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シチリアを代表する港町、世界遺産「カターニャ」は五感を刺激するパラディソでした

シチリア第二の都市「カターニャ」の魅力とは

イタリア最南端の島「シチリア」。ニューシネマパラダイスやゴッドファーザーなどの映画の舞台にもなり、イタリア屈指の観光地の一つとして、世界的に有名です。また、映画「グランブルー」に象徴される、青い空、青い海、さらに、太陽の恵みが育てる芳醇なレモンやピスタチオなどを使った料理も魅力です。

また、シラクーザやパレルモ、エトナ山など、7つの場所がユネスコの世界遺産の宝庫でもあります。今回は、そんなシチリアの世界遺産の一つ「ヴァル・ディ・ノート後期バロック様式の町」に登録されているシチリア第二の都市「カターニャ」をご紹介します。ちなみに第一の都市は、州都パレルモです。

シチリアの世界遺産の一つ「ヴァル・ディ・ノート後期バロック様式の町」

私が初めてカターニャを訪れたのは、同地出身の夫と付き合っている頃でした。海とエトナ山を代表する山々に囲まれた雄大な景色、バロック様式の建造物など、見るもの全てに感動したことを今も鮮明におぼえています。最初にシチリアを訪れた時には、まだイタリア語すら満足ではなかった私は、このシチリア訛りのイタリア語が全く理解できず、シチリア弁しか話さない義理の母に話しかけられる度に、主人の助けを呼ぶなど、コミュニケーションに苦労したことを思い出します。

今年の夏も、例年のごとく、夫の実家に帰省し、シチリアの美食と透明度の高いマリンブルーの海を満喫してきました。そして、今回は初めて、カターニャの街を地元出身の夫とゆっくりと散策できたので、この街の魅力をお届けします。

旗に描かれているのは「トリナクリア」と呼ばれるシチリアのシンボル。

旗に描かれているのは「トリナクリア」と呼ばれるシチリアのシンボル。「トリナクリア」と言うのは、ギリシャ語で「三本足」を意味し、シチリア島のメッシーナ、マルサーラ、パキーノの三つの岬を表現しています。中央の顔はメデューサのものですが、髪は蛇ではなく麦なのです

威勢のいい声が飛び交う、カターニャの台所「ペスケリア」

港町「カターニャ」を代表するスポットと言えば、イタリア語でペスケリアと呼ばれる魚市場です(ちなみに、義理の母はシチリア弁でペスカリアと言います)。イタリアの食文化、食生活の重要な役割を果たしているのは、地元のメルカート(市場)ですが、新鮮な魚介が獲れるカターニャでは、特にこのペスケリアが地元の人々の生活に根付いています。

港町カターニャにはペスケリア(魚市場)があり、多くの人でにぎわっています

イタリアの市場は、街の広場(パラッツォ)の近くにあるのが一般的です。その理由は、昔から街の大きな教会に集まる人々に向けて、商人が教会の広場の近くで店を開き、それがメルカートという形で定着したと言われています。このカターニャのペスケリアも、カターニャ大聖堂の広場の側にあり、魚市場には、野菜や果物をはじめ、肉や乳製品を扱うメルカートも隣接しているため、朝から地元の人や観光客で賑わっています。

ペスケリアと隣接して青果市場や肉屋が並ぶ

市場では、気軽に話しかけられて、「日本人かい?(サッカーの)本田知ってる?」なんて、冗談を言われたので、「森本は知ってるよ」と以前にカターニャのチームで活躍していた森本貴幸選手(現アビスパ福岡所属)の名前で返してみたりして、地元の人との会話も楽しみながら散策しました。この日は、すぐに滞在先に帰る予定ではなかったので、新鮮なトロやエビなどにかなり惹かれましたが、魚介類は購入せずに、散々試食して、気に入ったオリーブ漬けとドライトマトを購入。ミラノに持ち帰るはずが、シチリアで全部食べきってしまいました。

シチリアといえば、やっぱりレモン?

