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Italian espresso day①「世界的バリスタが教えるエスプレッソを楽しむ方法」

イタリアンエスプレッソデーを記念して

4月16日は「イタリアンエスプレッソデー」とされます。その理由は、1906年4月に開催されたミラノ万博で世界で初めて“Caffe’ Espresso”とBezzera社が表記し、イタリアンエスプレッソを供したからだそうです。というわけで、今日から3回にわたり、イタリアンエスプレッソの魅力をお伝えしたいと思います。

さて、イタリア以外、つまり日本やアメリカでエスプレッソを使ったカプチーノ・カフェラテや色々なドリンクは飲まれるようになって20年以上が経ち、レストランでも食後にエスプレッソを頼んでも困惑されることもなく飲めるようになりました。

そしてエスプレッソは世界中で発展していて、ひとえにエスプレッソといっても、色々なスタイルが増えました。もともとイタリアで生まれたエスプレッソは、イタリア人にとってとても身近で、なくてはならない大切な飲み物。文化ともいえる存在なのです。
そんなイタリア人が愛するイタリアンエスプレッソを、この機会により知っていただき、いつもよりちょっと楽しいエスプレッソライフを楽しんいただければうれしいです。

日本だとエスプレッソを単品でオーダーして飲む方はいまだにほとんど見かけません。カフェで見かけるのは、カフェラテや生クリームホイップがトッピングされたドリンクばかりです。
イタリアンレストランにいくと食後にエスプレッソを飲んでいる方を見かける程度ですね。
日本人もコーヒーをよく飲むようになりました。コンビニに行けば気軽にできたてのコーヒーが飲めますし、女性がコーヒー系ドリンクを多く飲むようにもなりました。

しかしイタリア人は、その日本人よりも多くコーヒーを飲むのです。平均的にコーヒーの飲む量は日本人の2.5倍にもなります。ですので、1日に飲む量は普通の方で4〜5杯、多い方で10杯近くも飲む人もいます。イタリア人はコーヒーが生活の一部になっているんです。

イタリア人が朝以外、カプチーノを飲まない理由とは?

ところで、私たち日本人は日中でもミルクアレンジのコーヒーを飲みます。一方イタリア人の多くはミルクがたっぷり入ったコーヒーはお腹がいっぱいになるので朝食時くらいしか飲みません。
初めて日本に来るイタリア人たちと話していると午後や夕食後にカプチーノやカフェラテを飲んでいる日本人を見て「彼らはなぜ食後にカプチーノを頼んでるの?」と質問してきます。

イタリア人のコーヒーを飲むスタイルは、朝食としてブリオッシュやビスケットなどと一緒に飲むカプチーノから始まります。夕食が遅い時間帯のイタリアでは、朝食は軽めでカプチーノをブリオッシュやビスケットと合わすとそれだけで十分なボリュームになります。ですから、朝以外、カプチーノを彼らは飲まないというわけで、さきほどの疑問が湧いてくるのです。

街で暮らす人たちは家で朝食をとらずカフェバールで済ませることが多いので、朝のカフェバールに行くと店内がとても多くの人で溢れかえっています。日本のようにコンビニもないので、カフェバールが交流の場にもなり、気軽によってリラックスできる場にもなります。

その数は実に15万店以上。イタリア人の人口は日本に比べて半分の約6000万人、そして日本のカフェ・喫茶店の数は7万店程度。一人当たりのカフェが日本に比べて4倍以上。それほどカフェバールはイタリア人にとって欠かせない存在といえます。

朝食をカプチーノで済ませたイタリア人は、ランチ前の11時くらいに休憩を取る方も多いので、この時にカフェを1杯、ランチの食後に1杯、午後の休憩に1杯と少なくとも4杯以上飲むことになります。
この時のカフェのほとんどがエスプレッソです。そしてミルクが欲しい方は、カプチーノではお腹がいっぱいになるので、エスプレッソに少量の泡だてたミルクを注ぐマッキャートを頼みます。

エスプレッソに砂糖何杯入れるのが正解?

