今回ご紹介するワーキング・マンマのサラ・キアレッロ(Sara Chiarello)さんとは、トスカーナ州主催のイベントで知り合いました。コロナ禍中にPR会社を立ち上げた、アクティブでパワフルな女性です。オペラやジャズフェスティバルなど音楽イベント、トスカーナ市役所などの役所関連のプレスツアーや記者会見、ファッション、観光、食品、教育など幅広いジャンルでPRを手がけているサラさんは、敏腕PR&経営者として忙しい毎日を過ごしていますが、私生活では4歳の女の子のマンマです。そんなサラさんの仕事と子育ての両立の秘訣をインタビューで伺いました。
フィレンツェ大学在学中に有名オペラフェスティバルのPRとしてキャリアをスタート
南イタリアのレッチェで生まれ育ち、フィレンツェ大学で学ぶためにフィレンツェにやってきたサラさん。フィレンツェのあるトスカーナ州は母親の出身地で、大学卒業後から今までずっとフィレンツェで暮らしています。
―――PRとしてのキャリアをスタートさせた経緯を教えてください。
私のいとこのマリア・デ・ローザ(Maria de Rosa)は、ミラノのスカラ座劇場のプロデューサーなんです。幼い頃からオペラに慣れ親しんでいたので、フィレンツェ大学で劇場の歴史を専攻したのは自然な流れでした。2009年には、マリア・デ・ローザが東京でオペラ“ドン・カルロ”を上映させるために日本へ行きましたが、その時東京へ一緒に行ったんですよ。私にとっては初めての日本滞在でした。
フィレンツェ大学在学中の2004年に初めてのスタージュ(インターンシップ)で、幸運にもイタリアで重要なオペラの祭典“マチェラータオペラフェスティバル”のPRを任されて、その時からずっとPR関連の仕事に携わってきました。大学卒業後はフィレンツェ郊外の劇場テアトロ・フィエゾラーナで働きながらPRとしてのキャリアを磨きました。
―――PRとしてのキャリアをスタートさせた当初で特に印象に残っている仕事は何ですか。
ジャズフェスティバルなど様々なイベントの企画運営も手がけてきましたが、40人の若手ミュージシャンが、ワインの名産地キャンティ地方のブドウ畑の中で演奏するオーケストラコンサートを企画して成功させたことは、とても印象に残っています。
「どんな時でも前進あるのみ!」コロナ禍に同業者の女性と二人でPR会社を設立
2015年に、イベントの仕事で同じくフリーランスでPRやジャーナリストとして活躍していたフランチェスカ・プリーティー(Francesca Puliti)さんと出会い、色んなイベントで一緒にコラボするようになりました。それから5年間一緒に働いた後、昨年2021年3月に二人でPR会社“キアレッロ・プリーティー・パートナーズ(Chiarello Puliti Partners)”を立ち上げました。現在は時期に応じて常に7〜10人ほどの固定のフリーランスPRとチームになって仕事をしています。
―――コロナ禍にPR会社を立ち上げようと思ったのはなぜですか。
コロナ禍の2021年に会社を立ち上げたのは、困難な時こそ行動を起こし、さらに前進を続けたいと思ったからです。コロナ禍になってイベント関連は無くなりましたが、おかげで仕事のやり方を変え、フレキシブルに物事を考えられるようになりました。事業内容はもともと幅広いジャンルを手がけていたので、コロナ禍でも需要のある仕事やできることをやっていくようにしました。ヨーロッパアカデミーのような教育の仕事やファッション関連の仕事はコロナ禍でもありましたので、常に働き続けることができました。仕事内容のバリエーションも増やし、PRだけでなくマルチコミュニケーション事業を展開し、広告、ソーシャルネット、ビデオやネットサイトやドキュメント作成、イベント運営などた幅広く手がけるようになりました。
―――PR会社設立2年目の今年はどのような事業を予定していますか。
今年5月にフィレンツェのドゥオモ近くに新しく事務所を構え、ゆくゆくはフリーランスとのコラボだけでなく、従業員も雇っていく予定です。さらに6月にはローマのトラステヴェレにも拠点を構えて事業を拡大していく予定です。ローマにはHSI(Human Society International)という動物を保護するアメリカの団体の顧客がいて、そのヨーロッパマーケティングを任されており、既にローマでの事業も着々と進んでいます。サルデーニャ島とミラノでも観光関連の事業を既に展開していて、今後もフィレンツェ以外の事業にもさらに力を入れていく予定です。
私生活では4歳の女の子のマンマ!仕事と子育てを両立させる秘訣とは?
