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6月23日の夜に行うイタリアの風習。聖ヨハネの夜と、月の光を浴びた花の聖水のお話

いよいよ本格的な夏を迎えるイタリア。イタリアの特徴である長~い3ヶ月の夏休みも始まり、海や川がにぎわうこれからのシーズン。
赤いポピーの揺れる麦畑は、穂が緑色から少しずつ金色に色付き、蛍が舞い黄色いエニシダが咲き乱れる……まさに野山の色と香りを謳歌できる清々しい季節でもあります。

さて、そんな6月ですが、イタリアに古くからある聖ヨハネにまつわるある夜の素敵な風習……聖ヨハネの花の聖水について、今日はお話しようと思います。

聖ヨハネの生まれた6月24日とは?

ウルビーノのサン・ジョバンニ祈祷堂の聖ヨハネに洗礼を受けるイエス

新約聖書に登場し、イエスに洗礼を授けた洗礼者ヨハネ。
らくだの皮を纏ったその姿は、多くの画家によって描かれてきました。彼が生まれた6月24日は、聖ヨハネの日としてカトリックなどでは祭日になっていますが、この季節は夏至とも重なることからヨーロッパ各地で行われていた夏至祭が、キリスト教受容後は聖ヨハネの日と重ね合わせて考えられるようになります。

イタリアでも夏至の前後は色々な生き物のエネルギーが活発になると考えられており、それゆえ6月24日が結婚式にふさわしい日であるとか、ワインの出来上がりを左右する力がある、または魔よけをするのにふさわしい日であるとして、色々な庶民の信仰が生まれました。古くはこの日は太陽(火)と月(水)が結婚する日とも言われ、地方によっては焚き火を焚く儀式を通してこの日を祝うところも少なくありません。

シェイクスピアの書いた、”真夏の夜の夢”もこの6月24日の前日の夜に起こった物語を戯曲にしたものですが、このことからも、不思議なエネルギーのある特別な日であると考えられていたことが分かります。

聖ヨハネの花の聖水

花の香りと月のエネルギーを水に移す聖水

イタリアでも古くから残っているこの日の素敵な風習のひとつに、前夜の23日に用意する”ヨハネの聖水”というものがあります。

これは6月23日の夜に泉の水にハーブや花を入れ、一晩月の光に当てることで植物や月のエネルギーを水に封じ込め、その水で翌朝顔を洗うことで自然のエネルギーにあやかる、というもの。夏至の季節は生き物のエネルギーが最も高くなっていると言われている季節であることから、古代から農耕民族の間で発生した豊作や子だくさんを祈る風習が、キリスト以降聖人の名にちなんでこのような風習に変化したと言われています。

もともとは23日の夜に乙女が夜露に濡れたセイヨウオトギリを夜中に摘みに行き、その花を水に浸して薬効を期待したり、花のリースを作り家の入口に飾ることで魔除けの役割を果たしたり、新しい命を呼び込むための儀式のようなものだった……そんな奥深いお話も聞きます。

……とすると乙女達はきっと日本で言う巫女さんのような役割を果たしていたのでしょう。

月のエネルギーや花の香りが移し取られた聖水は、聖ヨハネの誕生を祝い、私たちにも恩恵を分け与えてくれる風習へと少しずつ形作られてきたのかもしれません。

そのためかイタリアではセイヨウオトギリが”聖ヨハネのハーブ”とも呼ばれていますし、薬効のあるハーブとしてとても重宝されています。

こんなエピソードを聞けば、一つの野の花を見ても色々な物語が背景にあることが分かって、より小さな花が近しいものに感じられますよね。

どんな花やハーブが使われているの?

古書に登場する薬草セイヨウオトギリ

ヨハネの聖水にどんなお花やハーブを使うのかは、色々な説がありますが、これといって決まりがあるわけではないようです。

必ず入れられるのはやはりセイヨウオトギリですが、香りのいい初夏の花であるバラやラベンダー、薬効のあるボリジやマロウの花、芳香豊かなセージの葉やヨモギの仲間のアルテミシア、レモンバーべナなどなど..身近にあるものを使えばいいのだと思います。

著者は田舎暮らしですので、家の前をてくてく歩けば色々と生えている、そんな草花にあやかっていますよ。

田舎道を歩けば野の花が溢れています

初夏の花として美しい紫陽花やすずらんは毒性がありますので、使わないように気をつけて下さいね!

皆さんも是非、この夏は聖ヨハネの花の聖水で洗顔されてみて下さい。きっとエネルギーいっぱいの花の香りに包まれ、素敵な1日を過ごせることでしょう。

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