シャンパーニュ?フランチャコルタ?いいえオルトレポーです。
Oltorepo Pavese(オルトレポー・パヴェーゼ)。
それを聞いてイタリアのワインの産地とすぐにわかる方は、なかなかいらっしゃらないでしょう。場所はミラノから車を南へ1時間ほど走らせ、イタリア最大の川「ポー川」を越えた辺り。
オルトレポー・パヴェーゼは、イタリアで最も良質で偉大なPinot Nero(ピノ・ネーロ※ピノ・ノワールのイタリア語読み)を生み出すエリアです。「ピノ・ノワール」と聞くと真っ先に連想するのは赤ワインだと思いますが、それに次いでピノノワールから生み出される銘醸ワイン、それがスパークリングワインです。
今回は、オルトレポー・パヴェーゼのピノ・ネーロから造られる良質なスパークリングワインと、それに合わせる料理のお話を皆さんと一緒にしていきましょう。
シャンパーニュに劣らない構成力
ワイナリー/Percivalle(ペルチヴァッレ)
ワイン名/Pinot Nero Rose(ピノ・ネーロ・ブリュット・ロゼ)
葡萄品種/Pinot Nero 100%(ピノ・ネーロ 100%)
今回紹介するのは、オルトレポー・パヴェーゼの3つの渓谷のうちの1つ、コッパ渓谷の川の分かれ目に位置するボルゴ・プリオーロのワイナリー、Percivalle(ペルチヴァッレ)です。
彼らが造るピノ・ネーロ100%の辛口スパークリングロゼは、非常に輝きがあり透明感溢れる明るいロゼ色。細かくクリーミーな泡立つがグラスに立ち上ります。
そしてまず感じられるのは、酵母や発酵食品のような香ばしさと複雑さの折り重なる香り。そこに、溶けたクランベリーやザクロの淡くデリケートな果実風味。メロンを思わせる甘く青い香りとホワイトチョコレートを思わせる乳製品の柔らな香りが、とても穏やかに見え隠れします。
口当たりは柔らかく口に含むと繊細な果実味を感じ、出汁のような密度の高い旨味が舌の上に広がります。ハリのある豊富なミネラルが味わいを包み込み、チーズのような熟成感がポジティブなアクセントになり、クエン酸のようなシャープな酸味が口の中を引き締めます。
ストラクチャーがあり旨味もしっかりと感じさせるあたりは、良質なピノ・ネーロならでは。普段は黒葡萄の比率の高いシャンパーニュを楽しむ方にも、是非試して欲しいワインです。
そしてペアリングですが、スパークリングワインとの定番の組み合わせである「生ハムとサラミ」や「チーズ」などでは無く、もう少し突っ込んだペアリングを検証してみました。
料理とのペアリング①トマトの冷たいおでん
「イタリア料理」で相性の良い食材を連想した時、思い浮かんだのが『トマト』。そして「イタリア料理以外」を敢えて提案したいと思った時、真っ先に思い浮かんだ食材は『白だし』でした。
そして思いついたのが、白だしをたっぷり含ませたトマトの冷たいおでんです。トマトは白だしと共に真空状態でマリネ。皮から出る青っぽさと、白だしの旨味を含んだトマトの果肉感が印象的な一皿です。
結果としては…とても良いペアリングでした!
ロゼ特有の淡いベリー風味が、トマトの味わい・酸味と上手く重なります。またトマトの皮に強く感じるベジタルさが、ロゼの果実風味を引き立てます。トマトの皮は湯むきするか・しないかで感じ方がかなり変わりますが、ロゼに対するアプローチとして皮があった方がワインとは好相性。そしてトマトの酸味とワインの酸味が同調。白だしにしっかり浸かることで水分量の多い食べ心地は、瑞々しくフレッシュなスパークリングワインにピッタリ。料理の上に添える鰹節の乾いた香りと、ワインの持つ酵母的香ばしさも相性がいいです。
更に白だしとワインが合います。白だしは塩味と旨味の構成。料理の塩味とワインのミネラルは相性抜群です。塩味がミネラルを際立たせ、ミネラルが塩味を引き立てます。そして旨味のインパクトを包み込むような豊富で滑らかな酸が、ペアリングのバランスを整えます。
日本が誇るUmami文化とイタリアワインの融合。出汁ってずるい(笑)っていうくらい、簡単に美味しい料理になる調味料の有る国で生まれ育ったことに、誇りすら覚えるがっちりとハマったペアリングでした。
料理とのペアリング②白レバー
そしてもう1つのペアリング食材は「白レバー」です。
白レバーを選んだ理由は、
- 白レバーと同型の食材、フォアグラのテリーヌとロゼシャンパーニュの相性の良さを再現したい。
- 諸説ありますが、南ロンバルディア州辺りから始まったと言われる、イタリアのフォアグラ文化のイメージを、南ロンバルディア州のワインのペアリングにぶつけてみたい。
- イタリアで「クイント・クアルト」と呼ばれる庶民の内臓料理文化を、イタリアのハイエンドなスパークリングワインで合わせたい。
- 日本の家庭でも手に入りやすい食材、鶏レバーで再現性を高めたい。
などです。
白レバーはパテにしてピンクペッパーを添えると相性が良いですが、もっとシンプルでお家でも再現性の高い「焼き」で検証してみました。
合わせてみると、舌にねっとりと広がるレバーのテクスチャーをスパークリングワインの泡と酸が中和させ、口の中がリフレッシュされます。そしてレバー特有の香りを、このワインの持つ酵母や発酵食品のような複雑なアロマが包み込み同調させます。
そして、このワインに料理をより近づけるための重要な要素が「ラズベリーヴィネガー」。ワインの酸味とヴィネガーの酸味、ワインの果実風味とヴィネガーのベリー風味が重なります。ヴィネガーの「酸味」の後に広がる「旨味」も、このペアリングをより重層的なものにしてくれると感じました。
ちなみに同じ白レバーをカツにして合わせてみましたが、ワインより白レバーがやや強い印象でした。味わいの相性は悪くないのですが、衣の中で蒸されるように加熱された際に溜まる白レバーの香りをワインが受け止めきれない印象。同じ食材でも、調理法によってワインとの相性はガラッと変わります。
最後に
以上、2つの食材とロゼスパークリングワインとのペアリングの検証いかがでしたでしょうか?
おうちでも再現性が高い料理とワインのペアリング。単体で素晴らしいワインですが、両方合わせることにより、もっと素晴らしいものになると思います。
今回のワインのテイスティングコメントとペアリングの検証結果をご覧いただく事で、皆様のイタリアワインライフがより豊かなものになりますように。