2008年、サラさんは自身が手がけた音楽関連イベントのプレス発表会で、音楽ジャーナリストとして参加していた現在のパートナーであるダヴィデ・アガッツィ(Davide Agazzi)さんと知り合いました。ダビデさんは現在も音楽ジャーナリストとして活躍し、フィレンツェのFMラジオ局でDJも務めています。
―――現在4歳になるお嬢さんのお名前“アデライデ”には特別な思いが込められているそうですね。
私の娘の“アデライデ(Adelaide)”という名前の由来ですが、私の母方の祖母の名前なんです。祖母のアデライデは新聞や雑貨などを販売しているショップで働いていたのですが、とてもパワフルで明るい人柄だったため街の人気者で、そんな祖母のような女性に育って欲しいという思っています。
―――PRとして忙しく働く中、どうやって仕事と子育てを両立させているのですか。
母になるということは、誰もが言うことですが、スーパーパワフルになることと、時間管理が上手になるということです。そうはいっても、両立は大変です。イタリアの場合、祖父母が孫の面倒を見ることはよくありますが、私の場合は両親は遠く離れたレッチェにいるので手助けを求められません。私たちカップルは“moderna(モデルナ=現代的)”なんです。祖父母が面倒を見るようなイタリアの伝統的なタイプではなく、ダビデと私の二人にとって一番いい新しいスタイルを取り入れて仕事と家庭を両立しているんです。
私にとって、フィレンツェにある“スパッツィオ・コスタンツァ(spazio co-stanza)”は無くてはならない存在でした。スパッツィオ・コスタンツァは学位を持つ幼稚園教諭が常駐する保育施設つきのコワーキングスペースなんです。私は産後3ヶ月で仕事に復帰しましたが、ここを見つけられたことは幸運でした。
常に幼稚園教諭が隣の部屋で子供を見てくれるので、仕事をしながら時々母乳をあげにいくことができ、なによりもすぐ隣の部屋に子供がいることで安心して仕事をすることができました。ここは生後3ヶ月から一年間利用しましたが、私にとって本当に大きな助けとなりました。サルデーニャ島のフィルムフェスティバルへ出張した時は娘も一緒に連れていき、ここの幼稚園教諭のマリアンナ・ダルフォンソさんに同行を頼んで、仕事中は娘の面倒を見てもらいました。
スパッツィオ・コスタンツァ(spazio co-stanza)
―――家庭内での子育てについて、パートナーのダヴィデさんとの家事分担は?
パートナーのダヴィデは一緒に子育てをしてくれます。ダヴィデは午前はフレキシブルに働くことができるので、家族3人がそろう朝は全員で行きつけのバールに行って一緒に朝食をとります。娘も4歳になった今は保育園に通っていますが、二人で一緒に娘を朝9時に保育園へ送ります。保育園への迎えは一緒に行くことができない場合は、できる方が行くようにしていますが、午後8時まで預かってくれるので仕事にさほど支障なく迎えに行けます。
一般的に4歳児は21時頃寝るかもしれませんが、娘は23時に寝ます。20時まで保育園に預けているので、それから家で3人で夕食を食べ、映画を観たり、本を読んだり、絵を描いたり、23時までは家族3人一緒の時間を楽しく過ごしています。保育園も私たちの仕事のスタートも9時過ぎなのでこうしたタイムスケジュールが可能ですし、仕事も子育ても無理なくできる私たち家族に合っているスタイルなんです。
食事の準備も朝食はバールで済ませ、昼食は娘は保育園で私とダヴィデはそれぞれ外食、夕食の支度はその日にできる方が担当しています。ダヴィデの方が料理が上手で、二人でそれぞれの仕事を尊重しながら家事もできる方がするといったように分担しています。
―――アデライデちゃんが産まれて間もなく、3人で日本旅行をしているそうですね。
日本への家族旅行は素晴らしかったです!娘が生後5ヶ月の時だったのですが、電車の中でもレストランの中でも泣くこともなく落ち着いていました。娘を赤ちゃんの頃から仕事現場のいろんなイベントに連れて行ったので、人見知りしない子に育ってくれたんです。
生後5ヶ月というとても小さいイタリア人の赤ちゃんは珍しかったようで、大勢の日本人から「かわいい」と声をかけられて、とても親切にしてもらいました。日本は子連れ旅行にとってパーフェクトな国で、本当にとってもいい旅行となりました。
―――今後、仕事においてはどのような夢がありますか。
ゆくゆくは共同経営者のフランチェスカと一緒に自分たちで何かをゼロからプロデュースし、それを自分たちでPRしていくこと。それが今の私たちの夢です。その何かについては二人であれこれ思案中なんです。実現したら、その時は日本でも展開できたらいいなと思っています。
保育施設つきのコワーキングスペースを活用したり、子育てのタイムスケジュールをフレキシブルにするなど自分たちの生き方にあったスタイルを取り入れて、仕事と子育ての両立をうまくこなしている、サラさん。パートナーのダヴィデさんもサラさんについて「仕事と子育てを両立させるのは簡単ではありませんが、サラは常にどちらもこなすことに成功している素晴らしい女性です。正直なところ、私は彼女なしではどうしたらいいのかわかりません。」とべた褒め!自分の生き方と仕事に誇りと自信を持ち、穏やかな笑顔で将来の夢を語っている姿がとても素敵でした。今後ますますの活躍が期待されます。
キアレッロ・プリーティー・パートナーズ(Chiarello Puliti Partners)