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Spotifyで「絶対聞きたい日本製アニメのイタリア版」プレイリスト配信開始!

ANIME NOSTALGIA -イタリア版日本のアニソン特集-

プレイリストに収録したアニメ曲の日本語作品名一覧

今回は主なイタリア語歌詞のアニソンを紹介していきましょう。プレイリストに収録したアニメ曲(以下、「アニソン」)の日本語作品名は以下の通りです。

注)プレイリストにはアニメで放映されたオリジナル版ではなく、カヴァー版も入っています。

Ufo Robot 『UFOロボグレンダイザー』

Jeeg Robot 『鋼鉄ジーグ』

Jeeg Robot l’uomo d’acciaio(意:ジーグ・ロボット・鋼鉄の男) 『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 ※2015年の映画

Che campioni Holly e Benji(意:なんてすごいチャンピオン・オリーとベンジー) 『キャプテン翼 J』

Kiss me Licia(意:キスしてリーチャ) 『愛してナイト』

Jenny, Jenny 『エースをねらえ!』

Lo specchio magico(意:魔法の鏡) 『ひみつのアッコちゃん』

Lady Oscar(意:オスカル婦人) 『ベルサイユのばら』

Sailor Moon(発音:セイロル・ムーン) 『美少女戦士セーラームーン』

L’uomo tigre(意:虎男) 『タイガーマスク』

Occhi di gatto(意:猫の目) 『キャッツ・アイ』

Capitan Harlock(発音:カピタン・ハーロック) 『宇宙海賊キャプテンハーロック』

Doraemon 『ドラえもん』

Gundam(発音:グンダム) 『機動戦士ガンダム』

Pokemon Advanced Battle 『ポケットモンスター』

Ken il guerriero(意:戦士ケン) 『北斗の拳』

Hamtaro 『とっとこ ハム太郎』

Anna dai capelli rossi(意:赤毛のアン) 『赤毛のアン』

Il grande sogno di Maya(意:マヤの大きな夢) 『ガラスの仮面』

Dolce Candy(意:甘いキャンディ) 『キャンディ・キャンディ』

Mimì e la nazionale di pallavolo(意:ミミとバレーボールのナショナルチーム) 『アタックNo.1』

All’arrembaggio!(意:かかれ!) 『ONE PIECE – ワンピース』

Magica Doremi(意:魔法のどれみ) 『おジャ魔女どれみ』

Mack, ma che principe sei?(意:マック、なんてすごい王子様なの?) 『おじゃる丸』

Mila e Shiro – due cuori nella pallavolo(意:ミラとシロー  バレーボールの2つの魂)『アタッカーYOU!』

Lupin, l’inconrreggibile Lupin(意:ルパン、手に負えないルパン)『ルパン三世 PARTIII』

Pollon, Pollon combina guai(ポッロン、ポッロンはやらかす)『おちゃめ神物語コロコロポロン』

イタリアにおける日本製アニメーション

イタリアでは1970年代後半頃から日本製アニメーション(以下、「アニメ」)が放映されるようになり、以来、今日まで続く一大ブームとなっています。概ね50歳以下のイタリア人は日本のアニメを見て育った世代と言っても過言ではないでしょう。

しかし、イタリア語版のタイトルからでも、すぐにオリジナルの日本語作品名が判るものもありますが、全く想像がつかないものもあります。それは何故でしょう?多くの日本製アニメのイタリア版は、主人公の名前が変えられているからなのです。

例:『キャプテン翼』大空翼→Holly(オリー) 若林源三→Benji(ベンジー)

エースをねらえ!』岡ひろみ→Jenny(ジェニー)

キャプテン翼&エースをねらえ!カバー写真

イタリアにはアメリカまたはイギリス経由で日本のアニメが流通されるのが多かったため、多くはこのように英語由来の名前が付けられるのですが、中にはイタリア名の主人公もいます。

例:『怪物くん』怪物くん→Carletto(カルレット)

いなかっぺ大将』大ちゃん→Ugo(ウーゴ)

Carletto&Ugoカバー写真

どうやら、憧れのヒーロー&ヒロインには英語系の名前。お茶目なキャラにはイタリア語名、という構図があるようです。

もちろん、イタリアでの放映はイタリア人声優によるイタリア語セリフで行われ、アニソンも多くはイタリア語歌詞で、日本版とは異なる曲が新たに作られました。

一方、『めぞん一刻』や『ドラゴンボール』、『鋼の錬金術師』のように、オリジナルの日本版のアニソンが放映された作品も次第に登場していくことになります。

イタリアにおける日本製アニメブームのきっかけ

その第1弾となったのが1978年に放映された『UFOロボグレンダイザー(伊題:UFO Robot Goldrake』(原作:永井豪・他)で、空前の大ヒットとなり、その主題歌も通常のPOPSシングルチャート上位に食い込むほどの大ヒットを記録しました。

