ART & DESIGN

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「ローマ近代国立美術館」と「ボルゲーゼ公園」で癒される、ローマの休日の過ごし方

ローマを代表するヨーロッパ現代アートの美術館「ローマ近代国立美術館」とは

自宅のあるミラノから、主人の姉の家族がいるローマへ。定番の観光地もいいけれど、ゆっくり美術館を巡りたく選んだのがローマ近代国立美術館でした。ローマ近代国立美術館は、ローマで唯一、クリムトの作品が観ることができる場所と思ってリストアップしていたのですが、実は今年の夏は日本のクリムトの展覧会に巡業中で、クリムトの「女性の三世代」はお預けになってしまいました。

しかし、いろいろとローマの美術館や展覧会情報を検索する中、展示作品に惹かれて、通称GNAMと呼ばれる、このローマ近代国立美術館(Galleria Nazionale d’Arte Moderna)に足を運びました。

ロマーニの癒しの公園「ボロゲーゼ公園」

ローマ近代国立美術館は、ローマを代表する憩いの場「ボロゲーゼ公園」に隣接しているため、公園をゆっくり散策しながら美術館に向かうことにしました。ボロゲーゼ公園は丘の上にあるため、ここから見下ろすローマ市内の風景は、少しだけローマの人々の生活が垣間見ることができるようで、なんともロマンティックな気分になりました。

丘の上にあるボロゲーゼ公園からローマ市内を見下ろす

ロマンティックといえば、このボロゲーゼ公園は意図的か偶然か不明ですが、ハートの形をしていることでも有名です。80ヘクタールの広大な敷地を誇るこの公園は、元々ぶどう園だった場所をシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿が17世紀に買い取ったのが始まりです。シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿が数々の美術品を収集していたため、その美術品を収納する場所として、現在ボルゲーゼ美術館になっているヴィラ・ボルゲーゼ・ピンチーナを建設し、その周辺をプライベートな庭園として保有していました。

17世紀にボルゲーゼ枢機卿がブドウ園を買い取り、この公園を作った

19世紀に、ボロゲーゼ一族のカミッロによって庭園はアスクレーピオス宮殿やヴィラなどが加わり拡張され、現在のイギリス式庭園の形へと進化を遂げました。そして、1903年にローマ自治区に買取されたことをきっかけに、一般公開されるようになりました。今では、ボルゲーゼ庭園はロマーニ(ローマの人々)の憩いの場所として、また眺望の良さから一年中多くの人が訪れています。

ローマ市内の騒々しさとは対照的に、静かで情緒ある並木道やオープンカフェ、水面に浮かぶアスクレーピオス宮殿やルネッサンスの趣を感じるヴィラなど、ローマ近代国立美術館へと繋がるこのボルゲーゼ公園の道は、散策コースにはぴったり

ローマ市内の騒々しさとは対照的に、静かで情緒ある並木道やオープンカフェ、水面に浮かぶアスクレーピオス宮殿やルネッサンスの趣を感じるヴィラなど、ローマ近代国立美術館へと繋がるこのボルゲーゼ公園の道は、散策コースにはぴったりでした。

ライオンが出迎える「ローマ近代国立美術館」

ボルゲーゼ公園を抜けて、目の前に現れたのが10体のライオンと「TIME IS OUT OF JOINT(時は乱れている)」の文字でした。ちなみにこの文字は、現在開催中の展覧会のテーマで、シェークスピアのハムレットの詩の中で、世の中が乱れていて、人々の心が乱れる様子を表す表現として有名な一節です。

「TIME IS OUT OF JOINT(時は乱れている)」は、現在開催中の展覧会のテーマで、シェークスピアのハムレットの詩の中で、世の中が乱れていて、人々の心が乱れる様子を表す表現として有名な一節

170名のアーティストが参加している、TIME IS OUT OF JOINTの展示は、2016年から会期が延長され、等身大のブロンズのライオン、ダビデ・リヴォルタの「I LIONI(ライオン)」もその一つとして、ローマ近代国立美術館のアイコンになっています。

現在会期中の「ON THE FLOWER –The role of the vase in Arts, Crafts and Design.」コンテンポラリーアートと花瓶との関係性をテーマにした、彫刻、写真、絵画など約80作品が展示

