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MUSIC 12 Feb 2021

バレンタインにオススメ♡ 「イタリア珠玉のラブソング」Spotifyプレイリスト


イタリアのバレンタインデー

バレンタインの起源となったのは紀元3世紀のローマ司祭ヴァレンティヌスで、結婚禁止令が発令されている中、密かに婚姻の儀式を行って恋人たちを祝福したため、捕らわれて処刑されたと言われる人物。 死後“恋人たちの守護聖人”と崇められて今日に至ります。 イタリアでは“San Valentino(サン・ヴァレンティーノ)”と呼ばれています。

イタリアでのバレンタインは日本の風習とは異なり(というより世界的視点では日本だけが特異)、既にカップルになっている間柄でのみ重視されるイベントで、どちらかというと男性から女性へ贈り物をするのが主流のようです。 つまり女性が告白するためでも、女性から男性へチョコレートを贈るイベントでもありません。

イタリアのラブソングの事情

イタリア語ではラブソングのことを“canzone d’amore(カンツォーネ・ダモーレ)”と言います。 もちろん“アモーレの国・イタリア”ですから、古今より数多のラブソングがあります。

ところがイタリア人たちがSpotify上で披露しているラブソングのプレイリスト収録曲は、日本人の感性と少し異なるようです。 そこで今回、イタリア人の感性も尊重しつつ、日本人にも響きそうなラブソングをミックスしたプレイリストを作りました。 歌詞も全曲に渡ってチェックを入れ、失恋・悲恋・不倫などの要素のある曲は避け、ハッピーな曲を厳選しています。

イタリアのラブソングには、一聴するとめくるめく究極のラヴソングに聴こえるものの、歌詞を追っていくと、たった1行でこの愛は成就しない・禁断のもの・縁起が悪いことが判る曲が異様なほど多いのです。 Italianityの読者さまには、この重要な機会に不吉な楽曲を紹介してはならない!との決意で責任編集し、幸せ要素のある楽曲のみで構成いたしましたので、安心してお聴きください。

注目のピックアップ曲

プレイリストに収めたのは、どれも素敵なラブソングばかりなのですが、少し補足しておいた方がより魅力が増すであろう楽曲をピックアップしてみます。

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冒頭から4曲目の「Estate(エスターテ / 意:夏)/ Gino Paoli(ジーノ・パオリ)」(2019)
2019年という新しい時代の曲ですが、このジーノ・パオリは1950年代から活動を続ける、御年なんと86歳という最古参のシンガーソングライターです。 この年齢でもバリバリの現役というのも凄いところなのですが、それよりもこの年齢でまだこんなに瑞々しい感性で新しいラブソングを書けるところに驚愕です。

アルバムには四つの季節すべてが組曲形式で収録されており、今回はその中の「夏」。
♪僕を愛していると言わないでくれ それを言うべきなのは僕なのだから(中略)僕は君を見つめる 君は最初の頃のまま 時が君を置き去りにしたのだろうか そして僕はまた君に恋をする♪

こういう言葉が素直に出せることからお察しの通り、そう、彼はモテる男です。それ故、若い時にはたくさんの浮名を流し、30代の既婚者でありながら当時まだ10代だった(後の大女優)ステファニア・サンドレッリを妊娠させたことで、猛烈なバッシングを受け、仕事を干されていたこともありました。そういう辛酸を舐めた後の彼の作品は、以前よりもさらに磨きがかかり、同性からも魅力的に見える人柄に変貌を遂げて今日に至ります。

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28曲目「A te(ア・テ / 意:君に)/ Jovanotti(ジョヴァノッティ)」(2008)
イタリア語ラップの創始者と呼ばれるジョヴァノッティは、ラップの範疇だけに留まらず、今ではすっかりイタリアの重要なシンガーソングライターになりました。 この楽曲は発表後すぐに究極のラブソングとして認識されるようになった曲ですが、なんといっても2018年のジョヴァノッティのライブでこの楽曲が歌われている最中に、客席で観客カップルがプロポーズして成就するということが起き、大きな話題となりました。

それがジョヴァノッティ自身の目にもとまり、翌年、神前結婚式ならぬ、ジョヴァノッティ前結婚式というイベントも催され、近年のイタリアではとても縁起の良い曲として浸透しています。

61曲目「Il pavone(イル・パヴォーネ / 意:孔雀)/ Opus Avantra(オプス・アヴァントラ / 日本語表記:オパス・アヴァントラ)」(1974)
普通のイタリア音楽ファンには馴染みのない楽曲かもしれません。 なぜなら通常は、プログレッシヴ・ロック(以下、プログレ)の分類に入れられているバンドのアルバム収録曲だからです。 逆にプログレファンには知名度が高いバンド&楽曲になります。 前衛的な楽曲も多いバンドですが、この曲は古き佳きイタリア語曲の味わいが強く、それがプログレファンにもダントツの人気を誇る楽曲でもあります。