UFO ROBOTカバー写真

サンレモ音楽祭1969年優勝曲「涙のさだめ(Zingara)」などを手掛けた作詞家Luigi Albertelli(ルイジ・アルベルテッリ)が作詞しており、彼はこの曲を皮切りに、たくさんの日本製アニメのイタリア版アニソン(「キャプテン・ハーロック」、「赤毛のアン」、「ガッチャマン」など)を書いていくことになります。言わばイタリアのアニソン作家の始祖的な人物です。

そして同曲の作曲&編曲を手掛けたのは、プログレ・ファンならきっと狂喜の叫びをあげてしまうことでしょう、Vince Tempera(ヴィンチェ・テンペラ)とAres Tavolazzi(アレス・タヴォラッツィ)の2人。前者は凄腕のスタジオミュージシャンだけで編成された伝説のバンドIl Volo(イル・ヴォーロ / 21世紀に台頭した3人組のオペラティックPOPSグループとは別物)のキーボード奏者で、後者はこちらも凄腕のジャズロック・バンドArea(アレア)のベーシストなのです。

演奏しているのはActarusという覆面バンドで、前出のヴィンチェ・テンペラとアレス・タヴォラッツィに加え、ギターにはMassimo Luca(マッシモ・ルカ)。彼はイタリアで現在まで続くシンガーソングライター・ブームの起点となったLucio Battisti(ルーチョ・バッティスティ)のギタリスト。そしてヴォーカルにはデビューしたばかりのシンガーソングライターFabio Concato(ファビオ・コンカート)。彼は’80年代から’90年代にヒットを飛ばして人気歌手となります。

Fabio Concatoカバージャケット

こうして一流の作家、演奏力に定評のあるミュージシャン、新進気鋭のヴォーカリストが集まり、子供向けだからと言って手抜きをせずに取り組んだ作品だからこそ、今日まで繋がるアニソンの潮流が作られたと言っても過言ではないでしょう。

一方、同作品はマジンガーZの第3弾シリーズ。日本では圧倒的に第1作の『マジンガーZ』(1972)が金字塔であり、永井豪のロボットアニメを語る時、『UFOロボ』を真っ先に口にする日本人はまずいません。

しかしながら、イタリア人には開口一番『UFO ROBOT』なのです。イタリアでの日本製アニメ放映第1弾であったからに他なりません。『UFO ROBOT』が当たったために、イタリアでは「マジンガー・シリーズ」を遡って第2作目の『グレートマジンガー(Il Grande Mazinger)』を1979年から、第1作目の『マジンガーZ(Mazinger Z)』を1980年からの放映となったので、この3部作のイタリアでの知名度は、実は日本とは逆となるのです。

余談ではありますが、原作者の永井豪は、当時既にかなりのイタリア・フリークでしたが、『ハレンチ学園』(1968 / 1970年に実写ドラマ化)のヒットで、すっかりエロ漫画家のイメージが付いてしまって落ち込み、傷心旅行として訪れたローマのフォロ・ロマーノでマジンガーZの草案やデザインを思いついたそうです。その作品群が後にイタリアでも大ヒットするなど、想像だにしていなかった、という不思議な因果関係があります。

21世紀になっても大人気の『鋼鉄ジーグ』

『UFO ROBOT』の空前の大ヒットに続き、日本製アニメ第2弾として1979年にイタリアで放映されたのが、『鋼鉄ジーグ (Jeeg robot d’acciaio:鋼鉄のジーグ・ロボ )』(原作:永井豪:他)で、こちらも大ヒットしました。

Jeeg Robotカバー写真

こうしてイタリアでは、元祖日本のロボットアニメと言えば最初期に放映された『UFO ROBOT』と『鋼鉄ジーグJeeg』がダントツで、そのジャンルの代名詞化していると言っても過言ではありません。

2015年に公開されたイタリア映画『Lo chiamavano Jeeg Robot(邦題:皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ)』 は、そのタイトル通り、『鋼鉄ジーグ』をモチーフにした映画ですが、実写版鋼鉄ジーグではなく、鋼鉄ジーグに影響を受けて育ったイタリア人たちを題材にしたダークヒーローにスポットを当てた画期的な作品として大ヒットし、イタリアのアカデミー賞に匹敵するダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(2016年)を最多7部門受賞(最多16部門ノミネート)の記録を更新した大ヒット映画となりました。

