5月7日(水)から17日(土)まで、東京都八王子市にある東京造形大学のCSギャラリーにて開催された「大塚康生展 道楽ものおもちゃ箱」。
大塚氏といえば「ムーミン」「パンダコパンダ」「侍ジャイアンツ」「未来少年コナン」「じゃりんこチエ」など、かつて少年少女だったみなさんがテレビで観ていた作品を数多く手掛けたアニメーションの作画監督。
イタリア車「FIAT 500」が登場する大ヒット作「ルパン三世」を手掛けたことでも有名な大塚氏が描いたイラストやコンテなどはもちろん、趣味で作り続けていた同人誌や模型まで、貴重かつ多彩な資料や作品が所狭しと展示されたイベントをレポートします。


ルパン三世の愛車が「FIAT 500」の理由とは
いまから54年前の1971年にテレビシリーズ第1作目が放送されたアニメ「ルパン三世」。その最新映画「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」が6月27日に公開。2Dアニメの劇場版としては、なんと30年ぶりとなる本作。すでに、劇場へ足を運んだ方もたくさんいると思います。
さて、ルパン三世といえば、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部という個性豊かなキャラクターはもちろん、愛車の「FIAT 500(フィアット チンクエチェント)」を思い浮かべる方も多いはず。そんな、イタリア生まれの「FIAT 500」がルパン三世に登場することになった理由、それは作画監督である大塚氏の愛車が「FIAT 500」だったからなのです。
スタジオの窓から、駐車場に停まっている「FIAT 500」を見ながらスケッチしたというのは、ルパンファンの間では有名な話。
作品の中に愛車を登場させるとは「FIAT 500」のことを、よっぽど可愛がっていたんですね。



会場じゃなければ聞けない製作裏話も
開催最終日となった5月17日には、不朽の名作「ルパン三世 カリオストロの城」に関するギャラリートークが開催されました。本ギャラリートークでは、会場となった東京造形大学の特任教授であり、大塚氏と深い関わりを持つ叶精二氏が解説。いままでには気づかなかったことや、某アニメや某映画を参考にしたシーンがあることなど、約1時間にわたり興味深い話が繰り広げられました。映像研究家でもある叶氏ならではの楽しく鋭い考察に、会場は常に「へぇ〜」という感心の声や笑い声に包まれていました。
ちなみに、映画「ルパン三世 カリオストロの城」でクラリスが乗っていたピンク色のクルマ「シトロエン 2CV」は、宮崎駿監督の愛車がモデルだったからなのです。
筆者は帰宅後、叶氏から聞いた内容を念頭にこれまでに何度となく観た同作品を改めて鑑賞。時折、クスッと笑いながら観ていたのを、家族に不思議な顔で見られていたのは言うまでもありません。




趣味でつくり続けたプラモデルも公開
生涯を通じて、大塚氏が熱心に取り組んでいた趣味のひとつがプラモデル。その熱量の高さは、プラモデルメーカーであるマックス模型に、大塚氏自身が一時席を置いていたほど。
また、大塚氏はタミヤから発売された初期のRCカーやミニ四駆、ミリタリーフィギュアなどのデザインを手掛けたことでも知られています。
本展示会では、そんな大塚氏が手掛けたプラモデルや書物なども多数展示。アニメーションの作画同様、細部へのこだわりはプラモデルの仕事にも存分に活かされていました。



資料や掲示物、書物やプラモデルなど、たくさんの展示物が出迎えてくれた見応え満点の「大塚康生展」。
充実の内容もさることながら、まるで大塚氏の頭の中を覗かせてもらったような気分になり、ついつい微笑んでしまう。
そんな主催者の優しさと思いを感じる、素晴らしく温かい展示会でした。