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ヴォーカルのドネッラ・デル・モナコは、“黄金のトランペット”の異名で世界で一世風靡した名テノール歌手マリオ・デル・モナコの姪にあたります。 こうしたクラシカルな歌い方のヴォーカルと前衛的なサウンドが絡み合っているのがイタリアのプログレの魅力でもあります。 少なくともこの楽曲はプログレファンだけの愛聴曲にしておくのがもったいない曲だと思います。

ちなみにプレイリスト中でこの曲の直前にあるのが、そのマリオ・デル・モナコ晩年の歌唱曲「Un amore così grande(ウナモーレ・コズィ・グランデ / 意:こんなに大きな愛)」(1975)になります。 この曲は後にサンレモ音楽祭史上最多の4回優勝を誇るClaudio Villa(クラウディオ・ヴィッラ)や3大テノールのひとりLuciano Pavarotti(ルチァーノ・パヴァロッティ)、Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)らにもカバーされる、セミクラシック曲となります。 21世紀になってからもロックバンドNegramaro(ネグラマーロ)が新感覚でカバーしてリバイバルヒットしました。

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66曲目「Questo piccolo grande amore(クェスト・ピッコロ・グランデ・アモーレ / このありふれた大きな愛)/ Claudio Baglioni(クラウディオ・バリォーニ)」(1972)
直前まで泣かず飛ばずだった当時の新進気鋭のシンガーソングライターが、この楽曲リリース後大ヒットしてスターダムにのし上がり、今日まで常にトップアーティストとして君臨し続けるきっかけとなった楽曲で、後の1985年になって“20世紀最大のラブソング”と認定される楽曲となりました。略称では“QPGA(クー・ピー・ジー・アー)”と呼ばれ、2008年になって映画化もされました。(この記事のトップ画像は映画の一場面)

性別を超越したラブソング

イタリア語の“アモーレ”は、“愛”、“恋”、“愛する人への呼びかけ”などに使われます。この“アモーレ”は単に男女間の恋愛だけをイメージする言葉ではありません。 ここからは異性間の愛を超越したラブソングをピックアップして紹介します。

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14曲目「Arriverà L’Amore(アッリヴェラ・ラモーレ / 意:愛がやって来るよ) / Emma(エンマ)」(2015)
この曲は文法上、女性から女性への愛が歌われているように読み取れます。歌詞中でたった1行だけ登場する ♪Perché sei più bella così(意:だってあなたがこんなにずっと美しいから)♪ で判ります。 英語と違って、発言者や対象者の性別が判るのがイタリア語の奥深いところですね。女性応援歌・讃歌と捉えても良いでしょう。

エンマ来日時にインタビューして尋ねたところ、彼女自身は“私自身は性別を超えて、全ての人に向けて歌っているつもりよ”と答えてくれました。 つまり歌の対象を “persona(ペルソナ / 意:人物)”や“umanià(ウマニタ / 意:人類)”という女性名詞であると捉えれば、性別を超越した人類愛の歌、と考えても良いわけです。公式MVもそういう解釈で作られているようです。

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25曲目「Ti voglio tanto bene(ティ・ヴォッリョ・タント・ベーネ / 意:あなたが大好き)/ Gianna Nannini(ジァンナ・ナンニーニ)」
この楽曲は、母から娘への愛の歌と考えられます。 ジァンナ・ナンニーニが56歳にて初出産した直後にリリースされたからです。 彼女がLGBTであることをカミングアウトしていたことや56歳での高齢出産ということから、自然妊娠ではないのでは? という疑惑が湧き、法的な観点と、カトリックの戒律の観点の両面で大きな社会問題となりました。彼女は今でも真実については口をつぐんだままです。

公式MVは19世紀ごろのベルエポック時代テイストで製作された豪華な映像で、幼い少年少女をモチーフにしています。

33曲目、同じくGianna Nanniniの「Meravigliosa creatura(メラヴィリォーザ・クレアトゥーラ / 素晴らしき生きとし生けるもの)」(2004 / 原曲は1995年発表)
歌詞中では ♪Meravigliosa creatura sei sola al mondo(意:素晴らしき生きとし生けるもの あなたは世界でたったひとり)♪ と歌われています。 “Creatura”は女性名詞なので、文法上はこれで正しいのですが、やはり彼女がLGBTであるということから、この曲は女性への愛が歌われているのでは?と感じさせます。

ちなみに“creatura”は英語に派生すると“creature(クリーチャー)”となり、“怪物”という意味あいが強いようですが、イタリア語では“神が創った生物”という崇高な意味となります。 1995年発表のオリジナルバージョンは弾ける曲調なのですが、今回は2004年にリリースされたアコースティック楽器で演奏された、よりロマンティックなバージョンをプレイリストに入れました。

