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【ITALIANITYプレイリスト】大阪 – ミラノ姉妹都市提携40周年にファビオ・コンカート登場!

2021年、大阪市とミラノ市は姉妹都市提携40周年を迎えました。 これを記念し、ミラノ生まれでイタリアを代表するシンガーソングライターのファビオ・コンカート(Fabio Concato / 68歳)の独占ライヴが配信開始されました。 脇を固めるのは、大阪と縁が深い実力派ジャズ・トリオのパオロ・ディ・サバティーノ・トリオ。 この企画は、コロナ禍にある日伊の大商業都市が共に困難を乗り越えて、さらなる交流と友情を深め、再生に向けて一緒に頑張っていこうという思いから生まれました。

2017年、ファビオ・コンカートのもとに今回のライヴを務めるメンバーが集まり、彼のヒット曲をジャズのキーでアレンジし直した新録盤『Gigi(ジジ)』をリリースしており、今回のライヴもその路線を踏襲したものになっていますが、そのジャズ・アルバムに収録されていなかった楽曲が、今回新たにジャズ・アレンジで披露された(2曲目&6曲目)のも見どころ&聴きどころとなります。

アーティストのバイオグラフィは、配信場所となるイタリア文化会館-大阪のサイトに詳しく紹介されておりますのでご参照ください。

バンドリーダーのパオロ・ディ・サバティーノ

なお、ITALIANITYの過去記事で紹介しました、デビュー間もない頃のファビオ・コンカートがアニメ曲を歌っていた、という情報についてもバイオグラフィに盛り込んでいただきました。

公開された映像の構成

この映像は以下のような構成となっており、冒頭にミラノ市長の、最後に大阪市長のあいさつもあり、美しいミラノの街並みの映像もふんだんに挿入されており、この特別なライヴをさらに格調高いものにしています。

[プログラム]
1. ジュゼッペ・サーラ(ミラノ市長)からのメッセージ
2. ファビオ・コンカートのライヴ
3. 松井一郎(大阪市長)からのメッセージ

セットリスト & 楽曲解説

自身の最高傑作とされる84年のアルバム『Fabio Concato』収録曲がセットリストの半数を占め、残りもほぼ80年代の曲という非常に潔い選曲なのが何よりも驚きです。 21世紀の新曲もあるのに、ファンが何を求めているのか?にこれほど忖度するアーティストは珍しいと思います。

ファビオ・コンカートのスペシャル・ライヴで披露された楽曲は以下となります。

1. È festa(フェスタ /1992)
2. Guido piano(ゆっくり行こう /1984)
3. Sexy tango(セクシー・タンゴ /1984)
4. Ti ricordo ancora(想い出の君 /1984)
5. Tienimi dentro te(君の中に /1984)
6. Domenica bestiale(格別な日曜日 /1982)
7. Gigi(ジジ /1990)
8. Fiore di Maggio(5月の花 /1984)
9. Tornando a casa(帰り道 /1986)
10. Rosalina(ロザリーナ /1984)

【楽曲解説】

1. 「È festa(エ・フェスタ / フェスタ)」(1992)は、“旅”をテーマにしたアルバムの収録曲で、海に浮かんだ庭に潜んだ、歌うコオロギの視点で愛しい女性を歌っています。 “さあ、窓から見てごらん、信じられないかい? 僕はここにいるよ”

2. 「Guido piano(グイド・ピアーノ / ゆっくり行こう)」(1984)。 何も目的もなく、物思いにふけりながらゆったりとドライヴを楽しむ様子が歌われています。 ミラノは海なし地域なので、彼もこんな気分の時は海への想いに浸ります。 川に想いを馳せれば、ゆりかごの様にゆっくりと海へ運んでくれるだろう。 海が始まるところで君に会えるかもしれない、と。

3. 「Sexy tango(セクシー・タンゴ)」(1984)は、心に彗星を持った男の視点で愛しのニーナへの想いが綴られています。 “心に彗星を持つ”とは、すなわち“最接近したら遠ざかり、忘れた頃にまた接近してくる”ということ。 “昔の映画のようなセクシーなタンゴを踊ろう”とニーナを誘います。

4. 「Ti ricordo ancora(ティ・リコルド・アンコーラ / 想い出の君)」(1984)は、子供時代の友人との懐かしい想い出について歌われており、その男の子に同性愛の傾向があったことを優しい視点で描き出しています。 当時の古いタイプの先生からは理解してもらえずにひどく扱われたものの、彼が今も何も変わっていないことを願う歌となっています。

5. 「Tienimi dentro te(ティエニミ・デントロ・テ / 君の中に)」(1984)は、多忙な生活を送る中でも愛しい人のために何ができるかを考え続ける男の歌。 究極の願いとして、君の中に入って、君の目を通して世界を見てみたいと望みます。 そうしたら君の喜びも悲しみも怒りも判るのに、と。