広々としたロビーを抜けると、現在会期中の「ON THE FLOWER –The role of the vase in Arts, Crafts and Design.」コンテンポラリーアートと花瓶との関係性をテーマにした、彫刻、写真、絵画など約80作品が展示されています。天井が高く、白を基調としたエレガントな空間が活きた色鮮やかな作品の数々が印象的でした。

現在会期中の「ON THE FLOWER –The role of the vase in Arts, Crafts and Design.」コンテンポラリーアートと花瓶との関係性をテーマにした、彫刻、写真、絵画など約80作品が展示

75の部屋と空間を飾るモダンアートの数々

このローマ近代国立美術館は、1883年に小さなコレクションハウスとして創設され、その後、1915年に現在の場所に大々的に美術館として建築されました。今では、19世紀〜20世紀のヨーロッパのアーティストの作品を中心とした20,000点もの作品を保有し、その中から印象派を代表するモネ、ゴッホ、セザンヌ、モジリアーニなどの有名絵画を含む、常時、約1,100点もの作品を展示しています。

印象派を代表するモネ、ゴッホ、セザンヌ、モジリアーニなどの有名絵画を含む、常時、約1,100点もの作品を展示

このローマ近代国立美術館の特徴は、広々とした空間を有効的に使ったディスプレイです。3フロア、約75の展示スペースにはそれぞれテーマがあり、各部屋に展示されているそれぞれの作品の主張を妨げずに、作品同士が調和し、その中に物語を感じる空間演出が印象的でした。

作品同士が調和し、その中に物語を感じる空間演出が印象的

TIME IS OUT OF JOINTの展示の一つ、ブルーのパネルに水を張ったピノ・パスカリの「32mqの海」、アントニオ・カノーバの巨大な彫刻「エルコーレとリカ」、イタリアを代表する彫刻家ジュゼッペ・ペノーネの数千個のアカシアのトゲを使った作品「spoglia d’oro su spine d’acacia」の3つが共存する部屋では、作品と作品との空間や光などがコラボし、展示作品同士の対話が生まれているように感じました。

ブルーのパネルに水を張ったピノ・パスカリの「32mqの海」

また、パワフルで最も感慨深い作品だったのが、ベルギー出身のベリンデ・デ・ブリュッケレWE ARE FLESHのシリーズの中の一つ、首のない2頭の馬の作品です。彼女の存在感のある作品の数々は、常に世界的に注目を浴び、このローマ近代国立美術館の展示においても動物愛護の観点から、物議が交わされました。日本でも、アイチトリエンナーレでの表現の不自由展の作品が話題になりましたが、どこまでがアート作品なのか、表現の自由・不自由に関して考えさせられるそんな作品の一つでした。

ベルギー出身のベリンデ・デ・ブリュッケレWE ARE FLESHのシリーズの中の一つ、首のない2頭の馬の作品

ゆったりと現代アートに触れる“癒しのローマの休日”

一般的な美術館では、数多くの展示品をディスプレイし、また時系列や種類によって分類、展示するスペースが多いのですが、このローマ近代国立美術館では、広いスペースを生かし、一つ一つの作品、また作品同士の対話や調和を感じながら、一つ一つの部屋をゆったりと各作品を鑑賞できる空間の心地よさが快適でした。

ローマ近代国立美術館では、広いスペースを生かし、一つ一つの作品、また作品同士の対話や調和を感じながら、一つ一つの部屋をゆったりと各作品を鑑賞できる

ローマ市内の美術館や博物館は年中混雑していますが、このローマ近代美術館は観光客も少なく、ゆったりとアート作品に触れることができます。アート鑑賞を堪能した後には、館内のオープンカフェで寛ぎの時間を過ごし、ボロゲーゼ公園&ローマ近代国立美術館を巡る一日は、まさに“癒しのローマの休日”でした。

ーマ近代美術館は観光客も少なく、ゆったりとアート作品に触れることができます。アート鑑賞を堪能した後には、館内のオープンカフェで寛ぎの時間を

[ Galleria Nazionale d’Arte Modern (ローマ近代国立美術館) ]

http://lagallerianazionale.com
・住所:Viale delle Belle Arti, 131, 00197 Roma
・開館時間:AM 8.30 – PM 7.30
・休館日:月曜日

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