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Italian espresso day②「イタリアンエスプレッソ・カプチーノの基準と家庭で楽しむイタリアンコーヒー」

日本人の醤油のように彼らは美味しさを理解する

世界中で楽しまれているエスプレッソ系ドリンク(カプチーノ・カフェラテ・フラットホワイトetc)にはベースとしてエスプレッソを使います。世界中のエスプレッソはそれぞれのドリンクの美味しさに併せて作り方・レシピなど色々と改良・発展していきました。

ただエスプレッソ発祥の国イタリアでは、エスプレッソ発祥時から脈々と育まれてきた理論に基づいて現在のレシピができています。

日本人が醤油といえば誰でも美味しいものはすぐにわかるように、イタリア人にとっても日本人の醤油と同じように体もしくはDNAにまでその美味しさがなんなのか感覚的にわかっています。そのせいで長い間なんとなく美味しいものはこんな感じといった適当さ加減でバリスタたちもエスプレッソを作り続けていました。

今から20年前の1998年にイタリアで国際イタリアエスプレッソ協会(INEI)が発足し、それまでに蓄積されたイタリア人の味覚・嗅覚などの知覚分析結果から、殆どのイタリア人が美味しいと思える基準に入ったエスプレッソというものが確立されました。

今日では、その基準に基づき、エスプレッソ用コーヒー豆の味わい・ブレンド・焙煎、バリスタに求めるスキル、エスプレッソマシンやエスプレッソグラインダーの仕様に至るまで事細かく定義されています。
イタリア人というと、なんとなくラテンなノリで適当にやってるんじゃない……といったイメージがあるかもしれませんが、イタリア人は実は職人気質な国でもあるんです。スローフード食材などが良い例ですが、非常に事細かく定義がなされたその食材の考え方や美味しさ、そしてそれを取り巻く地域住民の意識は、世界中で高く評価されています。

美味しいエスプレッソに欠かせない三位一体とは?

エスプレッソもこれらに負けず劣らずしっかりと定義されています。ですからイタリアに旅行に行った時に、どのカフェバールに行っても美味しくエスプレッソやカプチーノを楽しめるのは、これらが元になっています。もちろんイタリアには沢山のカフェバールがありますからとても美味しいところもあれば、それなりのところもあります。筆者の感覚になりますが、20年前のイタリア各地で飲んだエスプレッソももちろん美味しかったですが、今は昔よりも美味しいお店が増えたなと感じます。

少し専門的な内容になりますが、イタリアンエスプレッソの基準とは、コーヒー豆が1杯あたり7±0.5g、エスプレッソの抽出される時間が25±2.5秒、抽出されたエスプレッソの量はクレマも含めて25±2.5㎖、9気圧で約90度のお湯でコーヒー豆に抽出され、そのエスプレッソは内側が白い陶器の丸みを帯びたカップに注がれ、抽出直後のカップの中でのエスプレッソの温度は約67度、そして美味しく楽しめる寿命は抽出後約2分とかなり厳密なものです。

そしてこの基準に合うようにバリスタは、エスプレッソ豆の粉の粗さを調整したり最適な状態になるように管理調整します。
コーヒー焙煎会社はこの基準に合うように焙煎と豆のブレンドを行なっていきます。コーヒー豆はブレンドを行うことで単一なコーヒー豆より複雑な香り・味わい・余韻を生み出します。イタリア人はこの膨よかで奥深しい味わいのエスプレッソを好みます。彼らとエスプレッソの奥深さに関して話すとエスプレッソは音楽に例えるとオーケストラと言います。まさにその通りですね。

そしてエスプレッソマシン・エスプレッソグラインダーメーカーもこの豆量や豆の粗さになった時に、最良になるようにマシンや抽出器具の形状もこだわりの専用設計で作ります。
どの要素もかけては美味しいものができず、まさに三位一体によって完成された芸術品だと思います。
これらは国際イタリアエスプレッソ協会(INEI)によって厳格に審査され認証されたコーヒー豆、バリスタ、エスプレッソマシン、エスプレッソグラインダーにはその認証の証となるマークが付与され、この三つの基準が満たされているカフェには認証店舗の証が付与されています。

