AUTOMOTIVE

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カーグラフィック元編集長・渡辺慎太郎が、マセラティの本拠地モデナを訪れてわかったこと

イタリアンスポーツカーの聖地、エミリア・ローマニャを走る

モデナの石畳に路上駐車するフィアット

イタリア車の話をしていると、ちょくちょく出てくる地名がいくつかあって、トリノ、モデナ、マラネロ、サンターガタはその代表格。イタリア自動車界を牛耳るような存在のフィアット(Fiat S.p.A.)の総本山があるのはトリノ。ピニンファリーナ、ジウジアーロ、ベルトーネといった有名カロッツェリアの多くがトリノに集まっているのも、フィアットのお膝元だからです。

モデナ、マラネロ、サンターガタは、いずれもエミリア・ロマーニャ州にあって、モデナはマセラティ、マラネロはフェラーリ、そしてサンターガタはランボルギーニが本拠地を構えています。日本からは直行便がなく、ミラノやローマなどどこかで1度乗り継いでボローニャ空港まで辿り着きます。そこからクルマで1時間以内にイタリアを代表する3大メーカーが点在しているわけで、エミリア・ロマーニャは“イタ車の聖地”みたいな土地でもあるのです。

マセラティの誕生から現在まで

エミリア・ロマーニャ州の州都でもあるボローニャで、「オフィス・アルフィエリ・マセラティ」という小さな整備工場が商売を始めたのは1914年のこと。マセラティ家の7人兄弟のうち、特にクルマに興味があったアルフィエリをはじめとする4人が、自動車整備や部品販売などをしつつ1926年にレーシングカーを制作、1939年に現在のモデナに移り1957年に完全オリジナルの量産車、3500GTを発表します。そこに付けられていたトライデント(三叉槍)は、ボローニャにあるネプチューンの肖像のオマージュで、それが現在のマセラティのロゴにもなっているのです。

モデナにあるマセラティ本社屋はモダン

クルマの評判はよく、F1に参戦するなどモータースポーツでも輝かしい戦績の残してきたマセラティですが、商売や経営は苦手だったようで、1937年には地元の名士へ、1971年にシトロエン、1975年にデ・トマゾ、1993年にフィアット、2002年にフェラーリ、そして2005年から再びフィアット傘下と、経営権が転々としました。
当初はレーシングカーやスポーツカーを得意としていましたが、地元にはフェラーリとランボルギーニという手強いライバルが2社も存在するわけで、まともに戦っても勝ち目はない。そこで、モータースポーツに興じるような富裕層を満足させるセダンやクーペを開発するようになるのです。現在は4ドアセダンのギブリも昔は2ドアクーペで、クアトロポルテとギブリはマセラティを代表するクルマとなりました。そして創業以来100年以上もの時が経過したいまでは、SUVのレヴァンテが屋台骨としてマセラティを支えています。

モデナ本社に隣接する工場の一部は操業当時、1936年のまま

モデナの本社に隣接する工場建屋の一部は1936年の操業開始当時のままで、モデナの歴史的建造物に認定されています。もちろん工場内には最新鋭の生産設備が整っていて、ここではグラントゥーリズモ/グランカブリオの2モデルが生産されていますが年内には終了予定。その後はラインがあらためて新設され、来年には“スーパースポーツカー”が生産されるそうです。

マセラティの考える豊かなライフスタイルとは?

モデナ郊外の田園風景とレヴァンテ

マセラティを選ぶのは、豊かなライフスタイルを送っている人が多いとよく言われます。“豊かなライフスタイル”とは、着る物、身につける物、食べ物、そして旅などに自分なりの強いこだわりを持ちながらもそのこだわりを心から楽しむような生活、ということらしい。だからだと思うのですが、マセラティの国際試乗会は、他のメーカーと比較して試乗する時間が圧倒的に少ない。真面目なメディアやジャーナリストは「もっと乗りたい!」と頼むのですが、答えはいつも決まって一緒。

パルマのプロシュートを中心に、新鮮なフルーツ

「試乗ばかりではなく、どうぞ食事やホテルで過ごす時間もお楽しみください。マセラティの魅力は、そういうものとセットで感じていただくものなのです」

モデナのバルサミコ

IGP認定のモデナのバルサミコ酢

パルメジャーノ

モデナのあるエミリア・ロマーニャはパルメジャーノの名産地でもある
そういえば、エミリア・ロマーニャはバルサミコとパルメジャーノの名産地、プロシュートで有名なパルマもすぐ近くにあります。マセラティという自動車メーカーが少なくとも食事だけは絶対におろそかにしない理由は、実はこんなところにあるのかもしれません。

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