『水の都』と呼ばれ、世界中から観光客やセレブらが集まる、イタリアのヴェネト州ヴェネツィア。この場所は、ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭と並ぶ、世界三大映画祭の一つ、ヴェネツィア国際映画祭の舞台としても知られている。長期間にわたる新型コロナウイルスの影響で、イベントのキャンセルが相次ぐ中、第77回ヴェネツィア国際映画祭が、2020年9月2日〜9月12日まで開催された。今回は映画祭のレポートと、ワカペディアが注目する3作品をピックアップしてご紹介!
Credits La Biennale di Venezia – Foto ASAC, photo Jacopo Salvi
コロナ後初のヴェネツィア国際映画祭をチェック!
第77回ヴェネツィア国際映画祭のレッドカーペットでは、光沢のある華やかなドレスやタキシードを身にまとった俳優やセレブらが並び、沢山のフラッシュが浴びせられた。警備担当のスタッフが体温を測り、1メートル以上のソーシャルディスタンスを守りながら、カメラの前でポーズを決める俳優らの手にマスクがある事以外は、お馴染みの光景だ。コロナ発生後、初めての開催ということもあってか、関係者同士は再会の喜びが溢れる反面、感染防止を意識して挨拶が少々ギクシャクするような、独特の空気感だった。
Credits La Biennale di Venezia – Foto ASAC, photo a.Avezz
イベントのディレクターを務めたアルベルト・バルベラ氏は、「各国で長期間のロックダウンが行われたが、安全に配慮しながら、ようやくもう一度映画館の門を開く時が来た」と笑顔で話した。紆余曲折を経て、小規模で開催することに至った本映画祭は、色んな意味で忘れられない10日間になったに違いない。そしてこれを機に、今後のレッドカーペットは、ドレスとマスクが新たなドレスコードになるのかも?
ワカペディアが注目する映画3作品
今回の映画祭には、合計77作品が出品された。
ワカペディアが注目する映画1作目は、これまでカンヌ国際映画祭でも高く評価されてきた、黒沢清監督がメガホンを取る『スパイの妻』。太平洋戦争開戦間近の日本が舞台となり、正義と愛の間で揺れ動く人間模様を描いた作品だ。ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品した同監督の初作品でありながら、銀獅子賞(監督賞)を受賞した。
注目する2作目は、アメリカを拠点に活動する、中国出身のクロエ・ジャオ監督が手がけた『ノマドランド』。作家ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション小説を元に製作された映画で、不景気により全てを失った60代女性が、荷物を車に詰め込み、アメリカ西部をノマド(遊牧民)として放浪するロードムービーだ。本作は金獅子賞(最優秀作品賞)を獲得し、10年ぶりとなる女性監督の受賞となった。
3作目は、イタリア出身のクラウディオ・ノーチェ監督による『パドレノストロ』。ローマに住む10歳の少年ヴァレリオは、父親がテロリストに襲われるのを目撃したことを皮切りに、生活が激変する。恐怖で怯える中、とある少年との出会いが、その後のヴァレリオの人生を大きく変えていく。父親役のアルフォンソを演じた、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノは、本作で最優秀男優賞を受賞した。
最優秀男優賞を受賞したピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(Credits La Biennale di Venezia – Foto ASAC, photo Andrea Avezzu)
パソコンを介した日常か、大スクリーンを介した非日常か
このタイミングで本映画祭を(小規模ながらも)開催したことは、とても意味があるように思う。今後他国でも国際映画祭の開催が控えている事や、ロックダウンの影響で、自宅で動画を楽しむ環境が世界的に整ってきた事は、きっと開催を後押しした理由の一つだろう。確かに自宅で映画を観るのはリラックスできるけれど、映画館で味わう大スクリーンの迫力や高揚感は格別だ。長い自粛期間を経験した私たちだけど、安全に配慮しながら、遠ざけていた楽しみを、もう一度ゆっくり味わってみてもいいかもしれない。そうすれば、あなたらしい「ニューノーマル」が見つかるのかも。ね、きっとそうでしょう?