イタリアを旅すると様々な伝統菓子に出会うことが出来ます。 その多くは様々ないわれがあったり、祝い菓子であったり、それぞれのストーリーがありとても興味深いものがあります。
その昔小さな国の集合体だったイタリアはその国ごとの様々なルーツがあり、伝統菓子が独自に発達をしていきました。 紀元前からイタリアはアラブ諸国、古代ギリシャとの交易が盛んだった為、いち早く新しい食材や製造技術を取り入れることが出来たのも伝統菓子のバリエーションが多い理由の一つです。
そしてキリスト教のお膝元バチカン市国があることからわかる様に宗教と密接に関わりのあるお菓子が数多く生まれています。 また、南北に伸びる縦長の地形、山や海を内包していて地方ごとに収穫できる食材が違うのでそれぞれの特産品を使用したお菓子が作られる様になりました。
今日4月4日は、キリスト教でイエス・キリストが復活したと言われる日曜日をお祝いするイースター(復活祭)ということで、今回はそのイースターに作られるイタリアの伝統菓子のレシピをご紹介します。 イタリア中部マルケ州で作られている餃子の様な小さな焼き菓子「カルチョーニ」と南イタリアカラブリア州で作られているシナモンロールの様なお菓子「ピッタンキューザ」です。
カルチョーニ(4個分)
固めの生地で詰め物(リピエーノ)を詰めたビスコッティーの一種です。 カルチョーニの語源はカルシウム(カルチウム)。 中にはすりおろしたペコリーノチーズが入っているので甘じょっぱい味が特徴です。 今回はリピエーノにコッタチーズを加えて滑らかな味に仕上げました。
〜生地〜
薄力粉 ― 50g
オリーブオイル ― 小さじ1
砂糖・溶かしバター ― 各大さじ1
溶き卵 ― 1/2個分
〜リピエーノ〜
卵白 ― 1/2個分
溶き卵 ― 大さじ1
砂糖 ― 大さじ3
ペコリーノチーズのすりおろし ― 50g
リコッタチーズ ― 大さじ2
レモンの皮のすりおろし ― 少々
<作り方>
1 生地を作る。材料を全てボウルに入れ、滑らかになるまで混ぜ、ラップで包んで冷蔵庫で1時間程冷やす。
2 リピエーノを作る。卵白を5分立てにし、全ての材料と混ぜ合わせる。
3 包む。1を麺棒で薄く伸ばし、コップや丸型で抜き、綿棒で直径10センチ程に伸ばす。 2の1/4を前方にのせ、生地を折り畳み餃子型にする。 フォークで押さえて縁を止めて、表面にハサミで十字の切れ目を入れる。
4 オーブンシートを天板に敷き、170度で13分程加熱する。
十字に切った生地から溢れ出したリピエーノが印象的な見た目です。
ペコリーノチーズ
羊の乳で作られたチーズで、料理に使われることが多いがイタリア中部や南部ではお菓子に使われることもあります。 塩味とミルキーさそして硬質チーズではあるが柔らかく扱いやすいのも特徴。
リコッタチーズ
Re(再び)cotta(煮た)が語源のチーズでチーズを作った時に残った乳清から作られます。 カッテージチーズよりもミルキーでクリームチーズよりもさっぱりした味。
ピッタンキューザ(15センチの型1台分)
くるりと渦巻きになったお菓子がくっついた様な形が印象的なこのケーキ。 その由来は古代ギリシャ時代に装飾した丸いパンを女神に捧げていた事から始まり、少しづつ変化をして今の形になりました。 現在はカラブリア州全域で復活祭やクリスマスのお菓子として登場します。
〜生地〜
薄力粉 ― 200g
ベーキングパウダー ― 小さじ2
卵 ― 1個
オリーブオイル ― 大さじ3
白ワイン・レモン汁 ― 各大さじ2
砂糖 ― 大さじ2
レモンの皮のすりおろし ― 1/2個分
〜リピエーノ〜
レーズン ― 100g
オレンジピール ― 25g
くるみ(粗く刻む) ― 100g
松の実 ― 30g
はちみつ ― 100g
白ワイン ― 大さじ3
シナモンパウダー ― 小さじ1/4
クローブ ― 3粒
レモンの皮のすりおろし ― 1/2個分
卵液(飾り用) ― 適量
はちみつ(飾り用) ― 適量
<作り方>
1 リピエーノを作る。 レーズンはぬるま湯で柔らかくし、粗く刻み、全ての材料と混ぜ合わせ、3〜4時間おく。
2 生地を作る。 全ての材料を混ぜ合わせ、滑らかになるまでこねる。 生地を麺棒で薄く伸ばし、直径15センチの円形、縦5センチ横20センチの長方形を7枚作る。
3 ケーキ型に円形の生地を敷き込む。 長方形の生地全体にリピエーノをのせ、くるりと巻き込む。
4 ケーキ型の中央に渦巻きの生地をひとつおき、残りは周りにおき、全体を手で軽く密着させる。
5 刷毛で卵液を全体に塗り、170度で40分焼く。熱いうちに蜂蜜を塗り冷ます。
ナッツ、ドライフルーツ、はちみつがたっぷり入ったこのケーキはずっしりと重量感があります。
イタリアでは東方貿易が盛んだった影響で、伝統菓子のレシピにスパイスが使われる事が多くあります。 またイタリアを旅すれば、庭先にレモンやオレンジが実っている風景を必ず見かけますが、お菓子にもこの2つは果汁、果皮、砂糖煮などにしてよく使われています。
お菓子からもイタリアの歴史の奥深さ、地方の特色を覗き見る事ができます。 イタリアへの思いを馳せながらお菓子を作ってみてはいかがでしょうか。