FOOD 12 Apr 2021

どこにもないユニークな演出が楽しい、ミラノのスターシェフの分身「Alter Ego(アルテレーゴ)」


ミラノからリモートで、いまのイタリアの様子やイタリアの魅力を伝えてくれた「Ristorante TOKUYOSHI(リストランテ トクヨシ)」オーナーシェフ・徳吉洋二さん。そんな彼が2019年2月、東京・神保町にオープンしたリストランテが、“分身”という意味を持つ「Alter Ego(アルテレーゴ)」です。

アルテレーゴは一軒家レストラン。1階はカウンター、2階には個室がありますアルテレーゴは一軒家レストラン。1階はカウンター、2階には個室があります

美しいセッティング。カトラリーはクチポール美しいセッティング。カトラリーはクチポール

ミラノで活躍する現役シェフの日本店ですから、本場イタリアの味を忠実に日本に届けるのかと思いきや、これがまぁユニーク。さすが、奇想天外な料理を次々と生み出す独創的なシェフ、マッシモ・ボットゥーラさんの右腕を9年間も務めただけのことはあるというか、日本人で初めてイタリアのミシュランの星を獲得した天才シェフの頭の中は一般人にはうかがい知れないというか。イタリアンのファインダイニングに慣れた人でも「こんなの見たことがない」と驚きを隠せない、さまざまなサプライズが凝縮しています。

「ピッツァ デリバリー」。ふたを開くと…「ピッツァ デリバリー」。ふたを開くと…

たとえば、最初に提供されるデリバリーピッツァのようなボール箱の「ピッツァ デリバリー」。カジュアルなピッツェリアのようなスタートですが、箱を開くと、彩りが目を引く手の込んだ美しいひと品が現れます。

こんなに美しいピッツァが登場しましたこんなに美しいピッツァが登場しました

これは米とポレンタでつくったサクッと軽やかなクラッカーをピッツァ生地に見立ててトマトソースを塗って、シュレッドしたモルタデッラ、薄切りマッシュルーム、ブッラータをふんわりと盛り、食感にインカのめざめのチップスを散らし、オレガノ、バジル、ルッコラで香りを添え、パルミジャーノとエディブルフラワーをトッピングしたもの。使う食材の質、その数、仕事の繊細さ。どれを取ってもリストランテの一品です。

生ハムはあらかじめ切っておくのではなく、食べる直前にスライスしてくれます生ハムはあらかじめ切っておくのではなく、食べる直前にスライスしてくれます

ワインペアリングのセレクションも魅力的。料理がスープを呼び、スープがワインを呼ぶ無限のループにはまりそうワインペアリングのセレクションも魅力的。料理がスープを呼び、スープがワインを呼ぶ無限のループにはまりそう

料理ひと皿ごとに、それぞれの料理のうま味に呼応するようなスープがセットになった「スープペアリング」も、ここでしかできない体験です。なかでも味わい深いのが、本マグロの赤身をヅケにしたものと生ハムを盛り合わせたひと皿。うま味の強い魚と肉を同時に食べるという演出にまず驚きますが、それぞれの完成度にもびっくり。

マグロの赤身は、もっちりと熟成感のあるうま味と食感を楽しめるように、しっかりめのヅケにされています。パルマ産の生ハムは、ワインを寝かせる樽で熟成させたもの。塩味がまろやかでしっとりしています。これを生ハムを薄くスライスすることに特化した「ベルケル」で、マグロが透けてみえるほど薄くふわふわにスライス。マグロも生ハムも単体でも最高ですが、それが組み合わさることで、他に類のない味覚の世界が広がります。

ここに合わせるのが、ケイバーの酸味と、台湾のスパイス「馬告(マーガオ)」のピリッとオリエンタルな刺激を効かせた温かいスープ。ひと皿の料理を食べ進めるごとに、どんどん味覚が奥深く変化していくのです。

こちらも肉と魚介のコンビネーション。はまぐりのスープを含ませたパスタに牛骨オイルをたらしますこちらも肉と魚介のコンビネーション。はまぐりのスープを含ませたパスタに牛骨オイルをたらします

パスタを食べ進めると中から大きなはまぐりが現れるサプライズがパスタを食べ進めると中から大きなはまぐりが現れるサプライズが

生うにとスープが添えられ、さまざまな味の変化を楽しめます生うにとスープが添えられ、さまざまな味の変化を楽しめます

もとは日本料理の割烹店だった(「日本料理 傳」がありました)厨房らしいオープンキッチンで、カウンターにずらりと並んだゲストの目の前で腕を振るうのは、 「リストランテ トクヨシ」でスーシェフを務めていた平山秀仁さん。

手入れの行き届いた機能的なキッチン手入れの行き届いた機能的なキッチン

料理がどんどん変化していくさまを、お客様に楽しんで見てもらえるように、また、料理のコンセプトをお客様にしっかりお伝えできるように、トークもがんばって練習しているとか。料理人は、アーティストとして自分の作品を語れなければいけない。そんな“マッシモイズム”が徳吉さんから平山さんへと継承されているのですね。

「リストランテ・ヒロ」を経てイタリアへ渡り、ミラノの「リストランテ トクヨシ」で3年間スーシェフとして活躍した平山秀仁さん「リストランテ・ヒロ」を経てイタリアへ渡り、ミラノの「リストランテ トクヨシ」で3年間スーシェフとして活躍した平山秀仁さん

締めのお楽しみは「Alter Ego流イタリアンTKGリゾット」。そう、リストランテなのに、締めにたまごかけご飯が登場するのです。炊きたてのご飯に卵白を加えて、メレンゲをつくれるくらいにほわっほわに泡立て、そこに卵黄を加えて、牛ほほ肉のワイン煮をのせ、目の前でトリュフを削る…。そんな一連の流れのなかで、香りがどんどん重なり広がっていきます。

アルデンテに炊き上げたのは新潟米「新之助 しんのすけ」アルデンテに炊き上げたのは新潟米「新之助 しんのすけ」

濃厚な卵黄をとろり。平山さんのパフォーマンスも綺麗です濃厚な卵黄をとろり。平山さんのパフォーマンスも綺麗です

できたてアツアツを口に運べば、まさしくファインダイニングの味。それなのにやっぱり食べ慣れたたまごかけご飯で、イノベーティブな料理を食べたはずなのに、なんだかほっこり落ち着くのです。

スープに自家製ふりかけまで登場して、味変は無限大スープに自家製ふりかけまで登場して、味変は無限大

そう、ファインダイニングって日常を忘れさせてくれる空間。華やかで楽しいものだった。そんな食の喜びを思い出させてくれる「アルテレーゴ」。徳吉さんが帰国して、平山さんと共にゲストの前で腕を振るう。そんな日が、きっともうすぐ来るはずです。

Alter Ego(アルテレーゴ)

東京都千代田区神田神保町2-2-32
03-6380-9390
17時~24時(土日祝12時〜15時30分、17時~22時)
月曜休
*現在はミラノの「リストランテ トクヨシ」と連動して、アラカルトとワインのアッビナメントを楽しめる「ベントーテカ」のポップアップを開催中。

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WRITER PROFILE
Shifumy
Shifumy

ガストロノミーツーリズムをテーマに、ファインダイニングを中心にストリートフード、家庭料理、郷土料理、ワイナリーや酒蔵などを取材して各種メディアで執筆。著名なシェフや生産者、作家、アーティストなどセレブリティへのインタビューも多い。訪れた国は60カ国以上。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」(小学館)シリーズ3巻。