Gabriele Mainetti(ガブリエレ・マイネッティ / 当時39歳)監督が初めて手掛けた長編作ですが、イタリアで『鋼鉄ジーグ』が放映されていた時に彼は3歳。まさに“三つ子の魂”のように記憶に刻まれていたのでしょう。日本公開も決まっていないのにも関わらず、映画のタイトルには最初から日本語で「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」という邦題もクレジットまでしていたのです。その想いが通じたのでしょうか、日本でも2017年にロードショーされ、DVDまで発売されました。

Jeeg Robot映画カバー写真

主演した人気俳優Claudio Santamaria(クラウディオ・サンタマリア / 当時41歳)は、エンディングロールでイタリア語版主題歌を自ら歌っています。テンポを極端に遅くしているので、一聴しただけでは同アニメの主題歌だと気づかないほどです。

同曲をオリジナルのスピードで聴けば、日本のアニメの主題歌と同じ曲だと判ります。そう、この曲は当時としては珍しく、日本版のメロディのままイタリア語詞を乗せたアニソンなのです。

ところが、これほどまでイタリア人にとって重要な『鋼鉄ジーグ』なのに、多くの日本人にとってはタイトルさえ知らない作品、という事実があります。実は、日本での『鋼鉄ジーグ』の視聴率はとてつもなく低く、知る人ぞ知る作品という位置付けなのです。

これは前出のマジンガーZのところでも述べましたように、日本とイタリアの放映時期のズレに起因しています。当時、日本のアニメの流行は、1960年代からの「子供向け」の作品群の潮流の中に加え、作品にシリアスな要素が込められた、大人が見ても楽しめるようなスケールの大きな作品が台頭していった端境期となります。

例:『宇宙戦艦ヤマト』(1974)の後、『銀河鉄道999』(1978)、『機動戦士ガンダム』(1979)と続き、大人目線のストーリーを持つ作品が’80年代以降のアニメ作品の主流となっていきます。

『鋼鉄ジーグ』が日本で放映された1975年は、まさに『宇宙戦艦ヤマト』(1974)の一大ブームの真っ只中で、小学生も青年層も夢中になって“ヤマト”漬けになっていて、以前からの流れを組む勧善懲悪の巨大ロボットヒーローものは、未就学男児向けの作品に成り下がってしまっていたからなのです。

イタリアはこうした日本のアニメの変遷を“後追い”していくことになるので、日本より10年遅れでブームを追っていきますが、今では日本との温度差は縮まり、逆に一般的な日本人が知らないような作品まで知っているイタリア人の方が増えて来た印象もあります。

アニソン女王Cristina D’Avenaの台頭

1968年生まれのCristina D’Avena(クリスティーナ・ダヴェーナ)は、3歳で歴史ある子供の歌のコンテストZecchino d’Oro(ゼッキーノ・ドーロ)に出場し、8歳ぐらいまで子供歌手として活動。しばらく芸能界から離れるも13歳からカムバック。歌手&役者としてアイドル的な存在となり、爆発的なセールス&人気を誇るような存在となります。

時は1980年代の初め。巨大ロボット・ヒーローもので大ヒットした日本製アニメの本格的な発掘が始まり、いろいろなタイプの日本製アニメ作品が怒涛のように紹介されていく時期が始まります。

学園もの、少女向けの作品がどんどん紹介されるようになると、作品の登場人物と同世代の女性ヴォーカルの曲が求められるようになり、クリスティーナは見事にこの時代が求める波に乗ります。

『愛してナイト』の主題曲「Kiss Me Licia」は彼女の初期の代表曲となるほどの大ヒットとなりました。さらに女優として表舞台に飛び出したのは18歳の時。同作品の実写版の主演を務めて、決定的な人気を博します。

以降、彼女は自分がオリジナル歌手となるアニソンはもちろん、他の歌手がオリジナルで歌うアニソンも積極的にカヴァーしていき、50代となった現在もなお、その美貌と声の魅力は健在で、アニソン界の絶対的女王に君臨し続けています。

クリスティーナの企画アルバム『Duets – Tutti cantano Cristina(意:デュエット集 – みんながクリスティーナを歌う)』(2017・2018)では、イタリアPOPS界の人気歌手たちが、クリスティーナとアニソンをデュエットするという企画もので、空前の大ヒットを記録しました。驚くべきなのは参加した人気歌手たちがみな「クリスティーナと歌えるなんて、こんなに光栄なことはない」と目を輝かせていたことです。日本製アニメ育ちのイタリア人たちにとって、どれほどクリスティーナが憧れの存在なのかを窺い知ることができました。

プレイリストを聴いてイタリア版アニソンを覚えておくのも、イタリア好き日本人としては必要な知識かもしれませんね。どんなイタリア人とも仲良くなれるきっかけになることは間違いありません。

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