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イタリアワイン専門Vino Hayashi代表取締役・林 功二さんに訊く「イタリアワインの上手な選び方」

イタリアワインを難解にする原因とは?

日本を代表するイタリアワインの輸入・販売会社「Vino Hayashi(ヴィーノ ハヤシ)」。林基就さんと林功二さんの兄弟が営む同社は、もっとイタリアワインを楽しんでもらいたい、という思いを胸に日々活動しています。とはいえ、イタリアワインって何だか難しそう、と筆者は漠然と思っていました。そこで、林功二さんにいろいろと訊いてきました。

SHOP ITALIA 単刀直入にお伺いします。イタリアワインって難しくないですか?
林功二 確かにフランスワインに比べて難しいところはあると思います。その理由は、バラエティの多さにあると考えます。バラエティとはそのままの意味もありますが、ワイン用語ではブドウ品種のことをバラエティといいます。イタリアワインはとにかくバラエティが豊富なのです。
SHOP ITALIA どれくらいあるのですか?
林功二 流通しているだけでも200種あるといわれます。フランスでは多くて20種ほど。

SHOP ITALIA 約10倍! なぜそこまで品種が多いのですか?
林功二 ブドウ(ワイン)は元々ジョージアや中東、ギリシアを経てシチリアにやってきました。そしてローマ帝国によって拡大し、キリスト教とともにヨーロッパに根付いていきました。そのひとつにフランスがあります。フランスの場合、国の統一がイタリアに比べて早く、ブドウ栽培やワイン醸造に関しても情報共有がしやすかったのです。つまり、ボルドーはカベルネ・ソーヴィニヨン、ブルゴーニュはピノ・ノワールが適しているからそれを植えた方が良いという具合に。
SHOP ITALIA イタリアは国家統一が遅かった。
林功二 はい。1800年代半ばにようやく国家が統一されました。だから地区や町、村独自のブドウ(ワイン)がいまだに残っているのです。
SHOP ITALIA イタリアの北部、中部、南部という風にもわけられないのですか?
林功二 隣町でも「俺たちのワインが一番だ!」と言わんばかりに全然違うものだったりします。

希少なワインとして、ワインではなくベルモット、ボルゴ・サン・ダニエーレのサントンをいただきました。フルーティーでスパイシーな香りと、心地よいほろ苦さが印象的なオーガニックのハンド・クラフト・ベルモット
SHOP ITALIA ブドウ品種が違うだけで、そこまで違うワインになるのですか?
林功二 ブドウが違うということは、豚肉と牛肉が違うのと同じようなものです。

上手に選ぶ方法を教えてください!

SHOP ITALIA それだけ種類が多いと選ぶのが難しい。上手に選ぶ方法を教えてください。
林功二 まずはブドウ品種で選ぶ。好みのブドウ品種を見つけることが近道です。
SHOP ITALIA おすすめの品種は何ですか?
林功二 サンジョベーゼですね。イタリアで最も多く作られている黒ブドウです。
SHOP ITALIA ワイン名でいうとどういうものがありますか?
林功二 キャンティ、キャンティ・クラッシコが有名です。が、このブドウが面白いのは、キャンティを名乗らない、ボトル1本1ユーロしないものがある一方で、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのようにイタリアで最高級とされるワインにも使われている点にあります。同じサンジョベーゼでも違う味や香りを意識すると面白いです。

サントンは氷を入れて飲むのもおいしい
SHOP ITALIA イタリアワインといえばスーパータスカンが有名ですが。
林功二 このワインはイタリア土着のサンジョベーゼではなく、国際品種であるメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンを使い、普通のトスカーナ(タスカン)のワインじゃないよ、とアピールして評価されました。でも、それが一般的に広まり、逆にまたサンジョベーゼが注目されるようになっています。

ネレッロ・マスカレーゼというブドウを栽培するエトナを指さす林さん
SHOP ITALIA そんなイタリアワインのトレンド、王道をすでに楽しんでいる方に次なる1本をお勧めするなら?
林功二 ネレッロ・マスカレーゼというシチリアの土着品種があるんですけど、これがどういうものか捉えられると面白い。
SHOP ITALIA どういうものなんですか?
林功二 シチリアの火山で有名なエトナで栽培されるブドウで、酸とタンニンがしっかりとある赤ワインです。2000年代になって注目されたブドウ栽培の地域で、そこから有名なワイン醸造家がこぞって畑を持つようになりました。ブドウの木自体はすごい樹齢が古いものが残っています。

イタリアワイン最上位DOCGの謎

SHOP ITALIA イタリアワインを格付けするのにDOCGというものがありますが。
林功二 Denominazione di Origine Controllata e Garantitaの略で、日本語だと統制保証付原産地呼称ワイン。イタリアで最も厳しい基準をクリアした最上位のワインとされるものです。
SHOP ITALIA では、これを飲んでさえいれば間違いがない。
林功二 あながちそう言い切れないのが、良くも悪くもイタリアワインの面白さなんです。味、クォリティだけで基準がクリアできるわけではなく、歴史やストーリーも重要なんです。ちなみにスーパータスカンはDOCGには入っていません。ボルゲリ・サッシカイヤは一つ下の格付けであるDOCなんです。
SHOP ITALIA そのへんもイタリアワインを難しくしている点なんですね。
林功二 伝統はあるけどあんまり美味しくないよね、というDOCGもある。それも含めて、“豊穣たる”カオスを楽しめるかどうかがカギとなるように思います。

SHOP ITALIA どうしたら楽しくなりますか?
林功二 やっぱり現地の作り手とそこで飲むのが一番。でもそれを実現するのは当然難しい。DOCGは現在73あります。これを全部飲んだことがある人ってほとんどいない。だったらそれをすべて回って、取材して、それをマガジンや動画にして、読んだり観てくれた人がそこに実際にいるような気持ちになってくれるのがいいかなと。そう思って「月刊DOCG」を発行したのです。

計73号を発行する「月刊DOCG」。記念すべき創刊号の表紙
SHOP ITALIA (ページをめくりながら)ワイン雑誌というよりも旅雑誌のようですね。
林功二 このマガジンを定期購読していただくと、そこで取材したDOCGワインが付いてきます。これを読みながら、ワインを飲むと現地にいる気分になれると考えました。
SHOP ITALIA ワインの生産背景もしっかり取材されていますが、それ以上にその街や地域の情報が載っています。写真もきれいです。
林功二 残念ながら数に限りがあるのですが。
SHOP ITALIA 希少なワインが付いてきますからね。ただ、素晴らしい記事なので、これだけでも読む価値はあると思います。SHOP ITALIAで掲載させていただけませんか?
林功二 いいですよ。
SHOP ITALIA 本当ですか! ありがとうございます。

というわけで、Vino Hayashiさんのご厚意により、月刊DOCGの一部をSHOP ITALIAで今後掲載させていただきます。イタリアワインをもっと楽しむために。そのヒントとしていただければ幸いです。

ヴィーノ ハヤシ
功二さんの兄・基就さんは6年半に渡り、イタリアで最も長くミシュラン三つ星を維持するリストランテ・ダル・ペスカトーレ(イタリア北部マントヴァ)のシェフソムリエ を勤めました。さらにイタリア国際ワインアワードでは『オスカー・デル・ヴィーノ2012』にて、アジア人初の「最優秀ソムリエ賞」を受賞。2010年に、ワインの輸入・販売事業を行う株式会社Vino Hayashiを、元商社マンである功二さんと共に設立し、これまでイタリア国内のみでしか流通されていなかった、希少で個性豊かなイタリアワインを中心にお届けしています。
http://www.vinohayashi.com/

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