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140万年前の自然の造形、小さな町にある欧州最大級の鍾乳洞GROTTA DI FRASASSI(フラサッシ鍾乳洞)に圧倒される!

フラサッシ鍾乳洞の楽しみ方とは?

皆さんこんにちは!
今日はイタリア・マルケ州にあるヨーロッパ最大級の鍾乳洞「フラサッシ鍾乳洞(グロッタ・ディ・フラサッシ GROTTA DI FRASASSI)」の紹介と、その楽しみ方についてお話しようと思います。一部を除き撮影禁止なため、許可を得た場所での写真とともにご紹介していきますね。

イタリア・マルケ州にあるヨーロッパ最大級の鍾乳洞「フラサッシ鍾乳洞(グロッタ・ディ・フラサッシ GROTTA DI FRASASSI)」

息を呑むような静寂の中にある造形美
まずはその名前について。「グロッタ」は、いわゆる鍾乳洞のイタリア語直訳ですが、この言葉を聞いて思い出されるのがグロテスクという形容詞。イタリアではグロッテスカという言葉で美術用語にもなっていますが、これはまるで”鍾乳洞のような”、つまり鍾乳洞のようにぼこぼこぐにゃぐにゃつんつん、摩訶不思議な形をしたもの、という意味。もちろん鍾乳洞を見るとき、誰もがその美しさに驚きますから、やはりある意味美を形容する言葉なのです。日本で定着した”グロテスク”という言葉のイメージとはちょっと違うのが面白いですね!
さて話を戻し、フラサッシはこの鍾乳洞のある地名。マルケ州アンコーナ県にあるジェンガという自治体の自然公園地区で、この名前フラサッシも”石と石の間の”という意味のとおり、絶壁の岩に囲まれたアペニン山脈地帯の渓谷にある秘境なのです。訪れる方たちは、まず周りに小さな村と大自然しかないことに驚きます。
でも鍾乳洞行きのバス停に行けば、どれだけ多くの方が世界中からここを訪れるのかわかるほど、海外の人には人気のスポット。かくいうマルケ州在住の著者も、初めてここを訪れたとき、どうしてもっと早く来なかったのだろうと思ったほど素晴らしい鍾乳洞なのです。

一番大きい”アンコーナの深海”は、その名のとおり終わりのない深さをイメージしたもので、高さ200m、広さ180×120m

エリアによって変わる鍾乳石の色と形。まるで雪景色のよう

フラサッシ鍾乳洞の大きさ

まずはその大きさについて。皆さんはヨーロッパ最大級と聞いてどんなイメージが湧きますか? とても漠然としていますが、ご存知のとおり鍾乳洞というのはとても複雑なつくりで、現段階で発見されているエリア(すべて繋がっていますが)だけで5箇所、その中でも一番大きい”アンコーナの深海”は、その名のとおり終わりのない深さをイメージしたもので、高さ200m、広さ180×120mと広く、ミラノの大聖堂がすっぽり入るほどだと言われています。

摩訶不思議な形がグロテスクの語源

この摩訶不思議な形がグロテスクの語源

一体どのように発見されたのか?

さて、とても魅力的なのが「この鍾乳洞がどのように発見されたのか」というエピソード。時は1971年6月。当時若き洞窟探険家であった若者ロランドさんとウンベルトさんという2人がこの地域を探検中に山で見つけたいくつかの穴が話のはじまりです。
この穴からはあたかも通気孔のごとく風が吹き出ており、彼らはこの穴の下に何らかの形で鍾乳洞があることを察知します。9月にロランドさんが改めて調査をするために同じ場所を訪れた際に、今度は車のハンドルほどの大きさの穴を見つけます。真っ暗な穴の中にある空間が、どのくらいの高さなのかを確かめるために石を投げ入れ、落ちた音が聞こえるまでにかかる時間を計ることでとても大きな空間であることを発見します。
その時予想されていた深さ、つまり鍾乳洞内の高さは約100m。後日穴の内部に進入するための準備を整え再訪し、少しずつ穴から降りたところ、実際は想像を超えるほどの大きな空間であったことが判明します。これが先述した”アンコーナの深海”の鍾乳洞部分であり、ここから見つかった数多くのエリアの記念すべき皮切りの部分だったということになります。初めてこの鍾乳洞内を照明を照らして見ることが出来たときの探険家たちの感動を考えると、思わず鳥肌が立ってしまいますね。

