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J-POPを歌うイタリア人バンドKODAMAの日本愛

大矢 麻里 Mari Oya

2026.03.05

イタリア北部、アルプスの稜線を望む静かな町から、日本のポップミュージックへの熱烈なラブレターが届きました。その送り主は、イタリア人5人組のバンド「KODAMA」。流暢な日本語でJ-POPを歌い上げる彼らは、いま日本のリスナーからも注目を集めています。リードするキアラさんとダヴィデさんに、バンド誕生の背景とJ-POPへの情熱について語ってもらいました。



10年来の絆と、挑戦の始まり

著者とKODAMAとの出会いは、YouTubeで偶然目にしたライブ演奏でした。あまりにも自然な日本語の発音に、最初はイタリア人バンドだとは気づかなかったほどです。しかし、女性ボーカルの艶やかで安定感のある低音と、それを包み込むグルーブ感あふれるバックサウンドに、心を奪われるまで時間はかかりませんでした。彼らが奏でる藤井風や米津玄師のカバーは、単なる「歌ってみた」の枠を超え、独自の世界観を感じさせる完成度の高いものだったのです。



Q: バンド結成のきっかけを教えてください。

A: すべては2024年、藤井風の楽曲「死ぬのがいいわ」に出会った瞬間に始まりました。彼の音楽には一瞬で心をつかむ圧倒的な魅力がありました。同時に、それまで私たちが演奏してきたイタリアのポップスとはまったく異なるものでした。私たちは各自プロ音楽家として活動してきましたが、J-POPに本格的に挑戦した人は誰もいませんでした。だからこそ「自分たちを試してみたい」とKODAMA結成に至りました。


QそうしてYouTubeで配信したのが初ライブの映像ですね。

A: 2024年の夏に練習を開始し、1年以上準備に費やしました。実は会場にしたのは、私たちの自宅の庭なのです。メンバー全員が拠点するピエモンテ州のヴェルバーノ・クジオ・オッソラ県は、緑豊かな山の地域です。森の精霊を意味する「KODAMA(木霊)」という名は、故郷の自然と日本文化へのオマージュです。


KODAMAの初ライヴ
2025年8月5日に開催した初ライブでは全11曲を披露しました
(写真提供:KODAMA 以下同)

Qメンバーとバックグラウンドを教えてください

キアラ(ボーカル/キーボード)、ダヴィデ(キーボード/音楽制作・編曲)、ルカ(ギター)、ミケーレ(ベース)、マッテオ(ドラム)の5人です。それぞれ音楽院などでジャズやポップ・ロックを専門に学びました。普段はライブ活動や音楽講師を主な仕事としています。私たちは10年来のつき合いがあるおかげで、バンドメンバーを超えて家族のような絆で結ばれています。

KODAMAのメンバー
ダヴィデ、キアラ(前列左から) ルカ、マッテオ、ミケーレ(後列左から)

J-POPの「美しき複雑さ」

Q: 日本の音楽情報はSpotify、YouTube、Instagramなどから得ていると聞きました。そうしたなかで、2人の日本人アーティストの楽曲を選んだ理由は?

A: 藤井風は高度なピアノテクニックや歌唱力はもちろん、その甘く洗練されたメロディに惹かれました。東洋と西洋の響きをユニークにミックスした複雑な和音はアメリカの音楽も彷彿とさせ、私たちのプロジェクトを象徴するアーティストだと信じています。


米津玄師には、狂気的で天才的な創造性を感じます。私たちが普段聴き慣れているものとは一線を画す複雑で凝ったアレンジもあれば、シンプルで親密ながらも細部へのこだわりを失っていないものもあり、いずれにも魅了されます。彼を知ったのはアニメ『チェンソーマン』のオープニング主題歌「KICK BACK」がきっかけです。最近ではKing Gnuの楽曲にも非常に興味を持っているところです。


KODAMAのキーボード、ダヴィデ・マイオッキ
ダヴィデ・マイオッキ。ミラノのCPM音楽学校で音楽制作と編曲を専攻。個人YouTubeチャンネル「Dadebrayant」ではロックやメタル、アニメのヒット曲カバーなどを演奏しています
KODAMAのギタリストルカ・ピオラ
ルカ・ピオラ。パルマのアッリーゴ・ボーイト音楽院でポップ/ロックギターを専攻。原曲にギターがない場合はアレンジを加えています

Q: イタリアのポップスと比べて、J-POPの特徴は?

