CULTURE

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京都 – フィレンツェ姉妹都市提携55周年にイレーネ・グランディ登場!

2020年9月22日、京都市とフィレンツェ市は姉妹都市提携55周年を迎えました。これを記念し、2つの姉妹都市間の友情と協力の歩みを祝い、そしてコロナ禍で大きな打撃を受けた観光都市として名高い両市の将来を祈願し、フィレンツェ出身のディーヴァIrene Grandi(イレーネ・グランディ)が “フィレンツェの音楽大使” として、スペシャル・ライヴをオンライン公開いたしました。

•企画・提供:イタリア文化会館-大阪 https://iicosaka.esteri.it/iic_osaka/ja/

•配信場所:イタリア文化会館-大阪イベントオンライン https://eventionline.net/artist_video/s160/

•配信期間:令和2年12月31日まで

公開された映像の構成

Irene Grandi 1

この映像は以下のような構成となっており、冒頭にフィレンツェ市長の、最後に京都市長のあいさつもあり、ライヴ中にはフィレンツェの街並みも挿入されており、この特別なライヴをさらに格調高いものにしています。

1. ダリオ・ナルデッラ(フィレンツェ市長)からのメッセージ

2. イレーネ・グランディのライヴ

3. 門川大作(京都市長)からのメッセージ

セットリスト & 楽曲解説

イレーネ・グランディのスペシャル・ライヴで披露された曲は以下となります。

1. La cometa di Halley (2010)

2. Alle porte del sogno (2010)

3. Se mi vuoi (1995)

4. Ballata #2 - Sacco e Vanzetti (1971)

5. Prima di partire per un lungo viaggio (2003)

6. Finalmente io (2020)

7. La tua ragazza sempre (2000)

8. Un vento senza nome (2015)

9. Lasciala andare (2005)

【楽曲解説】

1.「La cometa di Halley (ラ・コメタ・ディ・アッレイ / 意:ハレー彗星)」(2010)は、サンレモ音楽祭2010出場曲で、ヒットチャート7位のヒットソング。ポップロック・グループBaustelle(バウステッレ)のフロントマンで、他のアーティストにもたくさん楽曲を提供するFrancesco Bianconi(フランチェスコ・ビアンコ―ニ)作品。実はビートルズへのオマージュ作品で、それが判るのはエンディングのCメロ部分;”io ti dico addio, tu mi dici ciao(イォ・ティ・ディーコ・アッディオ、トゥ・ミ・ディーチ・チャオ)” というイタリア語詞が歌われているから。これはビートルズの楽曲「ハロー・グッドバイ(Hello, goodbye)」(1967)のサビ “you say goodbye, and I say hello” のイタリア語訳なのです。サンレモ音楽祭で披露された「La cometa di Halley」はイタリア語詞だけで歌われていますが、本ライヴではその隠された意味が日本人にも判りやすいようにと、ビートルズのオリジナル英語詞が繰り返し強調して歌われています。
※プレイリストに入れた新録の同曲では最後につぶやくようにキーワードとなる英語詞が入っているのみです。

2.「Alle porte del sogno (アッレ・ポルテ・デル・ソーニョ / 意:夢の扉で)」(2010)は、ちょうど前出のサンレモ曲に続いて同年シングル化された楽曲で、アルバムタイトル曲でもあります。原曲はイレーネのソロ曲ですが、プレイリストに入れた2019年の新録版では、Carmen Consoli(カルメン・コンソリ)を迎えたデュエットとなっており、それに準じているのでしょうか?本ライヴではカルメンがリードをとる2番の歌詞部分を割愛したパフォーマンスとなっています。

3.「Se mi vuoi(セ・ミ・ヴォイ / 意:もし私が欲しいなら)」 (1995)は、イレーネがまだ駆け出しだった頃、実力派シンガーソングライターPino Daniele(ピーノ・ダニエレ)に呼ばれてデュエットした作品。ピーノは当時既に国際的な活動をしていた成功者で、後にイタリア音楽界の重鎮と目されるようになったため、イレーネにとっては大きなチャンスとなりました。ピーノは2015年に59歳という若さで急逝したため、このライヴ・パフォーマンス中のイレーネの脳裏にはこの大恩人への想いが浮かんでいることでしょう。

4.「Ballata #2 – Sacco e Vanzetti(バッラータ・ヌメロ・ドゥエ=サッコ・エ・ヴァンゼッティ)」 は、ライヴ中でイレーネが語っている通り、2020年に亡くなったばかりのEnnio Morricone(エンニオ・モリコーネ)を追悼して歌っており、このカヴァーは音源化されていないため、貴重なテイクとなります。
同曲は映画『死刑台のメロディ』(1971/伊仏合作)のサントラ曲で、オリジナル歌手はJoan Baez(ジョーン・バエズ / アメリカ歌手)。
同映画はノンフィクションで、1920年に実際に発生したアメリカ史の汚点と言われるサッコ・ヴァンゼッティ事件を描いています。イタリア系移民のサッコとヴァンゼッティが無実の罪で死刑に処された冤罪事件を通して、当時、白人社会の中にさえ差別が存在し、イタリア系移民が下層におかれていた事実が窺い知ることができます。
この作品はイタリア映画界で最も権威あるナストロ・ダルジェント(銀のリボン)賞3冠(主役・女優・音楽)に輝くイタリア映画史にとっても重要な作品となりました。余談ではありますが、その最優秀女優賞に輝いたサッコの妻ローザ役のRosanna Fratello(ロザンナ・フラテッロ)は、当時のイタリアのスター歌手でもありました。

