観光地としてはもちろん、住みやすい街としても人気の高いボローニャ。前回の記事では、ボローニャの穴場絶景スポットとしてサン・ミケーレ・イン・ボスコ教会(La Chiesa di San Michele in Bosco)を紹介しましたが、その隣には修道院だった建物を再利用したリッツォーリ整形外科病院(Istituto Ortopedico Rizzoli)があります。
歴史的に価値のある建物は、壊さずに必要な改築だけを施して継承していくのがイタリア流ですが、この病院はまさにその典型とも言えるでしょう。病院の内部には、修道院時代を思わせるフレスコや3つの回廊、改築当時(19世紀末)のモダン建築が融合したなんとも美しい空間が広がっています。
あくまでも病院なので、観光地と言うには憚られますが、一般の人も中に入ることは可能です。教会を見学したら、外に出ずに内部の扉から病院へと抜けることができるので、その順路で見どころをお伝えしましょう。
参考記事:ボローニャに来たらまずここへ!旧市街を一望する丘の上の教会
見どころ① 望遠鏡代わり(?)の窓から望むアジネッリの塔
サン・ミケーレ・イン・ボスコ教会の礼拝堂内に、病院の2階へと続く扉があります。そこを出るとすぐ、診察室などが連なる大きな廊下に突き当たります。
ここから先を行く前に、左手にある大きなアーチ形の窓に注目!窓の向こうにボローニャの街がよく見えますが、立ち位置を調整すると、まるで設計時に計算しつくされたかのように、アジネッリの塔が窓のど真ん中に収まります。
さらに、この窓と廊下には驚きのからくりが。窓を背にして廊下を進み、時々振り返っては塔の大きさを確認してみると…物理的には遠ざかっているはずの塔が、窓越しにはだんだんと大きく見えるようになるのです。
まるで望遠鏡 (イタリア語で cannocchiale)越しに塔を見ている錯覚に陥るので、カノッキアーレ効果(Il effetto cannocchiale)と呼ぶそうです。光学的な根拠があるそうですが、不思議ですね!
見どころ② ウンベルト一世図書館
廊下を少し進んだら、こちらの扉に注目。扉の奥は、ウンベルト一世図書館( La Biblioteca Umberto I)です。かねてから内装の美しさを耳にしていたので、私もいつか見学したいと思っていたのですが、コロナ禍、夏季休館、改築工事と、ボローニャにいた頃はいつも閉まっていました。
先日久しぶりに立ち寄ってみると、扉は開いていたものの生憎の会議中。「1時間後に来て」と言われてしまったのですが、急いでフェラーラへ帰らなくてはいけない事情を話すと、すんなりと入れていただきました。
念願叶って入った図書館は、まるで映画のワンシーンに出てきそうな美しさ。まず目を引くのは、1762年製の巨大な地球儀です。
書架は修道院時代からの貴重なコレクションだそう。突き当りの部屋には、時代を感じる薬学の資料や整形外科の器具が展示されていました。
規模は小さいながら、とても見ごたえのある図書館です。扉が開いていたら、迷わず中に入ってみてくださいね!
それでは廊下を進んで、下の階に降りてみましょう。
1階にもところどころ美しいフレスコが残っています。これはいつの時代のものでしょうか。
見どころ③ カラッチのフレスコが残る八角形の回廊
1階にある3つの回廊のうち、特に歴史的価値が高いのが八角形の回廊です。ここには、ルドヴィコ・カラッチ( Ludovico Carracci)が地元ボローニャの画家たちと共作した17世紀初め(1603-1604)のフレスコが現存します。
彼は、カラッチ兄弟の従兄弟に当たり、3人そろってバロック初期のボローニャを代表する画家でした。
回廊の裏手には教会の鐘楼も見えます。ここだけ中世から時間が止まったみたいですね!
見どころ④ 癒しの回廊庭園
残る2つの回廊はどちらも四角形をしていて、季節の花やハーブが植えられています。 四方を大きなガラス窓で囲まれているので、建物の中にいても日当たりが良く、庭を見ながら廊下を歩くだけで病院にいることを忘れそうです。
庭の中で休憩している患者さんやお医者さんもいました。まさに癒しの空間です。
見どころ⑤ モダン建築美
冒頭でも書きましたが、ここが病院となったのは19世紀末。当時のものと思われる建具が今も使われていて、レトロな雰囲気を醸し出しています。
エントランス近くの売店は、タイムスリップしたかのような佇まい。喫茶コーナーもあります。 帰る前に一服いかがでしょうか。
見どころ⑥ 病院の歴史展示室
時間があれば、小さな展示室も覗いてみてください。病院の設立後半世紀の歴史をたどることができます。時代を感じるプレートなど、さっと見るだけでも面白いです。
帰り方
さて、帰りは来た路をたどって教会を抜け、展望台まで戻っても良いですが、病院のエントランスから出ると旧市街への近道になります。
ここを出て道なりに行くと、そのまま丘の麓まで通じる車道へ降りていくことができます。30番のバスが拾える停留所も近くにあります。
いかがでしたか。都会の喧騒から離れ、緑の向こうに広がる中世の街並みと、知る人ぞ知る芸術・建築美に逢えるサン・ミケーレ・イン・ボスコの複合施設。その魅力を二回にわたりお伝えしました。ボローニャにお越しの際は、ぜひ訪れてみてくださいね!
アクセス情報
Complesso di San Michele in Bosco
住所:Via Giulio Cesare Pupilli, 1, 40136 Bologna BO
ボローニャ中央駅及び旧市街の各停留所からは、路線バス30番San Michele in Bosco方面の終点または一つ手前のIstituto Rizzoliで下車
その他、旧市街からは徒歩、自転車(Mobike)、タクシーなど
関連情報(外部サイト)
San Michele in Bosco complex :ボローニャの観光情報サイト Bologna Welcome による複合施設の案内(英語)
Il cannocchiale di Bologna:ボローニャ大学の通信に掲載されたカノッキアーレ効果 (伊語)