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サンレモ音楽祭2022優勝はマムッド&ブランコ!

2022年2月1日~5日に開催された第72回サンレモ音楽祭は、優勝経験を持つMahmood(マムッド)と新進気鋭のBlanco(ブランコ)によるデュオが歌う「Brividi(ブリヴィディ / 意:おののき)」という楽曲が優勝に輝きました。



前者はR&Bっぽいテイスト、後者はラップに軸足を置く、というスタイルの2人が、美しい高音域のメロディをしっかりとした歌唱力で魅了したパフォーマンスだったことが勝利に繋がったようです。


歌っている内容は“愛の不確かさ”。間違いや不充分さ、脆さなどを恐れずに、逃げずに立ち向かっていこう、というメッセージソング。メタファーに富んだ歌詞なので、人それぞれの解釈が成り立ちますが、直近の2年もの間、愛が確かめにくい状況に陥った誰もの心に刺さったことは間違いないでしょう。


2年ぶりの有観客開催となり、視聴率はなんと58%(前年比125.4%)という大記録をたたき出しました。前年に優勝したMåneskin(マネスキン)が、ユーロヴィジョン・ソング・コンテストでも優勝し、瞬く間に世界中でブレイクしたことで、国内外の関心度&期待度が大きかったことが、数値に現れたと考えられます。


サンレモ音楽祭2021優勝は平均20歳のバンド、マネスキン!
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サンレモ音楽祭2021優勝は平均20歳のバンド、マネスキン!

よしおアントニオ / 2021.03.22


優勝者その1:マムッド

マムッドことAlessandro Mahmoud(アレッサンドロ・マフムード / 30歳)はその外見からもわかる通り、エジプト人父とイタリア人(サルデーニャ出身)母との間に生まれたハーフですが、本人はミラノ生まれ&育ちなので、自身のアイデンティティはしっかりミラノっ子だそうです。


マムッドは2019年にサンレモ音楽祭初出場にして初優勝をさらった経験を持っています。同年は新人部門が撤廃され、新人枠出場者も総合優勝を狙えるルールが功を奏し、彼は新人枠から総合優勝を勝ち取ったのです。実は2022年も新人部門が撤廃され、“ポスト・マムッド”が現れるか? という期待値があったのですが、自らがそのポストを再び獲得したのです。


サンレモ2019優勝時のマムッド
サンレモ2019優勝時のマムッド

72年に及ぶサンレモ音楽祭の歴史上、複数回優勝者は数いますが、ほとんどが50年代~70年代で、21世紀になってから、前回の優勝から数年で再び優勝した例はこれが初めてとなります。


優勝者その2:ブランコ

ブランコことRiccardo Fabbriconi(リッカルド・ファッブリコーニ / 19歳 / 優勝時18歳 / ロンバルディア州ブレシア県出身)は、2020年にデビューしたばかりの若手ラッパーですが、2ndシングルがいきなりチャート2位となって注目を集め、2021年になるとチャート首位を獲得する楽曲を3曲も放ち、年間チャートでもそれぞれ2位・5位・6位とベスト10内に3曲も入る大躍進を遂げ、たちまち人気アーティストとなったばかり。サンレモ初出場でいきなり初優勝を飾るシンデレラ・ボーイとなりました。


ブランコ
ブランコ

カヴァー大会に彼らが歌ったのは…

今回のサンレモでも例年のお楽しみのひとつとなっているカヴァー大会が第4夜に開催され、若き彼らが歌ったのは…なんと彼らが生まれる30年以上も前の楽曲「Il cielo in una stanza(意:ある部屋の空 / 邦題:しあわせがいっぱい)」(1960)というのも、大きな喝采をもって受け入れられたのも少なからず勝因のひとつにはなったと思います。


同曲は60年代にイタリア音楽界の革命を目指したジェノヴァ派と呼ばれるシンガーソングライターたちの中で、現在、唯一の生存者であるGino Paoli(ジーノ・パオリ)が書いた楽曲で、後にイタリア音楽界の女王に君臨する若きMina(ミーナ)の歌唱で大ヒットしたエヴァーグリーン曲です。(プレイリスト30番目にジーノ・パオリ歌唱ヴァージョンを収録)


サンレモ2022第4夜カヴァー大会のマムッド&ブランコ
サンレモ2022第4夜カヴァー大会のマムッド&ブランコ

日本でも若い世代の一部に昭和歌謡ブームが起きていますが、イタリアではそれより幅広く&遥か前から延々と、過去の歴史的大作を使い捨てにせずに次の世代が歌い継いでいく文化が根強く残っているのです。


なので、イタリア音楽をより楽しむためには、ジャンルや時代の垣根を取っ払って、幅広く聞いて楽しむのをお勧めします。


ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2022

前2021年にマネスキンがユーロヴィジョン・ソング・コンテストで優勝したので、2022年のユーロヴィジョンの開催国はイタリアとなり、5月10日~14日に渡ってトリノで開催されます。


出場権もサンレモ優勝者のマムッド&ブランコに与えられたので、彼らが出場することとなります。イタリアはシード権を持っているので、予選には参加せず、いきなりファイナルからの登場となり、サンレモ優勝曲を披露するのが既定路線ですが、歌詞の一部を英語に変えたり、サンレモ優勝曲とは異なる楽曲を披露することもあります。


もともとユーロヴィジョンはサンレモ音楽祭をお手本としているため、イタリア側のスタンスはサンレモ音楽祭の方が格上と思っていて、ユーロヴィジョンには関心を示して来ていませんでしたが、2021年のマネスキンの優勝ですっかり概念が変わったようなので、その意気込みを見て感じ取るのも楽しみですね。


無料で聴けるプレイリスト

無料で聴けるSpotifyプレイリストには以下の様に楽曲を収録しています。


1~25:総合順位順

26~31:カヴァー大会1~3位(オリジナル歌手ヴァージョン)

32~57:カヴァー大会その他(出演順 / オリジナル歌手ヴァージョン)

58~最後:ゲストの披露曲・ショウタイムで使われた楽曲(オリジナル歌手ヴァージョン)


サンレモ音楽祭2022の詳細

全出場曲やアーティスト、ゲスト出演者など、詳細については筆者の公式サイトに記載があります。

(外部サイト)https://piccola-radio-italia.com/archives/52359642.html


Buon ascolto!(ブォン・アスコルト!/ 楽しんで聴いてね!)