今や世界中のグルメが注目するトスカーナ料理。さぞかし豪華な料理なのかと思いきや、実際はとても素朴な質実剛健といった風情の料理が多く、貧しい農民達が作った料理がベースとなっています。そこに海と山を擁するトスカーナの良質なオリーブオイル、チーズ、ハムやサラミなどの良質な加工品が加わり、独自の食文化が形成されていきました。シンプルがゆえに素材の持つ力が美味の理由と言えそうです。
決して豪奢ではないトスカーナ料理ですがフランス料理の起源だというのは有名な話で、時は6世紀ルネサンス期のフィレンツェ、当時のフランス国王アンリ2世に嫁いだメディチ家のカトリーヌと彼女の大勢の専属料理人達が当時の流行であったトスカーナ地方の郷土料理と、彼らの持ち込んだナイフ・フォークの使用などによって今のフランス料理が形作られたということです。
歴史と食材への愛が感じられるトスカーナ料理の奥深さが私が強く惹きつけられる理由かもしれません。
今回も「自宅で作れる素材の味を活かしたトスカーナ料理レシピその1」に続き、素朴で奥深いトスカーナ料理レシピをご紹介します。
自宅で作れる素材の味を活かしたトスカーナ料理レシピその1はこちらをクリック
白いんげん豆のトマト煮
トスカーナ産のカンネリーニという白いんげん豆をトマトピューレで煮込みセージで風味漬けをした煮込みです。付け合わせにしたりパンに乗せてオープンサンドにしていただいても美味しい。今回は手に入りやすい白いんげん豆の水煮を使いました。
白いんげん豆の水煮 ― 1/2 缶
にんにく ― 1/2かけ
セージの葉 ― 3枚
トマトピューレ ― 200ml
オリーブオイル ― 大さじ1/2
塩・黒こしょう ― 各適量
<作り方>
1 鍋にオリーブオイルを入れ、潰したにんにくとセージを入れて弱火にかけ、香りが出てくるまでじっくり炒める。
2 1に水、トマトピューレを加えて一煮立ちしたら1豆の水気を切って加え、10分程煮て最後に塩、こしょうで味を整える。
3 イタリアのトマトピューレとトマトの水煮を裏ごしして煮詰めたもの。市販のトマトの水煮をフードプロセッサーで滑らかにし、半量になるまで煮詰めます。
ちなみにトマトペーストは更に煮詰めて凝縮したもの。
いわしのマリネ
かたくちいわしと赤玉ねぎを白ワインとオリーブオイルでマリネした定番の前菜です。
山の産物が多いイメージですが海も擁するトスカーナは海の産物も美味。今回は手に入りやすい真いわしを使って作ります。
いわし ― 4尾
塩 ― 小さじ1と1/2
白ワインビネガー ― 大さじ5
赤玉ねぎ ― 1/4個
オリーブオイル ― 適量
<作り方>
1いわしは頭とはらわたを切り落とし、水でよく洗って水けを拭く。中骨と身の間に親指を入れ、骨にそって尾のつけ根まで開く。中骨をつまみ、身を押さえながらゆっくりと中骨をはずし、尾のつけ根で折る。身を下にして頭のほうから皮をむいていく。腹骨が残っている場合は包丁で削ぎ切りにする。
2バットに塩をまんべんなく敷き、いわしを並べて塩をふる。約10分おき、さっと
水洗いする。
3玉ねぎは繊維にそって薄切りにする。レモンは皮をよく洗って縦半分に切ってから、薄切りにする。深めの器にいわしをなるべく均等になるように並べ、玉ねぎをのせ、白ワインビネガーを注ぐ。ラップをして約1時間冷蔵庫で味をなじませ、皿に盛り、オリーブオイルをかけていただく。
いわしにたっぷり塩をふり、余分な水分を出し、臭みを取り除く。
トスカーナ風のパンのおかゆ
固くなった塩なしパンをトマトソースで煮込んだ何事も無駄にせず、美味しくしてしまうトスカーナらしい料理です。塩なしパンの代わりに固くなったバゲットを使っても。