夏のシチリアは今年もやっぱり暑かった。カターニャを訪れた7月下旬も猛暑日で、どんなに水を飲んでも暑さを凌げないほどでした。「暑さを凌ぐには絶好の飲み物があるんだ」という主人の言葉に誘われ、立ち寄ったのが魚市場の中のフレッシュドリンクを扱うキオスク。「リモナータ・アル・サーレ、2つお願いします」って、えっレモンに塩入りドリンク?隣の見知らぬご婦人にも、「夏はこれを飲まなきゃ駄目よ」と念押しされ、早速飲んでみることに。

搾りたてのシチリアレモンを炭酸水で割り、塩を入れただけのシンプルな飲み物が「リモナータ・アル・サーレ」

搾りたてのシチリアレモンを炭酸水で割り、塩を入れただけのシンプルな飲み物が「リモナータ・アル・サーレ」。塩気がレモンの酸っぱさを緩和し、レモンの香りも引き立っていて、癖になりそうな味わいでした。気づくと、汗も引いて、暑さで喉が渇いていたのも多少収まりました。

シチリアといえば「レモン」。青い空の下に育つレモンの木を想像する人も多いはずです。義理の姉によると、レモンは買う物ではないらしく、一度、義理の姉の家で料理をしていて、レモンが必要になった際には、隣の家に行って「レモンいただけるかしら。庭からもらっていくわね」と庭からもいできていました。道を歩いていても、やはりレモンの木を植えている家は多く、レモンは「買うもの」という認識はあまりないようです。

シチリアの家庭のほとんどがレモンを栽培

カターニャの歴史を感じる古代ローマの遺跡

カターニャでは、16世紀以降に建てられたバロック様式のカターニャ大聖堂などの建造物、さらにローマ劇場、円形闘技場など、約2000年前の古代遺跡を見学できるのも魅力の一つです。中でも、古代ローマの遺跡は、街の中心部にあり、現在と過去が共存している独特な風景を見ることができます。また、古代ローマ時代に格闘技上として利用されていた円形闘技場は、考古学者により現在も発掘が進められ、国際的にも注目度の高い遺跡の一つです。

カターニャには古代ローマ時代の円形闘技場が現存

日中は世界中から集まる観光客で賑わっているシチリアですが、カターニャはこの島で最も盛えている街。イタリア国内でも有数の歴史をもつカターニャ大学があり、昼間の情緒のある風景から一変して、若者で賑わう夜の街へと一変します。私の主人も若い頃には友人とよくカターニャの夜の街で遊んでいたそうです。

イタリア国内でも有数の歴史をもつカターニャ大学がある

カターニャのB級グルメ「ビステカ・ディ・カバッロ」

カターニャをはじめ、シチリアのどこの港町にもペスケリアがあるため、海辺の街では新鮮な魚介料理を食べることができるのも、この島の魅力です。でも、カターニャのご当地メニューとして有名なのが、実は「馬肉料理(カルネ・ディ・カバッロ)」なのです。街のストリートフードには、馬肉サンドがあるくらい、この地方の馬肉の消費率は高く、マチェレリア(食肉店)には馬肉を扱うお店も少なくありません。

「久しぶりにカターニャの街に来たのだから、馬肉料理が食べたい」という夫のリクエストを受け、ランチは夫が昔よく行ったという馬肉レストランへ。ビステカ・ディ・カバッロ(馬肉ステーキ)、インボルティーニ・ディ・チポロッティ(ネギ巻き)、ポルペッティ(ミートボール)という馬肉料理定番3品のプレートを注文しました。炭火で焼かれた馬肉料理は、想像以上にジューシーで、シチリアのレモンをかけて美味しくいただきました。

ターニャのご当地メニューとして有名なのが、実は「馬肉料理(カルネ・ディ・カバッロ)」

都会でありながら趣のある街の雰囲気を彼の若い頃の思い出話を聞きながら、カターニャの街を一日楽しく散策しました。帰り道には、オープンカフェでゆっくりシチリアの定番「グラニータ」を食べて、カターニャの食べ歩きは終了。

海でゆっくりと寛ぐバカンスも良いですが、古代ローマの遺跡や歴史的な街並みを散策できるのも、この地域の魅力です。カターニャの近郊には、3000年の歴史を持つ古代都市「シラクーザ」や映画グランブルーの舞台となった「タオルミーナ」、世界自然遺産「エトナ山」、新鮮な食材を使った地元料理、シチリアは五感が刺激されるパラディソ(楽園)です。

シチリア五感が刺激されるパラディソ(楽園)です

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