自らをブレッドギーク(パンおたく)と名乗り、一日に20個以上のパンを食べることもあるという池田浩明さんが、イタリアパンの魅力に迫る新連載!
今日のお目当ては新麦のパン・フォカッチャ
あなたはフォカッチャを知っているだろうか? 平べったくて、ぼこぼこ穴が空いているイタリアのパン。窯入れ前の生地に、オリーブオイルをかけ、具材を並べて焼く。そのライブ感と勢いがこのパンの身上なのだ。
フォカッチャの窯入れ風景を、東京・護国寺にあるパーネ・エ・オリオという和製パネッテリア(イタリアのパン屋)で見せてもらう。イタリアから輸入されたピザ専用小麦粉に、北海道産の新麦も使用する。
新麦については説明が必要だろう。この夏とれた小麦を最速で製粉、挽きたてを味わう、自然の恵みに感謝するプロジェクト。10月20日に北海道産新麦が解禁。いまは十勝の農家・前田茂雄さんが育てた新麦はるきらりも使ってフォカッチャを作っている。
朝10時。フォカッチャの窯入れ前、朝食を食べる。小林照明シェフ、マダムの伊基子さん、スタッフの伏見さん。
前日焼きのフォカッチャを切り開いてトマト、生ハム、ルッコラをのせて、イタリアから輸入している極上のオリーブオイルをかけたら、窯の中へ。フォカッチャのホットサンドは、皮がばりばりになってすごくおいしい。毎日こんなにおいしいまかないを食べているなんて本当にうらやましい。
このライブ感、アドリブ感がイタリアパン
前日から十分に熟成された生地。イタリアの師匠ジャン・カルロからもらったパネトーネ種(自家培養された発酵種)も入れられ、粉の旨味が引き出される。ここにセモリナ粉をかけ、よぶんな空気を抜けば、フォカッチャ生地の完成。
ぷーっとふくらんだ生地を、ぶすぶす指でぶっ刺していく。一体大丈夫なのか!? 「フォカッチャの語源は『平たい窯焼きのパン』。空気を出して背の低いパンにするのです」(小林シェフ)。発酵の具合に合わせて開ける穴の個数もひとつひとつ調整するという。
オリーブオイルを水たまりができるぐらいどぼがけ! これがおいしくなくてなにがおいしいといえよう。使用するのは、パーネ・エ・オリオが自ら輸入するイタリアの上質なオリーブオイル。
右奥はトマトとモッツァレラの「マルゲリータ」、左奥はトマトとパンツェッタの「アマトリチャーナ」。そして手前は、ブルガリアのチューブリッツァというスパイスを使って紫タマネギなど彩りよく野菜をのせた「ブルガリアのフォカッチャ」。自由な発想でどんな具材をのせてもおいしくなるのがフォカッチャのすごさ。
右側はモッツァレラとクルミ、はちみつとゴルゴンゾーラ。左はトマトとモッツアレラ、バジルソースの「カプレーゼ」。
奥は山梨のビオファームミドリから直送されたリーキ(西洋ねぎ)をざくざく切ってのせた、季節のフォカッチャ。そのときとれた食材をアドリブでのせる。
じゃがいものフォカッチャ。ポテトスライスの並べ方は、イタリア・ラティーナにある人気店カルーゾのおばあちゃんに教えてもらったもの。
焼きたてフォカッチャとご対面
いよいよ窯入れ。
窯の中で、オリーブオイルの水たまりが、血の池地獄みたいにぶくぶくしている! 最高の眺め。
次々と生地が焼きあがってきた!
焼きあがったアマトリチャーナ。ぶーっとふくらんで、お焦げもできておいしそう!
焼きたてのカプレーゼをカットして店頭へ。トマトもとろっと溶けて、この瞬間がいちばんおいしい。
さて、フォカッチャの味。ちょちょぎれるオリーブオイルの風味に押し出されるようにして、イタリアの小麦のフレーバーがじーんと伝わってくる。ただの無色ではなく、日本のパンにはなかなかないような分厚い麦の風味である。
パーネ・エ・オリオ
営業時間 10:00~18:00(日月祝休み)
東京都文京区音羽1丁目20−13
TEL:03-6902-0190
http://paneeolio.co.jp
【初出:この記事は2017年11月9日、初公開されました@AGARU ITALIA】