玉ねぎ ― 1/2個
セロリ ― 1/4本
にんにく ― 1かけ
トマトの水煮缶 ― 1/2缶
固くなったパン(バゲット) ― 3センチの厚さ2切れ
赤唐辛子 ― 1/2本
オリーブオイル ― 大さじ2
塩・こしょう ― 少々
<作り方>
1 玉ねぎとセロリはみじん切りにする。セロリの葉少々を千切りにする。にんにくは包丁の背で潰す。パンを水に浸けて柔らかくし、絞る。
2 鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火にかけ、良い香りがしたら玉ねぎとセロリ(セロリの葉は仕上げ用に残す)を加え、しんなりするまで炒める。
3 赤唐辛子トマト缶と水1カップを加え、10分ほど煮込む。
4 3にパンとセロリの葉を加え、パンが溶けたら塩、こしょうで味を整える。
固くなったパンは水で戻し、柔らかくするとパンが溶けやすい。
ニューディ
ラビオリの中身がそのままだから、ニューディ(ヌード=裸)というネーミングです。トスカーナ流ニョッキといった感じのパスタです。
ほうれん草 ― 1/2束(100g)
A:リコッタチーズ(手に入らない場合は裏ごしタイプのカッテージチーズで代用) ― 150g
A:卵 ― 1/2個
A:パルミジャーノレッジャーノ(すり下ろし) ― 20g
A:ナツメグ ― 少々
薄力粉 ― 大さじ6~
塩、こしょう ― 各少々
バター ― 20g
セージの葉 ― 4~5枚
<作り方>
1 ほうれん草は柔らかくなるまで茹で、水気を切り、細かく刻む。
2 ほうれん草にAを加え、よく混ぜる。塩、こしょうで味を調え、薄力粉を加えて丸めやすい固さに調整する。
3 2を手に水をつけて直径2センチほどの団子状に丸める。
4 フライパンにバターとセージを入れて弱火にかけ、セージの香りを移す。
5 湯を沸かし、塩を入れ、3を茹でる。浮いてきたら3分程茹でる。
6 4に5を入れ、フライパンを揺すりながらバターを絡め、皿に盛る。こしょうをかけていただく。
タネがベタつくので手に水をつけながら丸めると良い。
牛肉の黒胡椒煮
フィレンツェの町のシンボル「ドゥオーモ」建築中に、職人達が安く手に入る固いすね肉を、赤ワインと黒胡椒で長時間煮込んで柔らかくして空腹を満たしたと言われる料理です。ピリッとした胡椒の味がアクセント。まだイタリアにはトマトがなかった頃はこんな煮込み料理が食べられていました。
牛すね肉 ― 500g
にんにく ― 1かけ
黒粒こしょう ― 小さじ1
赤ワイン ― 2カップ
ローリエ ― 2 枚
オリーブオイル ― 大さじ2
塩、こしょう ― 各少々
ローズマリー ― 1枝
<作り方>
1 牛すね肉は一口大に切り、塩、こしょうをすり込み、ローズマリーをまぶして、ローリエと一緒にワイン1/2カップを保存用袋に入れ、冷蔵庫で一晩漬け込む。
2 熱した鍋にオリーブオイルを注ぎ、水気を切った牛肉を強火で2~3分炒め焼き目をつける。
3 鍋にワイン(マリネに使ったものも含めて)を注ぎ、にんにく、粒こしょう、ローリエを加えて煮立てて、アルコールが飛んだら弱火にし、蓋をして1時間半ほど煮込む。
4 塩で味を調え、器に盛り、ローズマリーをあしらう。
ワインに漬け込むと肉を柔らかくする効果があります。
郷土料理を大切に作り続けているトスカーナだからこそ、料理にまつわる歴史を今でも舌を通じて感じることが出来ます。調理法はとてもシンプルです。
是非、料理を通じてトスカーナを体験してみて下さいね。