バールはイタリアのコーヒー文化の中心地
私は2014年に〈イル・バール ピエトレ・プレツィオーゼ〉という、イタリアンバールを東京・広尾に構えました。みなさん、「バール」ってご存知ですか?
スペルはBARと綴ります。誰もが「バー」と読みがちですが、イタリア語では「バール」と読みます。ちなみに「バル」はスペイン語です。バールは日本でいうならば「コーヒーショップ+ショットバー」のようなお店といえばわかりやすいでしょうか。
日本ではコーヒーを飲みたいときに、さまざまな手段があります。例えばこだわる人は、コーヒーショップや喫茶店へ。気軽さを求める人は、コンビニエンスストアで、豆から挽きたてのセルフコーヒーやチルドコーヒーを。街のいたるところに自動販売機があり、缶コーヒーも買えます。
一方、イタリアではコンビニが無いので、コーヒーを飲むためにわざわざバールへ行かなければなりません(最近は自動販売機も出始めましたが・・・)。という訳で、バールは朝早くから開店しており、一日中大勢の人で賑わっています。
バールといえばバリスタ、バリスタといえばバール
そして、バールと切っても切れない関係の職人がバリスタです。バリスタは「BAR(バール)+ISTA(イスタ:人)」、つまりバールで働くコーヒー職人を意味し、日本でいえば喫茶店のマスターです。
ただ、喫茶店のマスターとも少し異なり、
・コーヒーは全てエスプレッソマシンで淹れること(イタリアにはドリップコーヒーは存在しない)
・カクテルやワイン、ビールなどアルコールに関する知識があること
・カメリエーレ(サービス)ができること
などが問われます。
イタリアンバールではバリスタとお客さまの間に「バンコ」とよばれる、いわゆるカウンターが必ず存在します。バンコはいつもスッキリしていることが大切です。お客さまはバリスタから対面式のサービスを受ける仕組みになっているので、スッキリしていなくてはならないともいえます。
バールでは、日本のチェーンのコーヒーショップのように先にお会計をして、そのまま順に進み、奥にあるデシャップカウンターで出来上がったドリンクを受け取るということはありません。目の前にいるバリスタに自分が飲みたいコーヒーを直接注文することで自然と会話が生まれ、お互いを理解できるようになります。お客さまは安心して通えるようになり、バリスタは通っていただけることに喜びをおぼえて、心のこもった一杯を淹れたくなるのです。お客さまが毎日足を運ぶバール、それが「MIO BAR(ミオ・バール = 私のバール)」です。
お客さまとバリスタとの関係は、一杯のコーヒーがきっかけで生まれたコミュニケーションであるといえます。日本でいえば昔ながらの喫茶店の常連のような感覚に近いかもしれませんね。皆さんも毎日通いたくなる「ミオ・バール」を探してみてはいかがでしょうか?
【初出:この記事は2017年10月16日、初公開されました@AGARU ITALIA】