日本人のイメージするエスプレッソの飲み方は砂糖を入れずにブラックで苦いままを飲み干す方がほとんどなのではと思います。しかしイタリア人の飲み方は違います。最近ではダイエット志向やよりコーヒーの香りを楽しむために何も入れない方も増えましたが、多くの人はエスプレッソにスプーン1杯くらいの砂糖を入れて飲みます。甘くて飲みづらいよと思うかもしれないですが、こう捉えるとイメージしやすいともいます。

仕事などで集中して疲れた時にちょっと甘いもの、チョコレートひとかけらとか、キャラメルとか飴とかを食べリフレッシュすると思います。イタリア人のエスプレッソはこの感覚と一緒なんです。ですからエスプレッソに砂糖を入れてチョコレートやキャラメルのような感じにして素早く3、4口で飲み干します。

私たちが喫茶店でサイフォンコーヒーやハンドドリップでゆっくり時間を過ごして寛ぐといった感覚とは違います。カフェバールでの滞留時間は短く、オーダーをしてエスプレッソが出てきたらすぐ飲み干して、ちょっとだけ会話をしたら、さっと出てしまいます。

私は仕事柄、よくエスプレッソに砂糖はどれくらい入れれば良いのかとか、どのくらい砂糖は混ぜれば良いのかといった相談を受けます。

これは好みでどのような飲み方でも構わないと思います。北イタリアの方は比較的砂糖の量も少なく、あまり混ぜない方を多く見かけますが、一方で南イタリアの方は砂糖を沢山入れて完全に溶けるまでしっかりと混ぜて、溶かしたキャラメルのようにして飲む方が多いです。

せっかくのリフレッシュなので、好みの甘さ・溶け具合で良いと思います。またエスプレッソをオーダーしてもミルクをちょっとだけ足してなどいろいろなオーダーをバリスタにリクエストします(もちろんこの追加ミルクは無料!)。自分だけの美味しいスタイルを見つけて一杯の瞬間のリフレッシュタイムを楽しんでいます。

いいエスプレッソの見分け方を伝授

イタリア語でエスプレッソはカフェ以外に急行といった意味があります。なのでエスプレッソはオーダーしてから提供までが普通のコーヒーに比べてとても早く提供されます。イタリアのカフェバールでは、カウンター越しの提供が一般的なので、カウンターでオーダーすると30〜40秒後にはエスプレッソが目の前に置かれます。
カウンター越しの立ち飲みスタイルでの提供であればエスプレッソは一杯1ユーロ前後なので、気軽に飲むことができます。一方でテーブルやテラス席でオーダーするとサービス料が含まれるので、値段は約3倍になります。

美味しく飲むためには砂糖以外にもポイントがあります。
エスプレッソは出来立てが最も美味しいということです。抽出されて2分もするとクレマ(エスプレッソの上に乗る泡)が色も沈着し、味も香りも少なくなってしまいます。また美味しいエスプレッソは提供された時にヘーゼルナッツやキャラメルのような綺麗な色合いとキメの細かいクレマがあり香りを閉じ込めています。

もしみなさんがオーダーしたエスプレッソが提供された時にこのクレマに穴が空いていたり、色がくすんで泡が消えかかっているようなものだったら、抽出後時間が経っていたり、抽出しすぎていたりする美味しくないものといえます。そんな時には勇気を持って美味しいエスプレッソを作り直してもらうようにいった方が良いでしょう。

たまにはお近くのカフェに行ってイタリア人のように立ち飲みスタイルでエスプレッソに砂糖をたっぷりと入れて楽しんでみてはいかがでしょうか。

執筆:中川直也
株式会社AUTENTICO

Italian espresso day②「イタリアンエスプレッソ・カプチーノの基準と家庭で楽しむイタリアンコーヒー」
Italian espresso day③「お店でのエスプレッソの楽しみ方。エスプレッソを使ったカクテルについて」