代に栄えた街なので、中世祭りではなくルネッサンス祭りが行われます。ドゥカーレ宮殿を中心に旧市街地一帯が祭りの会場となります。
開催時期:8月中旬
https://www.urbinofestadelduca.it/

「ベヴァーニャの”イル・メルカート・デッレ・ガイーテ”」

ウンブリア州のベヴァーニャで開催される、知る人ぞ知る中世祭り。規模も大きく、中世の晩餐なども体験できる

街並みとともに雰囲気たっぷりのべヴァーニャ
ウンブリア州のベヴァーニャで開催される、知る人ぞ知る中世祭り。規模も大きく、中世の晩餐なども体験できる充実の内容。職人の工房は見学は有料なので、事前に見たい工房の数を決めておき、チケットを購入します。
開催時期:6月下旬
http://www.ilmercatodellegaite.it/

このように、それぞれが違う魅力を持つ祭りの数々。中世のイタリアを垣間見れる小さなタイムスリップは、一度味わうと癖になってしまいますよ!

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