2026年2月6日から22日まで、冬季オリンピックがミラノとコルティナ・ダンペッツォを中心に開催された。なんと、この二都市共同開催は史上初の試みだ!
コルティナ・ダンペッツォはイタリアセレブが愛する冬のバカンス地として知られ、キアラ・フェッラー二も毎年のように訪れる映えスポット。エレガンスと山岳リゾートが同居する、まさにイタリアらしい舞台だ。しかし、華やかなイメージとは裏腹に、蓋を開けたらカオスなのがイタリア。今回も例外ではなかった。
予算4倍、工事遅延、謎の妨害事件
当初13億ユーロだった予算は、2024年末には約57億ユーロへとスキージャンプ級の大ジャンプを披露。道路整備やスライディングセンターの建設は遅れに遅れ、一部インフラは2030年以降にずれ込む可能性すら指摘されていた。特にコルティナのスライディングセンターは、夜間作業まで投入しても完成がギリギリ。
そして2025年には、工事現場で冷却パイプが何者かにより道路に引きずり出されるという謎の妨害事件まで発生。さすがイタリア、常にドラマを欠かさない。

どうにかなる精神で追い上げモード発動
ところが、最後だけ急にスイッチが入るのがイタリア。2025年後半になると、大会組織委員会SIMICO (Società Infrastrutture Milano Cortina 2020-2026 S.p.A.) は「プロジェクトは急ピッチで進行中」と発表し、政府も追加予算や優先工事の指示など緊急モードに切り替えた。
2026年1月には国際スキー・スノーボード連盟(FIS)会長が「準備は予定通りに戻りつつある」とコメント。温暖化で心配されていた雪不足も乗り越え、雪の確保や主要会場の整備が順調に進んでいることが明らかになった。
予定は未定文化
イタリアの公共事業は、国・州・市町村・文化財保護局・EU規制という多層構造の迷宮の中で進むため、意思決定がとにかく複雑。さらに政権交代も多く、プロジェクトの継続性は揺れやすい。そんな中、進んだミラノ・コルティナ2026では、建設入札をめぐる汚職疑惑で捜査・逮捕者が出たり、コルティナ側でマフィア的組織との関係が疑われる案件が捜査対象になったりと、社会派ドラマが序盤から全開に。
さらに政府は入札手続きの簡略化や監査の一部スキップ、五輪関連工事の特別扱いを認める特別ルールを導入した。要するに「急いでるから細かいことは後で!」というイタリア式ショートカットだ。ところが、この便利すぎる近道が後に司法から「透明性が下がりすぎて怪しい」と突っ込まれ、ここでもまた、イタリアらしい社会ドラマが展開されることになった。

こうした社会問題に、イタリア人の国民性が絶妙にブレンドされる。それが、マンマの愛と同じくらい大切な「見栄えの良さ」と、世代を超えて受け継がれる「なんとかする精神」。結果として、計画段階で黒い噂や数々のドラマ、そして遅延に見舞われるが、最後に怒涛の追い上げを見せるという流れが完全にテンプレ化している。もっと砕いて言えば、イタリア人にとって締め切りや予定はあくまでも「目安」であり、ほぼ未定に等しいのだ。
それでもミラノ・コルティナ2026は見どころの宝庫だった
ミラノ・コルティナ 2026はカオスの中で、実はポジティブな注目点も盛りだくさん。むしろ、混沌の中にこそイタリアの本領が隠れている。
まず、メダルデザインが発表されると大きな話題に。メダルは二つの半分が合わさって一つになる構造で、ミラノとコルティナという二つの都市の協力関係を象徴している。アスリートと支える人々の関係性まで重ねられ、ストーリー性の強さはさすがイタリア。見た目だけでなく意味まで盛り込んでくるあたり、デザイン大国の意地を感じる。

さらに今回の大会では、スキーマウンテニアリングが初めて正式競技として採用された。イタリア北部では昔から人気の高い競技で、地元開催ならではの熱気に包まれた。そもそも、ドラマチックで情熱が人生のガソリンであるイタリア人が大好きな「限界に挑む系スポーツ」。崖を登り、雪を駆け上がり、体力もメンタルもギリギリを攻めるこの競技は、イタリア人の「人生は常にクライマックス」精神と相性抜群だ。盛り上がらないわけがない。
そして注目の開会式は、古代ローマ時代の円形劇場アレーナ・ディ・ヴェローナ。歴史的建造物をそのまま舞台にするという、イタリアにしかできない反則級の美しさに世界中が熱狂した。「史上最も美しい開会式」という声も多く、芸術大国の威信を示した。
紀元1世紀に建てられた古代ローマの円形劇場アレーナ・ディ・ヴェローナ。世界的なオペラの聖地として知られ、夏の野外フェスではキャンドルが灯る幻想的な光景が広がる。ミラノ・コルティナ2026では開会式の舞台として使用された。
さらに会場はイタリア北部の広い地域に分散しており、史上もっとも分散型の冬季五輪となった。ミラノではフィギュア、リヴィーニョではスノーボードやフリースタイル、コルティナでは女子アルペンスキーに加え、カーリング、そして建設遅延で世界を騒がせたスライディングセンターでのボブスレー、リュージュ、スケルトンが行われた。 このほかにも、バイアスロンやノルディック複合などが周辺地域で実施され、どこを切ってもSNS映えする景観が広がる。若者の注目を集めるには十分すぎるロケーションだ。
ミラノ・コルティナ 2026は遅延や予算超過といった課題を抱えつつも、直前になって一気に仕上げてくるイタリア流の追い上げによって大成功をおさめた。開催直前までドタバタは続いたが、最終的には何食わぬ顔で間に合わせてくるのがイタリア。混沌と美しさ、伝統と革新が同居するこの大会は、スポーツの祭典であると同時に、イタリアという国そのものを映し出すカルチャーショーとなった。カオスも社会ドラマも見どころも全部ひっくるめて文化として楽しみ、イタリアの奥深さを実感した人も多かったはずだ。