誕生は140万年前! どのように成形されてきたのか

このヨーロッパでは最大級、世界で3番目に大きいと言われるフラサッシ鍾乳洞。約140万年前くらい……と言われてもピンと来ませんね。人類の歴史上では、旧石器時代、アウストラロピテクスが存在した最後の時期、現在見つかっている、人類が火を使っていたという一番古い証拠であるアフリカ・ケニアの焚き火跡も140万年前のものと言われています。

そんな想像を超えるとてつもない大昔に、今よりもずっと高い位置にあったとされるウンブリアはグッビオが源流のセンティーノ河から流れてくる水が石灰岩の地層に浸透し、フラサッシの渓谷を成形していました。この河の水はある地点で同じ地域を遡行していた硫黄質の水と混ざり合い、それが少しずつ石灰岩の大きな塊を溶かし空洞を作り始めたと考えられており、気の遠くなるような長い時間をかけて現在の広さの鍾乳洞を作り上げた……まさに人類の歴史とともに歩んできた空間なのだと思うと感慨もひとしおです。

石灰質の水が少しずつ鍾乳石のヴェールを成形して行った様子

石灰質の水が少しずつ鍾乳石のヴェールを成形して行った様子

さあ、鍾乳洞探検へ

さて、このフラサッシ鍾乳洞は決められた入場システムによって時間別のグループで現地ガイドとともに入るわけですが、イタリア語はもちろん運よく外国人グループと一緒に入ることが出来れば英語による説明も受けることが出来ます。コースは3つの中から選べ、多くの方は一般的な観光コースと呼ばれる1.5kmの距離を1時間ほどかけて見ていくものに参加します。
さらに専門的な探検コースは、予約をした上でのみ参加できる上級クラスのもの。ですが現地ガイドさんによる説明のおかげで観光コースでも十分に楽しめる内容になっているので、まずはこちらに参加されることをお勧めいたします。

安全な通路をガイドさんと歩くので足元も安心

安全な通路をガイドさんと歩くので足元も安心

そして、”アンコーナの深海”を含む5つのエリア……それは”200の間(SALA 200)”、”グランキャニオン(GRAN CANYON)”、”雌熊の間(SALA DELL’ORSA)”、そして”無限の間(SALA INFINITA)”と、続きます。あまりお話してしまうとせっかくのサプライズが半減してしまうので、実際にぜひ皆さんにも現地に足を運んでいただき、じっくりと本物を見ながら楽しまれることをお勧めいたします。それぞれのエリアの色々な形の鍾乳洞が魅力いっぱいの特徴を持って迫ってきますよ!

魔女の頭と呼ばれる鍾乳石、影絵効果で面白いものも数多い

魔女の頭と呼ばれる鍾乳石、影絵効果で面白いものも数多い

人類の歴史とともに歩んできた自然の造形芸術、フラサッシ鍾乳洞。イタリアマルケ州の秘宝にきっと想像以上の感動が皆さんを包み込むはずです。普段の観光地のざわめきから離れ、大自然のグロッテスカの世界に浸ってみませんか?

フラサッシ鍾乳洞オフィシャルサイト
http://www.frasassi.com/
※季節により入場時間が変わります。希望の訪問時期に合わせた時間をご確認ください

フラサッシ鍾乳洞までの行き方
ローマ~アンコーナ間の鉄道線路のジェンガ・サンヴィットーリオテルメ駅(Genga-San Vittorio Terme)にて下車、徒歩数分でチケットオフィスのある広場があるので希望入館時間のチケット購入。同広場発のシャトルバスで鍾乳洞の入り口まで移動し、下車後現地のガイドさんのガイダンスに従い入場。

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