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イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話〜JFKワインズ編Vol.2〜

「オルトレポー・パヴェーゼ」については前回の記事、またはこちらを参考にしてください。


イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話~JFKワインズ編Vol.1~
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イタリアワインソムリエ藤本のワインとペアリングの話~JFKワインズ編Vol.1~

藤本 智 / 2022.04.21


イタリア・ポー川のほとりから日本のテーブルへ 土着品種ワインを届けたい理由
INTERVIEW

イタリア・ポー川のほとりから日本のテーブルへ 土着品種ワインを届けたい理由

「ITALIANITY」編集部 / 2022.01.21


この土地でボナルダと呼ばれる土着品種。

ボナルダ」という黒葡萄、ご存じでしょうか⁇

この葡萄は本来「クロアティーナ」とも呼ばれ、ピエモンテ州でも栽培される品種ですが、オルトレポー・パヴェーゼでは「ボナルダ」と呼ばれます。


さらに、オルトレポー・パヴェーゼのエリアの北東に位置するヴェルサ渓谷の右岸「ロヴェスカーラ」でのみ、古来より栽培されるボナルダの亜種「ボナルダ・ピニョーロ」は、他のボナルダとは異なる味わいを魅せてくれます。


真っ黒で微発泡もオルトレポーの定番。

グラスに注がれたワインの写真です。

このボナルダ、濃厚で力強いワインを造る一方で、オルトレポー・パヴェーゼやミラノの人々に愛される微発泡タイプも現地では造られています。

そのタイプの1つがこちらのワインです。


  • ワイナリー/ Fratelli Agnes(フラテッリ・アニェス)
  • ワイン名/ Cresta del Ghiffi(クレスタ・デル・ギッフィ)
  • 葡萄品種/ Bonarda Pignolo(ボナルダ・ピニョーロ)

クレスタ・デル・ギッフィのワインボトル

オルトレポー・パヴェーゼの生産者たちから「ボナルダ造りのエキスパート」と呼ばれるワイナリー、それが今回ご紹介する「フラテッリ・アニェス」です。


ワインの特徴としては、スパイスを伴ったベリーの香りとスムースな口当たり。ふくよかな果実味は、熟度の高いダークチェリーやアマレーナチェリー、プラムの果実風味を感じます。


レーズンやドライフルーツのプルーン、ナツメヤシのような濃厚さに黒糖やカカオのアクセント。ふくよかな味わいを包み込み支える細かく優しい泡立ちが味わいのバランスをとり、優しく広がるタンニンが口の中を引き締めます。充実感のある新鮮な果実風味と、そのほか様々な要素が入り混じったミディアムボディの微発泡ワインです。


このワインは冷やしてでも室温でも、どちらでも美味しく召し上がれます。温度帯の違いでワインの表情が変わってきますので、いろんな楽しみ方ができます。ただし温度高めで抜栓すると、発泡の力で中のワインが噴いてしまいますので、まずは冷やしめで抜栓してそこから温度を上げていくのがおすすめです。


料理とのペアリング①醬

テーブルに乗った「豚バラとキャベツの甜麺醤炒め」の写真です。

このワインをテイスティングした時、どなたも感じる第一印象はその濃厚な果実風味。


この甘味に合わせる要素はなんだろうと考えたのは「濃度」と「密度」。そして思い浮かんだのは「醬」。醬と言っても色々ありますが、このワインに負けないコクのある醬は?と考え選んだのは「甜麺醤」。甜麺醤を使った料理をいろいろとイメージした結果、今回合わせた料理は「豚バラとキャベツの甜麺醤炒め」です。


「豚バラとキャベツの甜麺醤炒め」とワインがテーブルに並んでいる写真です。

まず料理の湯気と共に立ち上る甜麺醤の甘い香りに、ワインの豊かな果実香がうまく重なります。そして味わいは、醬と素材が絡まり合った料理の濃度と、このワインの芳醇さが素晴らしいバランスを見せてくれます。ワインの果実味の濃度と醬の濃度のペアリング、ワインも料理も止まらないです。


ワインは軽く冷えていることで渋みが出てきます。豚バラの油脂や醬のコクと、温度コントロールで引き出してあげたワインのタンニンがうまく溶け合い中和されていくような印象です。温度がある料理の状態と軽く冷えたこのワインの温度差も、口の中をリフレッシュしてくれてよい相性を見せてくれるので、熱々のできたてを是非合わせてほしいです。


おすすめの楽しみ方は軽く冷やして抜栓し、そのままクーラーには入れず室温で温度変化を楽しむ飲み方。それと料理の注意点としては、今回の料理に豆板醤が入ったホイコウロウは合わないです。辛味がワインの渋みをざらつかせ、辛味がワインの甘味と反発し合います。発泡性と強い辛味も少し喧嘩気味な印象です。


シェフ曰く料理のポイントは、豚バラはサッと、野菜は香りが出るまでしっかりと炒めてくださいとのこと。参考にしてみてください。


料理とのペアリング②チョコレート

「トルタ・ディ・チョコラータ」とワイン瓶が並んだ写真です。

このワインに感じるカカオのようなフレーバーと、レーズンやプルーンのような風味はチョコレートと合うのではと思い、ペペロッソで提供している「トルタ・ディ・チョコラータ」(チョコレートケーキ)を合わせてみました。小麦粉を使わず、バターをたっぷり加えた滑らかな食感のチョコレートケーキです。


ワイングラスに注がれたワインを上方向から撮影した写真です。

チョコレートケーキのカカオの風味とワインの濃厚なベリー系の果実味がうまく溶け合い、カカオ由来のアーシーな香りとビターさを果実味がうまく包み込みます。


チョコレートケーキのバターの油脂を、ワインのタンニンがうまく中和してくれるのもポイントです。ワインが口の中を軽く引き締めて、またチョコレートケーキが食べたくなりますし、その逆もまた然り。


「トルタ・ディ・チョコラータ」とワインの写真です。

バターや生クリームなど、乳製品がしっかりと入っているコクのあるチョコレートのデザートは、ワインとのテクスチャーの相性がとても良いと思います。ワインは軽く冷やし目くらいで、ドルチェとの温度が離れすぎないくらいが好相性です。


シチュエーションとしてはやはり食後でしょうか。僕ならバレンタインデーのレストランで、チョコレートのデザートと一緒に提案したいですね。チョコレート好きに是非試して欲しいです。


ちなみに気になって合わせてみた他のデザートは「かりんとう饅頭」です。これは全然合いませんでした。やはり乳製品の油脂がこのワインとつながりやすくなるんでしょうね。


そう考えると①のペアリングも②のペアリングも「甘味」と「コク」がペアリングのポイントですね。


最後に

以上、2つの食材と微発泡の赤ワインとのペアリングの検証いかがでしたでしょうか?

おうちでも再現性が高い料理とワインのペアリング。単体で素晴らしいワインですが、両方合わせることにより、もっと素晴らしいものになると思います。


今回のワインのテイスティングコメントとペアリングの検証結果をご覧いただく事で、皆様のイタリアワインライフがより豊かなものになりますように。