AUTOMOTIVE 04 Jun 2018

コモ湖を舞台にした欧州最古の自動車エレガンス・コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」が開催


舞台は由緒ある館の庭園

ヒストリックカーの祭典「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」が、2018年5月26日と27日、スイス国境に近いコモ湖畔で開催されました。その歴史を1929年に遡る、現存する欧州最古の自動車エレガンス・コンクールです。

コンクールの舞台となるヴィラ・デステは、もともと修道院として設計され、16世紀には枢機卿の夏の別荘として用いられていました。離れの館は英国王妃のために使われていた時代もあります。そうした長い歴史を引き継ぎ、1873年からはホテルとして多くのセレブリティをもてなしてきました。

ハリウッド映画ゆかりの名車たち

5月は初旬から長雨に祟られていたイタリア半島でしたが、その日クルマ好きに幸運の女神は微笑みました。夏の到来を予感させる太陽のもと、会場となったグランドホテル・ヴィラ・デステの庭園には、世界15の国と地域からエントリーした51台のヒストリックカーが集いました。

今年のテーマは「Hollywood on The Lake」。参加車の年代は1909年から1985年にわたり、9カテゴリーに分けられて審査を受けました。実際にスクリーンに登場したり、主演俳優などが所有していたなど、映画ゆかりの車両カテゴリーも設けられています。

「フェラーリ500 スーパーファスト」、「アストン・マーティン DB5」、「キャデラック・シリーズ62」

今年の大会テーマと同じ「Hollywood on The Lake」と名づけられた車両カテゴリーに出場した参加車より。手前の「フェラーリ500 スーパーファスト」(1965年)は、ピンク・パンサーのクルーゾー警部役で一世を風靡した英国人喜劇俳優ピーター・セラーズが所有していた車。右奥は007シリーズの「ゴールドフィンガー」および「サンダーボール作戦」の劇中車「アストン・マーティン DB5」(1964年)。左奥は政治家・実業家であったアーガー・ハーン3世の子息アリ・ハーンが、前妻の米国女優リタ・ヘイワースに贈った「キャデラック・シリーズ62」です。

「ランチア・ストラトス」

未来的なスタイルで人々の視線を集めていたのは、イタリアを代表する自動車デザイナーのひとり、マルチェッロ・ガンディーニによる「ランチア・ストラトス」(1970年)。全高が84cmと低いため、乗降はフロントウィンドウを跳ね上げて行います。16歳以下の一般来場者による人気投票賞に選ばれました。米国から参加したオーナーのサロフィム氏は、「ガンディーニ氏が80歳を迎える年に、彼を象徴する作品と共に出場できて嬉しい」と喜びの声を聞かせてくれました。

「コッパ・ドーロ(金杯)」賞に輝いた「アルファロメオ 33/2 ストラダーレ」

ヴィラ・デステのコンクールで最も栄誉ある「コッパ・ドーロ(金杯)」賞に輝いた「アルファロメオ 33/2 ストラダーレ」(1968年)。造られたシャシーはわずか18台分。ボディのデザインは伝説の鬼才フランコ・スカリオーネによるものです。「一般来場者人気投票賞」「保存状態良好な戦後車賞」にも選ばれました。「アルファの魅力は時代を超越した美しさ」と語ってくれたスイス人オーナーのシュピース氏は、他に「アルファロメオ 8C 2300モンツァ」も所有しているとか。

「007シリーズ」でショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドが駆った「アストン・マーティン DB5」の前では、思わずあの名テーマ曲を口ずさむ一般来場者がいました。「若き日に恋人と観たのを思い出しました」。そう語る紳士の脇には恥ずかしそうに微笑む夫人の姿がありました。コンクールは、自動車という20世紀の偉大な創造物を讃えると同時に、人々が懐かしい記憶に思いを馳せることができるイベントでもあるのです。

舞台にも、披露されるクルマにも、歴史に裏打ちされた深い味わいがある。それこそが世界に数ある自動車エレガンス・コンクールのなかで、ことのほか格調高いものとして人々を魅了する所以です。

Information:
CONCORSO D’ELEGANZA VILLA D’ESTE
http://concorsodeleganzavilladeste.com
WRITER PROFILE
大矢 麻里 Mari Oya

イタリアコラムニスト。東京生まれ。短大卒業後、幼稚園教諭、大手総合商社勤務を経て1996年からトスカーナ州シエナ在住。現地料理学校での通訳・アシスタント経験をもとに執筆活動を開始。NHKテキスト『まいにちイタリア語』『朝日新聞デジタル』などに連載多数。NHK『マイあさラジオ』をはじめラジオでも活躍中。著書に『イタリアの小さな工房めぐり』(新潮社)、『意大利工坊』(馬云雷訳 華中科技大学出版社)、『ガイドブックでは分からない 現地発!イタリア「街グルメ」美味しい話』(世界文化社)がある。