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エミリア=ロマーニャ州DOP&IGP食品 その1: 冬のホリデーシーズンに欠かせない「ザンポーネ」&「コテキーノ」

年末年始に欠かせないエミリア地方発祥の食べ物とは?

日本同様に南北に延び、隣町に行けばパスタの形が変わるほど郷土料理が発達しているイタリア。そんなイタリアで地域の壁を悠々と乗り越え、もはや年末年始の北イタリアには欠かせない食べ物となっているのが、モデナ近郊の街ミランドラで誕生した「Zampone(ザンポーネ)」と「Cotechino(コテキーノ)」です。

ザンポーネとコテキーノの料理

これらの豚肉加工品の起源は、今から遥か500年以上も昔、ローマ教皇ユリウス2世の軍隊がミランドラを包囲し、街の中に攻め入るのも時間の問題だった1511年の冬に遡ります。当時、ミランドラ側に残された食料は生きた豚のみ。この豚をおずおずと敵にとられては勿体ないと、領主ピコの料理人が「豚を屠殺して、赤身と豚足以外の皮をミンチにし、豚足の皮の中に詰めましょう! こうすれば腐らず保存がききます!」と作ったのが「ザンポーネ」です。その名は袋詰めに使用した豚足(Zampa(ザンパ:動物の足))に由来。一方、豚足の皮以外に詰めたものを「コテキーノ」と呼びます。
ちなみに「コテキーノ」の名は材料である(豚や猪の)皮を意味する「Cotenna(コテンナ)」から。現在、袋詰めには、腸もしくはコラーゲンで作られた袋が使用されています。

ザンポーネとレンズ豆

豚皮を使用したソーセージの父と呼ばれる「ザンポーネ」や「コテキーノ」。この冬生まれで栄養価の高いご馳走に、形が貨幣を連想させるレンズ豆を添えて、新年が金運に恵まれるよう北イタリアでは大晦日やお正月に食べる縁起の良い料理として愛されています。

イタリアのデリミートを世界へ! Arigat-EUプロジェクトとは?

そんな、イタリアでは確固とした地位を築いている「ザンポーネ」や「コテキーノ」ですが、日本ではまだまだ認知度が低いため、「この美味しさをもっと日本の皆さんに伝えたい」ということで2018年9月に「Arigat-EU(アリガテウ)、本物のヨーロッパのデリ肉」というプロジェクトがスタートしました。
このプロジェクトに参加しているのは「ザンポーネ IGP」や「コテキーノ IGP」の他、エミリア=ロマーニャ州が世界に胸を張ってお届けする「モルタデッラ IGP」、そして「サラミーニ・イタリアーニ・アッラ・カッチャトーラ DOP」といった豚肉加工品を扱う3つのコンソーシアムです。

ザンポーネIGP、コテキーノIGP、サラミーニイタリアーニアッラカッチャトーラDOP

ここで「あれっ? 「ザンポーネ」や「サラミーニ」の後ろに突如あらわれた「IGP」や「DOP」って何?」って思った方もいるはず。簡単に説明すると、どちらも食品に対して与えられるヨーロッパの認証です。

DOPとIGPのロゴ

DOP(原産地呼称保護)ロゴは、限定された地域内で、明確に規定された生産方法と伝統的なレシピに従い厳密に生産された食品に、IGP(地理表示保護)ロゴは、品質やレシピ、固有の地域特性などの保護を目的とし、少なくとも食品の生産、加工、熟成のうち1つの工程が限定された地域で行われた食品に付与されます。
つまり、DOPやIGPの認定ロゴは、ヨーロッパが食品の品質にお墨付きを与えた証! 商品を手に取る際にはこのロゴを探してみてくださいね。ちなみに、我がエミリア=ロマーニャ州は、イタリア20州の中で最もDOP・IGP認定を受けた食べ物が多い美食の州。また、おいおい自慢の美味しいものたちをレポートしたいと思っています!

「ザンポーネ」&「コテキーノ」ってどうやって作られているの?

さて、ここからは「Arigat-EU」のプレスツアーで「ザンポーネ」や「コテキーノ」の製造工程を見学する貴重な機会に恵まれたのでご紹介します!

ザンポーネの工場で働くマウロさん

今回、案内してくださったのは生産責任者のMauro(マウロ)さん。15歳から工場で働き始め、なんと今年9月で勤続50年間という大ベテラン! まずは材料の説明から。

ザンポーネの作成

毎日0℃以下の状態で工場に届けられる豚肉。使用する部位は、肩、頬、喉肉と皮。これらの肉をミンチにし、海塩、砕いた胡椒、ニンニク、企業秘密のスパイス(匂いを嗅いだ感じだとシナモンをベース!)を混ぜて作ります。

ザンポーネの作成

塊で届く肉をこちらの機械でカットし、その後ミンチにします。噛みごたえのある皮は「ザンポーネ」、「コテキーノ」共に小さく5 mmにカット。

ザンポーネの作成

ここで注目したいのが肩、頬、喉肉のミンチの大きさ。なんと、薄い袋に詰める「コテキーノ」は8 mm、分厚い豚足の皮に詰める「ザンポーネ」は9 mmと大きさを変えているというのです! 往々にして大雑把なイメージを持たれがちなイタリア人ですが、食へ対するこだわりは1 mmの妥協も許しません!

