旬の食材を使った料理、尽きることのない会話、そして自然とグラスが進むワイン。イタリアの食卓には、ついつい食べ過ぎてしまう、さまざまな理由があります。そうしたとき、長年イタリアで親しまれてきたのが発泡性飲料の素「ブリオスキ (Brioschi)」です。
満腹の夜に出会った一杯
友人宅で過ごしたある晩のこと。食事も終盤に差しかかった頃、満腹でお腹をさすっていた私に「これを飲めば楽になるから」と友人がグラスを差し出しました。シュワシュワと弾ける炭酸の爽快感。直後に広がる、ほんのり甘いレモンの風味。「これは何?」。そう尋ねると、彼はキッチンからラムネ菓子のような少し大きめの顆粒が入った瓶を持ってきました。「私は子どもの頃から、食べ過ぎたときに、これを溶かして飲んでいたのさ」。これが私とブリオスキの出会いでした。

豊かな食卓の裏側で生まれた
ブリオスキの歴史は、驚くほど長いものでした。その誕生は1880年まで遡ります。
19世紀後半、ヨーロッパでは都市化の進展とともに外食文化が広がり、人々は肉料理など脂肪分の多い食事やワインをより頻繁に嗜むようになりました。その一方で「食べ過ぎ」という新たな悩みも生まれていました。
同じ時期、産業技術の発展によって重曹やクエン酸といった素材が安価かつ高純度で生産できるようになり、新たな食品や健康関連製品の開発が可能になっていました。
メーカー資料によると、こうした変化をいち早く捉えた人物が、ミラノのアキッレ=アントニオ・ブリオスキでした。若い頃に化学・医薬品製造会社で見習いとして経験を積んだ彼は、当時イギリスで広まっていた消化を助ける製品に着目し、自らの製品開発に乗り出します。それこそが「ブリオスキ」の始まりでした。
前述の私の友人は医師でもあります。「もちろん医薬品ではないので、特定の医療効果を保証するものではないけれど」と前置きしながら、彼は思い出を話してくれました。
「ブリオスキは薬局で買うものではなく、近所の商店で気軽に買えるものだった。だから、どこの家にも一瓶はキッチンに置いてあったんだ。私が子どもだった1950年代は、今みたいに炭酸飲料が普及していなかった。だから、消化促進以外にも、レモン味の爽やかな飲み物として楽しんでいたものだったんだよ」

新タイプも登場
先日私はブリオスキの新タイプに遭遇しました。発見したのは、なんと近所のホームセンター。タブレットと顆粒状のスティック入りです。いずれも携帯性を考慮し、水なしで口にできるタイプです。私はスティック入りを購入することに。ハーブ、レモン、ジンジャーの3種類の味から迷った末、ジンジャーを選びました。

食いしん坊の私に、その出番は思いのほか早く訪れました。飲み方はとても簡単。小さな一包を開けて、口に含むだけです。水も必要ありません。口に入れた瞬間ジンジャーの香りがはっきりと広がり、ほどなくしてシュワシュワと泡が弾けるように溶けていきました。広がる爽やかさと、軽やかな味わい。脂っこい料理の後に、口の中をさっぱりと整えてくれる心地よさがありました。


国も認めた歴史的価値
ブリオスキの文化的意味合いは公的にも認められました。2024年、ブリオスキはイタリアの「事業およびメイドイン・イタリー省」によって「歴史的価値を持つブランド」のひとつとして登録されたのです。長くイタリア家庭に寄り添ってきた安心感とともに、私はこの小さな一包をバッグの片隅に忍ばせておくことにしました。きっとまたすぐ、自制できない夜が訪れるでしょうから。