A: イタリアでポップスには明快でシンプルな和音構成が好まれます。しかし、J-POPはハーモニーが驚くほど複雑、かつ密度が高い構成です。歌唱面では、それ以上に大きな違いを感じます。日本のメロディーは耳馴染みが良くキャッチーですが、複雑なリズムの取り回しや、凝った音程の運びが多用されているため、いざ演奏するとなると直感的に歌うことは困難でした。これまで歌い慣れてきたものとは全く異なるものだったのです。


Q: 原曲へのリスペクトと個性のバランスはどうとっていますか

A: アレンジはまずはヴォーカリストの声に最適なキーを決めてから、メンバーが自分のパートを書き起こしています。ライブでは演奏不可能なコーラスやサウンドのディテールの制作・録音は二人で担当します。キーを変更することで和音の配置や音色を変えざるを得ない場合もありますが、本質を壊さないことを何より大切にしています。

KODAMAのベーシスト、ミケーレ・グァーリオ
ミケーレ・グァーリオ。コモの音楽院でジャズ/エレクトリックベースを専攻。地元の音楽業界で常にリーダー的な存在であり、メンバーからも尊敬されています
KODAMAのドラマー、マッテオ・フラッティマ
マッテオ・フラッティマ。ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院でジャズドラムおよびポップ/ロックドラムを専攻。藤井風の楽曲では、創造性あふれるドラミングで世界観をより豊かにしています

言葉を超えた共鳴

多くの日本人リスナーを驚かせているのが、キアラさんの完璧に近い日本語発音です。しかし驚くべきことに、プロジェクト開始当初、彼女は日本語の知識が全くなかったといいます。


Qキアラさんは日本語で歌うために、どのような努力を?

A: 幼い頃からアニメを日本語で見ていたので、音の響きには親しみがありました。イタリア語と日本語は母音や子音の発音が似ているのは助かりました。ただし、実際に歌うとなると話は別です。歌詞をローマ字に書き起こし、言葉の区切りを学び、原曲を何百回と聴いて徹底的に模倣しました。日本語学習は困難ですが、日本の皆さんからの前向きなフィードバックが励みとなり、本格的に勉強を始めたところです。


Qキアラさんが日本語の歌を表現するうえで心がけていることは?

A: 何よりも翻訳した歌詞の意味を深く理解することです。そのうえで原曲の解釈を尊重しつつ、自分の感性と融合させています。これまでも母国語以外の曲を歌うことは自分に合っていると感じてきましたが、日本語には特に親しみを感じています。私にとって幼い頃から歌うことは生活の一部でした。ここ数年は個人指導のもとで専門的なボーカルトレーニングを重ねています。


KODAMAのヴォーカル&キーボード、キアラ・フェラリス
キアラ・フェラリス。ダヴィデと同じCPM音楽学校でピアノとポップ/ロック・キーボードを専攻。鍵盤の名手であるとともに、ボーカリストとしても圧巻の存在感を放っています

忘れられない初来日

2026年1月、キアラさんとダヴィデさんは初めてプライベートで日本を訪れました。大阪、東京、奈良、京都そして広島を巡る16日間は、かけがえのない体験だったといいます。


Q: 日本の印象は?

A: どこを訪ねても人々の礼儀正しさと親切さに感動しました。もうひとつ印象的だったのは「現代性と伝統の調和」です。たとえば、渋谷、秋葉原、新宿などでは圧倒的ともいえる活気と喧騒に包まれます。かと思うと、鎌倉の円覚寺のように自然と静寂に包まれた精神的な空間に身を置くことができました。


Q: 日本のファンとの交流について教えてください。

A: SNSの呼びかけを通じて東京・豊洲でファンの皆さんとお会いできました。地球の裏側に私たちを応援してくれている人がいたのです。信じられないほどの温かい愛情とともにプレゼントもたくさんいただいて、帰りにスーツケースを買い足したほどです(笑)。


日本のファンと交流したKODAMAのメンバー
豊洲散歩。ファンの皆さんとの出会いは忘れられない思い出に

イタリアの小さな町から、日本へ

現在、KODAMAは新たなYouTube用のカバー曲を制作中です。2026年中のイタリア国内ライブの準備も進めています。


Q: 最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

A: いつも温かい応援をありがとうございます。愛あるコメントに触れるたびに大きな力をもらっています。これからも多くの動画を通じて、そしていつの日か、日本公演で皆さんに会えることを願っています。


ライヴでファンに感謝するKODAMA
心からの感謝を込めて! キアラ、ダヴィデ、ルカ、ミケーレ、マッテオ

かくもKODAMAの音楽は、J-POPへの愛情と探究心、そしてミュージシャンとしての確かな実力によって支えられていました。ピエモンテの山で発せられた彼らのこだまが、日本のライブハウスでも響きわたる日を願ってBuona Fortuna!(グッドラック!)


Instagram(@ kodama_jpm)

https://www.instagram.com/kodama_jpm

KODAMAの故郷ドモドッソラ
ピエモンテ州ヴェルバーノ・クジオ・オッソラ県ドモドッソラの佳景。スイス国境を望むアルプス山脈の南麓に位置します