歴史を彩った世界の女性たちへの讃歌
クラシックをベースに、ジャンルを超えて多様なテクニックで歌い上げるドナテッラ・アランプレーゼ。今回のコンサート「エヴァの声」では、地中海からヨーロッパ、日本からアルメニア、そしてアメリカ大陸まで渡り、時間や空間、国境を越えて心に深く響く場所を巡りました。

アレクサンドリアのヒュパティアや、シビッラ・アレラーモやアルダ・メリーニなどのイタリアの女性詩人たち、アランプレーゼの故郷であるバジリカータ州の女性たち、さらには与謝野晶子、エディット・ピアフをはじめ象徴的な生涯を送った女性まで、人類の歴史や進化にその足跡を残してきた女性たち。ドナテッラは歌や詩を通じて、彼女たちの想いを現代に生きる私たちに届けます。

与謝野晶子「みだれ髪」を日本語で朗読
コンサートの冒頭、会場の後ろからスペイン語の「 Malena」 (Demare / Manzi)を歩きながら歌い、満員の観客の前に姿を現したドナテッラ。アルゼンチン女性の「アルフォンシーナと海」、アルメニア民謡、シビッラ・アレラーモの詩「Brucio la mia vita」 の朗読など、時代も国境も越えて、世界の女性たちの声を届けていきます。
日本の観客がはっと胸をつかれたのが、与謝野晶子の「みだれ髪」より「きのふをば千とせの前の世とも思ひ…」の朗読。明治34年に発表された初めての歌集で、晶子は女性の恋愛感情を赤裸々に歌い上げ、当時の日本では賛否両論の議論が湧き上がりったと言います。さらに、大正時代に一斉を風靡した「宵待草」(竹久夢二/多忠亮)を、イタリア人女性が日本語で歌う繊細な調べに、満員の客席からひときわ大きな拍手が贈られました。

エディット・ピアフに重なる歌声
ジャンルイジ・ベネデッティ駐日イタリア大使も駆けつけた今回のコンサートで驚いたのが、歌によって発声や声色まで変わるドナテッラの歌唱でした。クラシックを学んだ彼女は、オペラのような本格的な声楽で歌ったかと思うと、ナポリ民謡では力強く、彼女の出身地であるバジリカータの子守歌ではやさしく歌い、エディット・ピアフのシャンソンでは低く深みのある声色へ。まるで演劇のように、ドラマチックに変化して、観客を飽きさせません。
ギターを演奏するのは、2003年からドナテッラとともにアンサンブル「Coincidencia」を結成し、イタリア国内外で活躍するマルコ・ジャコミーニ。長年にわたって共演しているドナテッラとはぴたりと息の合ったパフォーマンスで、ステージを盛り上げました。

クライマックスに披露されたエディット・ピアフの「Non, je ne regrette rien 水に流して」(Dumont / Vaucaire)は、「エヴァの声」を象徴するハイライト。幼児から場末の町で歌い、18歳で見出されてたちまち大スターとなったピアフ。華やかな男性遍歴、殺人容疑や交通事故、麻薬と酒に溺れた日々・・・。ドナテッラは、音楽に捧げた波瀾万丈の人生を讃えるように、ピアフを彷彿とさせるハスキーな声で歌い上げました。


色々な愛への想いを歌と語りに込めて
このコンサートの後、大阪・関西万博のイタリアパビリオンのステージにも立ったドナテッラ。10年の時を経て、新たに伝えたかったこととは?「今回のステージのテーマは愛。恋愛にとどまらず、家族愛、友人や仲間への愛、故郷への愛、自然への愛など、色々な愛を届けるためのステージでした」と語りました。
長年にわたって音楽を通じて、女性の自由、アイデンティティ、尊厳を守るための活動を続けてきたドナテッラ・アランプレーゼ。最後にITALIANITYの読者へのメッセージをいただきました。
「自分らしさとは何か?常に自分と向き合い、心のままに行動して欲しい」

Donatella Alamprese ドナテッラ・アランプレーゼ
クラシック音楽の教育を受け、現在ではオペラからジャズ、タンゴまで、さまざまな音楽分野で国際的に活動する歌手。8ヵ国語で歌唱し、アルゼンチンやチリ、日本など世界中でコンサートを開催するほか、世界中のイタリア文化会館でも数多くのコンサートを行い、多くの著名なアーティストと共演を重ねている。近年の受賞歴には、2018年にそれまでの活動に対して授与されたトッレ・ダルジェント賞、2023年にはジェンダーに基づく暴力への取り組みでドンナ・ゾンタ・インターナショナル賞を受賞。

ドナテッラ・アランプレーゼ Instagram
https://www.instagram.com/donatellaalamprese?igsh=dXAxb2Y4OHEwMmp6
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