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35曲目の「Chissà se lo sai(キッサ・セ・ロ・サイ / 誰がそれを知っているのだろうか)/ Ron (ロン)」(2000)
師弟関係にある男性2人によるデュエットバージョン。冒頭で ♪Ti ho guardato per il momento(意:君を一瞬見つめると)♪ と歌われていることで対象が男性であることが判ります。 続いてその対象の男性の輝く瞳の美しさ、赤くなる頬の可愛らしさを丁寧に描写して歌っています。つまり師たるルーチョ・ダッラは明らかに弟子のロンに対して歌っていると思えるのです。

イタリアではカトリックの戒律により、LGBTはご法度です。それ故、例え世間にそのことが周知の事実となったとしても、決して公にカミングアウトしない人も多いのです。 この師匠Lucio Dalla(ルーチョ・ダッラ)は亡くなるまでカミングアウトしなかった人物のひとりです。

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65曲目「Nascerò con te(ナッシェロ・コン・テ / 意:君と共に生まれるよ)/ Pooh(プー)」(1972)
♪初めて アモーレがここ僕の家にいる ほとんどまだ君のことを知らないのに♪ という歌詞なので、まだよく知らない女性を自宅に連れ込んだ歌詞に聴こえてしまいますが、実はこれ、生まれたばかりの娘に捧げられた楽曲なのです。 “アモーレ”はイタリアでは親子でも使いますからね。

ちなみにこの楽曲の作曲者はRoby Facchinetti(ロビー・ファッキネッティ)で、歌われた娘は後にファッションデザイナーとして大成するAlessandra Facchinetti(アレッサンドラ・ファッキネッティ)です。 彼女が生まれた1972年リリースのアルバムには彼女の名前が冠されました。 ※当サイト過去記事参照

プレイリストに収録された楽曲の内訳

プレイリストには2020年の曲から最古は1959年まで全77曲、降順で楽曲が並んでいます。年代別では以下のような収録曲構成となっています。特定の年代にターゲットを絞って聴きたい方は、下記を目安にしてください。

2010年~ 1曲目「La cura del tempo / Negramaro」 ~ 26曲目「Baciami ancora / Jovanotti」

2000年代 27曲目「Credo nell’amore / Gianni Morandi」 ~ 35曲目「Chissà se lo sai / Ron」

1990年代 36曲目「L’emozione non ha voce / Adriano Celentano」 ~ 47曲目「Vieni a stare qui / Franco Fasano」

1980年代 48曲目「Almeno tu nell’universo / Mia Martini」 ~ 54曲目「Ti amo però / Riccardo Fogli」

1970年代 55曲目「Ti amo / Umberto Tozzi」 ~ 68曲目「La prima cosa bella / Nicola Di Bari」

1960年代 69曲目「Se stasera sono qui / Luigi Tenco」 ~ 76曲目「Romantica / Renato Rascel」

1950年代 77曲目 「Tua / Jula De Palma」

                  

Spotifyプレイリストの聴き方4選

プレイリストは以下の4通りの聴き方ができます。

1. 埋め込みプレイヤー上で30秒ずつ聴いていく
Spotifyに未登録またはログオフした状態で、この記事内に埋め込まれたプレイリストで再生すると、各曲30秒ずつリスト順に再生されます。全体の曲のさわりをサクッと聴いて、好みの曲に目星をつけるのには便利かと思います。

2. 最初から順番通り聴いていく
冒頭から順番に再生する、ノーマルな聴き方です。このプレイリストでは段々時代が遡っていく、ということとなります。

3. 特定の年代の曲から聴いていく
聴きたい年代にあたりをつけて目星の曲を再生すると、そこから降順で楽曲が再生されます。好みの年代にターゲットを絞って聴きたい際に最適です。

4. シャッフル再生を使い新旧混合で聴いていく
Spotifyアプリ(Webプレイヤー含む)でシャッフル再生機能をONにして再生すれば、収録曲が順不同・ランダムに再生されます。 Spotifyアプリやブラウザの下部にあるコントロールバー左にあるアイコン(下図の赤い四角参照)がランダム再生機能です。これをクリックすればシャッフルONになります。

Spotify シャッフル機能 off

Spotify シャッフル機能 on

シャッフル再生がONになると緑色に変わります。

イタリアのラジオ局は新旧混在で音楽を流しますので、まさにイタリアのラジオを聴いているかのような気分に浸れるのでお勧めです。

Buon ascolto!(ブオン・アスコルト / 意:楽しんで聴いてね!)

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WRITER PROFILE
よしお アントニオ

音楽ジャーナリスト。イタリア音楽専門誌『MusicaVita Italia(ムジカヴィータ イタリア)』 http://musicavitaitalia.com/ 編集人。 イタリア音楽普及促進グループPiccola RADIO-ITALIA(ピッコラ・ラディオ・イタリア) http://piccola-radio-italia.com 主宰。 毎月開催のイタリアPOPSフェスタも15年を超えている。イタリアン・ポップス出版物(CD等)の歌詞監修・対訳多数。日本の伝統も重んじる剣道家(四段)でもあり、少年剣道教室の指導役も務めている。