MUSIC 15 Apr 2021

“化粧”をアイデンティティにしたアーティストたち


イタリア音楽界でも、“化粧”に自己のアイデンティティを込めたアーティストたちがいます。今回はその中から国民的人気を博すようになったアーティストたち、そして現在、赤丸急上昇の新興勢力たちを紹介いたします。

レナート・ゼロ(Renato Zero)

1950年生まれで現・70歳のレナート・ゼロは、男性アーティストながら化粧で自己表現した草分け的な存在になります。

レナート・ゼロ

1960年代にデビューしていますが、演劇の分野でも活動していたこともあり(端役ながらフェリーニ監督の映画にも何本も出演)、音楽活動でも非常にビジュアルを重視した衣装やシアトリカルな演出を好み、必然的に派手な化粧を施したスタイルで、1970年代中ごろにブレイク。

レナート・ゼロ

しばらくは“色モノ”扱いでしたが、そのド派手なルックスに反して、実に楽曲センスが素晴らしく、ソングライターとしての才能にも評価が寄せられるようになりました。

レナート・ゼロ

1980年代中頃には “化粧”を放棄しイメチェンをはかったため、一時期はその人気に陰りが出ましたが、1990年代になると、音楽的に自身の過去を遥かに凌駕するような音楽作品を輩出し、名実ともにイタリアの国民的な重鎮アーティストと目されるようになり今日に至ります。

アンナ・オクサ(Anna Oxa)

1961年生まれの現・59歳のアンナ・オクサは、1978年のサンレモ音楽祭に16歳で初出場して「青春(Un’emozione da poco / ウネモツィオーネ・ダ・ポコ / 意:他愛もない感情)」を歌い、いきなり2位を獲得して注目を浴びました。

アンナ・オクサ

今ではイタリア音楽界の最重要キーマンのひとりとなったイヴァーノ・フォッサーティが若き日にプロデュース&提供した楽曲はもちろん素晴らしかったのですが、16歳の少女が“男装の麗人”スタイルのルックスで登壇したこともカルチャーショックを与えました。この衣装やルックスを手掛けたのは、自身も化粧をアイデンティティにしていたパンク歌手イヴァン・カッターネオ。

アンナ・オクサのメイクや衣装を担当したイヴァン・カッターネオアンナ・オクサのメイクや衣装を担当したイヴァン・カッターネオ

その後のアンナ・オクサは、アルバムごとにルックスをガラリと変えるスタイルをとり、プラティナ・ブロンドになったかと思えば、漆黒の短髪になったりと、特に1980年代から90年代にかけて、イタリア音楽界の牽引役を果たすほどのトップスターとなりました。

アンナ・オクサ

アンナ・オクサ

アンナ・オクサ

アンナ・オクサ

アンナ・オクサ

サンレモ音楽祭では1989年にファウスト・レアーリとのデュエット曲「Ti lascerò(ティ・ラッシェロ / 意:君を残していくよ)で優勝、1999年には「Senza pietà(センツァ・ピエタ / 意:憐れみなしで)」でソロでも優勝を果たしています。

前出の彼女のサンレモ1978出場曲「青春」は、イタリア本国でも日本でも大ヒットした映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015)では、適役ジンガロが度々同曲を歌うシーンが盛り込まれたため、リバイバルヒットしたのも記憶に新しいところです。

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エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ(Elio e le Storie Tese)

エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼは1980年から活動開始したイタリア最高峰のコミックバンドでしたが、惜しくも2018年に活動停止となりました。

コミックバンドといっても、メンバー全員が音楽院出身の音楽エリート集団ですから、楽曲センスも演奏テクニックもプロ中のプロ。しかし彼らは音楽エリートの顔を前面に出すのは好まず、いつも真剣に悪ふざけするパフォーマンスが最大の魅力でした。

イタリア最大の国民的音楽イベントであるサンレモ音楽祭にも何度も出場していますが、優勝を狙う意気込みではなく、毎晩、いかに派手なパフォーマンスをして話題を集めるか?に力を入れていました。当然、素顔での出場のイメージはほとんどなく、毎回&毎晩、大掛かりな化粧(特殊メイク?)、用意周到な衣装、ステージパフォーマンスに最大のエネルギーを注いでいました。全身銀色&銀粉塗りの宇宙人、中世の貴族、ロックバンドKiss、モンティ・パイソン、ジャクソン5などなど。

エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ

エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ

エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ

アキッレ・ラウロ(Achille Lauro)

エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ亡き後、その代役的ポジションに収まった感のあるのがアキッレ・ラウロ(30歳)です。

2010年代初頭から活動を始めていますが、サンレモ音楽祭2019へ初出場し「Rolls Royce(ロールス・ロイス)」を披露。エルヴィス・プレスリー、ザ・ドアーズ、ジミ・ヘンドリックスといったロック誕生期のアーティストたちへの敬愛、その後の時代のエイミー・ワインハウス、アクセル・ローズ(ガンズ・アンド・ローゼズ)、ビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)からの影響も感じさせる自身のアイデンティティを表現しています。

翌サンレモ2020ではいよいよ本領発揮し、あたかも“独りエリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ”か、“現代のレナート・ゼロ”のように、毎晩、手間暇&予算をかけたド派手な衣装(GUCCI製)で登場し、大きな話題をさらいました。

サンレモ2020でのアキッレ・ラウロ5変化サンレモ2020でのアキッレ・ラウロ5変化

直近のサンレモ2021ではスーパーゲストとして登壇し、期待を裏切ることなく、毎晩ド派手なパフォーマンスで楽しませてくれたのも記憶に新しいところです。

サンレモ2021でのアキッレ・ラウロ5変化サンレモ2021でのアキッレ・ラウロ5変化

マネスキン(Måneskin)

そしてそのサンレモ2021に初出場ながらいきなり優勝してしまった平均20歳のロックバンドマネスキン。彼らも全員が化粧をしてパフォーマンスをするのをアイデンティティにしていると言えるでしょう。

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マネスキンマネスキン

マネスキン

リンメル(Rimmel)

“リンメル”はイギリスのコスメブランドとして日本でも知名度があるようですが、イタリアでは特に“マスカラ”の代名詞としても使用される言葉のようです。(例:マジックインキ、ホッチキスなどは本来、商標でありますが、日本ではそのジャンルの代名詞になっていますよね)

ずばり「Rimmel(リンメル)」をタイトルに据えたヒット曲が1975年に生まれています。今ではすっかりイタリアを代表する重鎮シンガーソングライターとなったフランチェスコ・デ・グレゴーリ(現:70歳)が若き日に書いて歌った楽曲です。

リンメル

無料プレイリストに挿入された楽曲

無料プレイリストには、前出のアーティストの代表曲をピックアップして挿入しています。

Buon ascolto!(ブオン・アスコルト / 意:聴いてね!)

WRITER PROFILE
よしお アントニオ
よしお アントニオ

音楽ジャーナリスト。イタリア音楽専門誌『MusicaVita Italia(ムジカヴィータ イタリア)』 http://musicavitaitalia.com/ 編集人。 イタリア音楽普及促進グループPiccola RADIO-ITALIA(ピッコラ・ラディオ・イタリア) http://piccola-radio-italia.com 主宰。 毎月開催のイタリアPOPSフェスタも15年を超えている。イタリアン・ポップス出版物(CD等)の歌詞監修・対訳多数。日本の伝統も重んじる剣道家(四段)でもあり、少年剣道教室の指導役も務めている。