6. 「Domenica bestiale(ドメニカ・ベスティアーレ / 格別な日曜日)」(1982)は、ファビオ・コンカートのナンバーワンのヒット曲と言って良いでしょう。 日曜日に湖畔でデートする喜びが歌われています。 普通はネガティブな意味で使われる“bestiale(野獣の・おぞましい)”という言葉をタイトルに据えているものの、ポジティブな意味を持たせています。 日本語の用例に例えるなら“ヤバイ”の感覚に近いのですが、イタリアで“bestiale”をポジティブな意味で使うことはほとんど普及していませんので、単なる流行語や現代ことばではなく、ファビオの独特の感性と言えるでしょう。

7. 「Gigi(ジジ)」(1990)は、ジャズ・ギタリストとして活躍した実父Gigi Concato(ジジ・コンカート)に捧げられた楽曲です。 イタリアにジャズを広めた第一世代であったため、イタリアのジャズメンたちにも尊敬を寄せられる存在であることが、今回のジャズ・トリオのインプロヴィゼーションがたっぷりと長いことでもうかがえると思います。 ちなみにファビオの祖父は有名なテノール歌手Nino Piccaluga(ニーノ・ピッカルーガ)で祖母もソプラノ歌手でした。 父GigiもFabio自身も本名はPiccaluga姓なのですが、なぜか二人とも祖母の旧姓Concatoを芸名に使っています。

8. 「Fiore di Maggio(フィオーレ・ディ・マッジォ / 5月の花)」(1984)は、春の陽光の温かさをたっぷり感じさせる楽曲で、ファビオの最初の娘カルロッタに捧げられた楽曲です。 ファビオが子供の頃、毎夏リミニのヴィゼルベッラで過ごし、その美しい海岸に有った四角い岩から海に飛び込んでいたそうです。 その岩の上にカモメが止まったイメージと娘の誕生のイメージが重なったことからこの楽曲が生まれたそうです。 “5月 あの岩に花が生まれた。君は空から僕らを見つけ、ゆっくりと降りて来た。 一羽のカモメがゆっくりと岩の上に置いていったのが、君だったんだ” かの地は今では観光地として大開発が行われ、ファビオが親しんだその岩ももう無くなってしまったそうです。

9. 「Tornando a casa(トルナンド・ア・カーザ / 帰り道)」(1986)は、ラッシュアワーのトラムに乗って帰宅するミラノの生活について歌われた楽曲。夢を見るのに疲れた人々ばかり。 そんな生活を避けて引っ越すにしてもどこに行けばいいか判らない、と、日本の都会生活にも通ずる現象・心象風景が歌われています。 “そんな時は目を閉じれば何をすべきかが判る。美しいことだけを考えるんだ。 君のことを考えよう。”

10. 「Rosalina(ロザリーナ)」(1984)。 ダイエットのために1日中自転車に乗っている愛しのロザリーナについて歌われています。
彼女は夜中にプチ・シュークリームを死ぬほど食べてしまう性分なので、体重90kgなのです。 でも彼はポッチャリのロザリーナが大好き!という落としどころのない面白い歌です。

ファビオ・コンカート近影

プレイリスト収録の楽曲について

無料のプレイリストには、本ライヴで披露された楽曲順に、基本的にオリジナル・ヴァージョンに次いで、ジャズ・ヴァージョンの順で並べてあります。 (Spotifyに登録が無かったヴァージョンはいずれかのヴァージョンのみ)

ライヴでは1982年から1992年までの楽曲が披露されましたが、ファビオ・コンカートは当時から凄腕のミュージシャンたちががっちりバックを務めた洗練されたサウンドでも定評がありましたので、そのオリジナル・ヴァージョンも聴きどころ満載です。

オリジナル・ヴァージョンの演奏をしているミュージシャンたちのうち、日本のイタリア音楽ファンに知られている面々には、以下のようなミュージシャンたちがいます。

Vince Tempera(ヴィンチェ・テンペラ): キーボード&ピアノ奏者・編曲家・プロデューサー。 70年代に売れっ子スタジオ・ミュージシャンたちで結成されたIl Volo(イル・ヴォーロ)のメンバーとしても有名。

Massimo Luca(マッシモ・ルーカ): ギター奏者。 時代の寵児にして、今ではイタリア人たちにとって永遠の大スターとなったルーチォ・バッティスティのバックメンバーとして著名。

Gianni Dall’Aglio(ジャンニ・ダッラーリオ): ドラム奏者。 イタリア人ドラマーの多くが、師と崇める存在で、前出のイル・ヴォーロのメンバーでもありました。

Ares Tavolazzi(アレス・タヴォラッツィ): ベース&コントラバス奏者。 特にジャズ・ロックバンドArea(アレア)のベーシストとして知られていますが、ジャズ界でも大活躍しています。

Stefano Pulga(ステーファノ・プルガ): キーボード奏者。 1970年代後半から1980年代にかけて、時代を象徴するキーボードサウンドでイタリア音楽界を牽引していたスター・ミュージシャン。

Flavio Premoli(フラヴィオ・プレモリ): キーボード奏者。 PFMのメンバーとして著名。

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