カップッチーノのミルクは熱すぎてはいけない

エスプレッソだけをとってもイタリアでは非常に厳格なルールがあるわけですが、エスプレッソをベースとしたイタリアではポピュラーなカプチーノ(正確に発音するならカップッチーノ:CAPPUCCINO)においても、同様に定義があります。
まずは、適切なルールに基づいたイタリアンエスプレッソを仕様するということです。

少なくともこのエスプレッソはカプチーノカップに直接注がれたのち、スチームノズルを使って成分無調整の新鮮なミルクを泡だてていきます。この泡だてにもポイントがあり、67〜68度になるとタンパク質が変質していき沸かし切ったミルクに感じ取れる独特のミルク臭さが出てしまいます。ですのでミルクは60度程度に温めたのちエスプレッソに注いでいきます。実際のイタリアではこれよりも若干ぬるめの55度程度までしか温めないことがほとんどで、これはイタリア人があまり暑すぎたり冷たすぎたりする飲み物を好まないことに由来します。私も経験がありますが、昔イタリアでカプチーノを作った時に、日本の感覚で60度過ぎの温度に温めた泡だてミルクを注いだところ、お客様にこれ熱いから冷たいミルク足してと言われたことがあります。

泡だてたミルクを注いだカプチーノの出来上がり状態にも定義があり、見た目は中心が白い泡があり、外側には茶色いエスプレッソのクレマの輪郭が残ります。また泡の厚みは約1.5cm程度とかなり厳格なものです。日本で最近見かけるラテ系メニューはこれらよりも泡が少ないので、やはり口当たりは変わってきます。もともとイタリアンカプチーノは出来上がりが150〜180㎖しかありません。なのでチョコレートやキャラメルのテイストがあるエスプレッソに程よい泡だてミルクが注がれるとその味はまさにミルクチョコレートやミルクキャラメルのようになりますので、これだけでも贅沢なドルチェとも言えますよ。

クックマを使えば手軽に楽しめる

カフェバールに行けば美味しいエスプレッソやカプチーノが楽しめますが、ご家庭では専用のマシンもないことがほとんどですので、イタリアでも家庭ではモカでコーヒーを沸かすのが主流です。またナポリなどの一部の限られた地域では200年前に発明されたクックマという器具で今でのコーヒーを沸かしています。

モカやクックマでの美味しいコーヒーの作り方は最近ではネットで検索しても出てきますので、ぜひ”モカイタリア”や”モカマキネッタ“でモカの美味しい作り方が検索できます。またクックマは今ではナポリ地方の方しか使用していないので、ナポリコーヒーとも言われています。こちらも“クックマ ナポリコーヒー”と検索すると美味しい作り方やストーリーが検索できます。

イタリア好きな方の多くはモカを使用してご家庭でコーヒーを楽しんでいらっしゃると思います。そのような方々に色々なイベントでクックマ ナポリコーヒーをご紹介しています。

必ずと言って良いほど、こんなに美味しいコーヒーが家庭で簡単に作れるんだね、早速購入してこれでコーヒーを淹れるよと言われますので、機会があればぜひ楽しんでみてはと思います。筆者も家庭でのコーヒーはもっぱらクックマでのナポリコーヒーが日課になっています。ただ夏場の暑い時期はやはりアイスコーヒーも飲みたくなるので、クックマで沸かしたナポリコーヒーをロックアイスを入れたグラスに注いでアイスコーヒーにして楽しんでいます。これが本当に美味しいんです。

クックマでもモカでも簡単なワンポイントアドバイスがあります。どちらも抽出器具の中心にコーヒー粉を詰めるバスケットがあります。このバスケットに淹れるコーヒー粉の量はなるべくいっぱいになる様に詰めるということです。そしてバスケットに粉を入れたら少し側面を叩いて粉を均一化させます。これはお湯が粉を通過する際に、均一な隙間によって粉全体に満遍なくお湯が浸透して出がらしが、抽出されにくく美味しいところが抽出されるのです。

平日は会社や用事のある場所の近くのお店にイタリアの基準を知っていただいてより美味しくイタリアンエスプレッソ・カプチーノを楽しんでいただき、週末はご家庭で美味しくモカやクックマでのコーヒーを楽しんでみてはいかがでしょう。

株式会社AUTENTICO

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