ザンポーネの作成

豚肉がミンチになったら調味料を加えてこねます。塩分に関しては、豚足の皮まで塩味がつくよう「ザンポーネ」の方が「コテキーノ」よりも多め。黒く変色するのを防ぐためには添加物が欠かせませんが、この企業では他社製品より色が黒くなるのを覚悟の上で微量に抑えています。
また、材料をこねる際、刻んだ皮はゼラチン質の働きによって材料のつなぎの役目を果たします。マウロさん曰く、最高の皮は、薄く、柔らかく、ゼラチン質を一番多く含んだ喉の皮なんだそうです。火を通せば、とろけて旨みが溢れだすんですって! 想像しただけでも生唾ものです。

ザンポーネの作成

「ザンポーネ」は先ほどの材料を一本一本前足の皮に詰め、口を手作業で縛っていきます。

ザンポーネの作成

一方「コテキーノ」が詰められるのは、腸もしくはコラーゲンで作られた人工の袋。天然の「ザンポーネ」の皮や腸は食べられますが、人工の皮は食べないでくださいね。

プレコットと呼ばれる加熱処理作業

「ザンポーネ」や「コテキーノ」は、「Precotto(プレコット)」と呼ばれる加熱処理済みのものと、生のものが作られています。ここでは生産の大半を占めているプレコットの製造工程を中心に説明します。

コテキーノを真空パックします

豚足の皮や袋に中身が詰め終わったら、次は真空パックにしていきます。真空処理後も、皮が少し溶け出すことで水分が生まれ、柔らかくしっとりとした食感になります。

コテキーノのパックにはロット番号が印字されます

真空パックには、材料がどこからきて、いつ加工されたのかなどがわかるようロット番号などが印字されます。

コテキーノを窯で茹でます

そして、このような形の棚に並べ、丸い窯の中に入れて加熱します。
その時間は、なんと合計4時間! 中身が破裂しないよう、ゆっくりと1時間かけて温度を100℃にし、次の1時間半は110℃で加熱。最終的に120℃(中心温度は118℃)まで温度を上げて30分加熱することで殺菌します。そして、またゆっくりと時間をかけて温度を下げていきます。

火が通り、殺菌も完了したら、2℃の冷蔵庫で冷却します。暖かい状態だと製品が柔らかいため真空パックの確認が難しいのですが、冷ますことでチェックがしやすくなります。一般的に賞味期限は2年とされていますが、マウロさんが実験したところ、きちんと殺菌され、真空状態が保てていれば、4年後でも美味しく食べられたそうです!

コテキーノの作り方

一方、加熱処理しない生のものはというと、「コテキーノ」は人工の袋は使用せず、天然の腸に具を詰めます。「ザンポーネ」は長時間の加熱に耐えられるよう網の中に入れられます。これらの賞味期限は、真空とはいえ冷蔵保存で1ヶ月から1ヶ月半。殺菌処理したプレコットとは全然違いますね。

ザンポーネとコテキーノの料理

保存期間同様に、プレコットと生では調理時間にも大きな差があります。プレコットは封を切らずに真空パック状態で熱湯に入れて30分間加熱すればOK。一方、生の「コテキーノ」は水から3〜4時間かけて加熱します。さらに生の「ザンポーネ」となると、もっと長い5時間もかかります。でも「生の「ザンポーネ」を炊く時は、家中に香りが充満してね、へっへっへっ」と、たまらない笑みを浮かべるマウロさんを見たら、一度、生の「ザンポーネ」も味わってみなければ! と思いました。

おすすめの食べ方は?

12月と1月で、残り10ヶ月分の合計販売量に匹敵する量を市場に送り出すという「ザンポーネ」と「コテキーノ」。年末年始にレンズ豆と合わせる以外にも、様々な食べ方を楽しむことができます。

ザンポーネとコテキーノの料理

「Arigat-EU」のHPやInstagramでは、「ザンポーネ」や「コテキーノ」が食べられるレストランや、購入のための情報なども掲載されているので是非チェックしてみてくださいね。最後に、50年間この食材に愛情を注いできたマウロさんがおすすめする夏の食べ方はというと、シンプルに「薄くスライスして、マヨネーズをつけて食べる!」だそう。そう言った後「でも、問題は、へっへっへっ」と、お腹を撫でながら嬉しそうに笑うマウロさんの顔が忘れられません。

Arigat-EU 本物のヨーロッパのデリ肉
HP:http://www.arigat.eu
Instagram:@arigateujp
Facebook:https://www.facebook.com/arigateujp/

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