5.「Prima di partire per un lungo viaggio(プリマ・ディ・パルティーレ・ペル・ウン・ルンゴ・ヴィァッジォ / 意: 長い旅に出発する前に)」 (2003) は、イタリアのロック王たるVasco Rossi(ヴァスコ・ロッシ)と故Lucio Dalla(ルーチョ・ダッラ)のバックバンドのメンバーらで結成されたStadio(スターディオ)のフロントマンGaetano Curreri(ガエターノ・クッレリ)らから提供された楽曲。

6.「Finalmente io(フィナルメンテ・イオ / 意:とうとう私は」 (2020)は、2月に開催されたサンレモ2020に出場したばかりで、これもヴァスコ・ロッシが書き下ろし作品。音楽と自由への愛をテーマに、不安や困難に乗り越えていくことを歌っています。コロナ禍の直前に作られた楽曲にも関わらず、その直後に世界中を飲み込んだ事態を予測していたかのような歌詞で、今になって改めて聴きなおす意味がある曲になったかもしれません。

7.「La tua ragazza sempre(ラ・トゥア・ラガッツァ・センプレ / 意:ずっとあなたのカノジョ)」(2000)は、サンレモ音楽祭2000で2位と、イレーネの6回のサンレモ出場歴の中で最高位を記録した楽曲で、これもヴァスコ&クッレリの共作。ヒットチャートでも4位まで登り、イレーネの代表曲のひとつと言って良いでしょう。本ライヴでは直前の曲のMCでイレーネはヴァスコ・ロッシに言及していますが、実は3曲続けてヴァスコ作品なのです。
そして本ライヴではなんといっても原曲に無い、ボトルネック奏法によるギターのエキサイティングな間奏が見どころ&聴きどころ。ギタリストを務めているのは、実はソングライター&プロデューサーとしても著名なSaverio Lanza(サヴェリオ・ランツァ)というのもツウには見どころのひとつ。彼は同ライヴで音楽監督も務めています。

8.「Un vento senza nome(ウン・ヴェント・センツァ・ノーメ / 意:名も無き風)」(2015)は、サンレモ2015出場曲。自分の力でページをめくる勇気を持ち、新しい境地を切り開いて行く女性への賛歌となっています。原曲は日本でも著名なジャズ系作曲家&ピアニストのStefano Bollani(ステファノ・ボラーニ)が弾くピアノがフィーチャーされていますので、本ライヴでもサヴェリオ・ランツァがキーボードに徹して演奏しています。
ちなみに2013年にボラーニが来日した際、筆者はインタビューをしたのですが、そこで語ってくれた驚愕の事実がいくつか。ステファノ・ボラーニとイレーネは幼なじみで、一緒にバンドを組んでいたこともある間柄であり、いつか彼らの2人のデュオ・アルバムを作ることを夢みていました。そこでレコード会社には内緒で共演&録音を始めたそうです。やってみてダメならお蔵入りさせる逃げ道を作っておきたかったようで。ところが実際やってみたら、楽しくてしかたなく、自信作になったので、晴れて「Irene Grandi & Stefano Bollani」(2012)として発売することにした、と打ち明けてくれました。
※イレーネ・グランディ自身は2005年11月に在日イタリア商工会議所主催ガラパーティのスペシャルゲストとして来日公演を果たしています。

9.「Lasciala andare(ラッシャラ・アンダーレ / 意:彼女を行かせてあげて)」 (2005)は、ヒットチャート2位まで登ったイレーネの大ヒット曲のひとつ。ギリシャの女性歌手Eleonora Zouganeli(エレオノーラ・ゾウガネリ)のカヴァーにより、ギリシャおよびその周辺国でも成功を収めています。タイトルにある “彼女”とは歌詞の中で彗星を指しています(※彗星のイタリア語は女性名詞ですので)。既知の彗星でさえ人智では制御もできず、予測不能な存在。でも彗星の意のままに進ませてあげようと歌っています。彗星に例えられているのは、身近にいる人のことかもしれません。
このライヴでは彗星に始まり彗星の曲で終わるという構成も見事です。

Irena Grandi & Band

京都-フィレンツェの両市に存在するピノッキオ像

2015年の姉妹都市提携50周年記念の節目に両市のライオンズクラブからピノッキオ像が両市に寄贈されました。京都では宝ヶ池公園に設置されています。そう、世界中で有名な児童文学『ピノッキオの冒険』は、フィレンツェ出身の作家Carlo Collodi(カルロ・コッローディ)が書き、フィレンツェで1883年に初出版された作品なのです。

宝ヶ池公園(京都)ピノッキオ像

フィレンツェ市と京都市(宝ヶ池公園)にあるピノッキオ像(京都紫明ライオンズクラブ・フィレンツェライオンズクラブ寄贈)

出典:京都市情報館

 

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