熱々のトリッパ・サンドを食べたい!
亀の形をした、中が空洞のイタリアパン、タルタルーガ。作り手である、パーネ・エ・オリオの小林照明さんは、イタリア修行時代の思い出をこう振り返る。
「イタリアの屋台でタルタルーガに熱々のトリッパを入れて渡してくれるんです。本当においしかったなー」
それはうまそうだ! ぜひ、やってみたい!
そこで、私が絶大なる信頼を置いている凄腕料理人、Wineshop & Diner FUJIMARUの木邨有希さんにお願いすることにした。彼女自身イタリアの屋台でトリッパ入りタルタルーガを食べたことがあるという。
私は浅草橋に行き、木邨さんにパーネ・エ・オリオのタルタルーガを手渡した。
タルタルーガの上部を水平にカット。
上下に切り分けたタルタルーガに、熱々のトマトソースで煮込んだトリッパをのせ、さらに春菊のジェノベーゼソース、仕上げにオリーブオイルをひとたらし。普通のパンでは汁物をはさむことなんてできないが、タルタルーガなら大丈夫。
トリッパを入れたタルタルーガのお味は?
盛り盛りにトリッパをのせたタルタルーガにかじりつく。熱くどろっとしたものが舌にのると、トマトが、春菊が、鮮烈な風味とコクを放つ。そして、ぷにゃんとハチノスを噛む。途端、風味が鼻へ抜けていく。ホルモンならではの、あの人を狂わせる匂い。すかさず白ワインでトリッパの残り香を洗う。ぞくぞくする快感が走り抜け、「くーっ」と声にならない声を思わず上げた。
この間、おそるべきことに、小麦の風味はずっと吹きすさんで、消えることがない。この力強さが、イタリアのパンの特徴。どんな風味かって? うまく言えないが、オリーブオイルをかけてパンを食べたらおいしいだろうなあ、となぜか思えるような風味だ。
特別に、木邨さんにトリッパの作り方を習った。
トリッパの作り方
【材料】
ハチノス 500g
玉ねぎ 1個
ニンジン 玉ねぎと同量 みじん切り
セロリ 玉ねぎの半分 みじん切り
トマト水煮缶 800g みじん切り
にんにく 1片 みじん切り
オリーブオイル 適量
1 にんにくと玉ねぎ、ニンジン、セロリをいっしょにゆっくり炒め、香りを出す。
2 1にホール缶を入れて煮詰めたらトマトソースの完成。
3 ハチノスは丸のまま、野菜の皮やヘタ、ローリエ、タイム、白胡椒、白ワイン(30cc)と水(すべて分量外)で、やわらかくなるまで煮込む。普通の鍋で1時間半、圧力鍋なら30分。
4 トリッパがほどよいやわらかさになったら、取り出して一口大にカット。
5 2にハチノスを入れていっしょに煮込み(約10分)、味をなじませる。
6 5に水煮の豆(分量外)を入れるとコク出しになる。大豆、白インゲン、ひよこ豆でもOK。
春菊のジェノベーゼの作り方
【材料】
春菊 1束
にんにく 1~2片
松の実 20g
オリーブオイル 適量
パルミジャーノパウダー 適量
1 にんにくと松の実をから煎りする。
2 皮をむいたにんにくとオリーブオイルをミキサーにかけ、ピュレになったところに春菊を加えてペーストに。お好みでパルミジャーノパウダーを加えて味を整える。
「今日はミントと、仕上げにエキストラバージンオリーブオイルを加えました。春菊を使ったのはこの季節(11月)だから。もっと秋が深まったら小松菜、春だったらふきのとうもいいですね。トマトソースの味も今回はコク重視にしましたが、夏なら酸味をきりっとりしたものにすると、体の状態とマッチングします」
季節だけでなく、食べる人の気持ちや体調まで気遣って味を決めるのが木邨さん流だ。
家庭で気軽にタルタルーガを食べるコツも習う。
「肉じゃがでも、豚足の煮込みでも、ビーフシチューでも、クリームシチューでもいいと思います。もつ煮込みに黒胡椒をかけたり。ご家庭で残っちゃったおかずを入れて食べればなんでも合いますよ」
具材をのせたらオリーブオイルをひとたらし。それがタルタルーガとおかずをなじませる接着剤になるだろう。イタリアの粉の風味はオリーブオイルを呼ぶのだから。
ワインショップ & ダイナー FUJIMARU 浅草橋店
住所:東京都中央区東日本橋2-27-19 Sビル2F
営業時間:13:00~22:00
定休日:火曜日、第2水曜日
TEL:03-5829-8190
http://www.papilles.net/shops/
【初出:この記事は2017年11月29日、初公開されました@AGARU ITALIA】