映画『ローマの休日』でオードリー・ヘップバーンが乗ったことで、世界中の憧れとなったスクーター「ベスパ」。そのベスパの歴史と、イタリアを代表するオートバイメーカー・ピアッジオの歩みを一望できるのが、「ムゼオ・ピアッジオ」です。
イタリア最大のオートバイの博物館「ムゼオ・ピアッジオ」
フィレンツェのサンタ・マリア・ノベッラ駅から電車で約45分、トスカーナ州ポンテデーラにある「ムゼオ・ピアッジオ」は、ベスパ(Vespa)の製造で有名なピアッジオの博物館です。ピアッジオは、ベスパをはじめ、アプリリア(Aprilia)、モト・グッツィ(Moto Guzzi)など複数のブランドを展開する世界有数の二輪車メーカーです。スクーターやオートバイを中心に、モペッドや軽商用車なども製造し、年間販売台数は約45万〜50万台規模(2026年現在)に達しています。ポンテデーラに工場と本社を置き、さらに世界各地に生産工場や研究開発センターを保有しています。

ムゼオ・ピアッジオは、ピアッジオ社とポンテデーラ市がタイアップしたピアッジオ財団によって2003年に設立されたイタリア最大級の二輪車博物館です。約5000㎡の展示スペースには、ベスパをはじめとするオートバイや航空機など約250点が展示されています。2フロアに分かれた館内には、2001年にピアッジオグループの一員となったデルビの車両なども展示されています。

また、ヒストリカルアーカイブには、19世紀後半の宣材のオリジナルが保管されていて、紙媒体、写真、デジタル素材やビデオなどを貴重な資料を閲覧することができるのも魅力です。ピアッジオ社の歴史を学べるとともに、その貴重価値の高いオートバイの数々、そのデザイン性の高いアートとテクノロジーを学べる貴重な場所として、イタリア国内のアート系、また技術系を学ぶ学生などが訪れています。

創業約130年の歴史を誇る、イタリアの老舗オートバイメーカー「ピアッジオ」
若干20歳のリナルド・ピアッジオは4人の技術者と共に、1886年にジェノバ工業地域で船舶用のパーツメーカーを立ち上げたのが、ピアッジオ社の始まりです。その後、鉄道車両や航空機を製造に至るまで事業を拡大しました。それまでのモーターやエンジンの技術を生かし、一大ブランド、スクーターの代名詞ともなった「ペスパ」が誕生したのが1946年のことでした。

リナルドの息子、エンリコ・ピアッジオが手がけたベスパ。このベスパの名付け親も実はこのエンリコでした。プロトタイプを見たエンリコは、そのエンジン音とフォルムを見て、「Pare una vespa! (まるでスズメバチのようだ!)」と言ったことがきっかけで、イタリア語のVESPA(スズメバチ)というネーミングが付けられたという有名な逸話があり、博物館内には、こんなスズメバチが乗ったキュートなベスパも展示されています。

戦略的な広告や映画の起用で、女性を惹きつけた「ベスパ」
1946年に初代ベスパ「VESPA 98」の製造を開始すると同時に、このポンテデッラの工場での生産を始動させました。世界的に一大ブームを起こしたピアッジオ社のベスパ。「またがらずに乗ることができる着座タイプとステップボード」「水たまりを走行しても、泥で服が汚れない」「女性が乗りやすいバイク」など明確なコンセプトを打ち出したことが、大ヒットの要因でした。また、独自の広告スタイルで、それまでには珍しい女性の広告への起用も、ピアッジオのベスパブランドの確立に繋がりました。

イタリア製のピアッジオのベスパを世界的に有名にしたのが、憧れの映画シーンでのペスパの起用でした。中でも最も有名なのが、1953年に公開されたオードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペックの「ローマの休日」です。ローマ市内をペスパ「VESPA 125」に乗りながらローマ市内を散策する姿は印象的で、映画の多くの広告にも、ベスパに乗る二人の姿の写真が利用され、ベスパは女性の憧れのオートバイとして、さらに人気を高めることとなりました。
1946年以降、約60年の生産台数は1600万大を超え、計130モデルが世界中に送り出され、時代のムーブメントを作ったベスパ。日本では、1979年の大ヒットTVドラマ「探偵物語」の中でも松田優作がベスパP150Xに乗る姿が一大ブームとなり、日本でのベスパ人気に一躍を担いました。毎年斬新なデザインとアイディアで最新モデルを発表し、また1968年に発売し、人気を博した「プリマベーラ」の誕生50年を記念した新型モデルVespa Primavera シリーズを発表するなど、いまだ業界の注目を浴びています。

ヨーロッパ有数のオートバイ大国イタリア。オートバイはイタリア文化の一つと言っても過言ではありません。日本のみならず、イタリア、そして世界的に多くのムーブメントを起こした、イタリアの老舗オートバイメーカー“ピアッジオ”の歴史を心ゆくまで堪能できるスポット「ピアッジオ・ムゼオ」は、バイクファンに限らず、アートや文化的な観点からも、一度足を運んでみる価値のある博物館です。
[ Museo Piaggio ]
●住所:Viale R. Piaggio, 7 – 56025, Pontedera
●公式サイト:https://www.museopiaggio.it/en/
※2019年2月15日に公開した記事を再編集しています
