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MUSIC 15 Jul 2020

Spotifyで「絶対聞きたいイタリア夏の音楽」プレイリスト配信開始!


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È estate! 夏コンピレーション

イタリアの夏の過ごし方の特徴

社会人になっても1~2か月間も夏休みを取るイタリア。そんなイタリアの夏の風物詩は日本とはかなり違っています。

子供たちを連れて田舎に里帰りし、三世代以上に渡る人的交流が長い夏休みの大半を占めることも多いので、世代を超えて楽しめる娯楽が必然となります。そのひとつが音楽がであることは間違いないでしょう。日本でも昭和の時代に存在していたような“世代を超えて愛される歌”がイタリアには現在も脈々と存在しています。

もちろん新しい夏のヒットを狙った曲も、毎年春先頃から仕込まれ始めます。そして毎夏が終わる頃、“今年のTormentone(トルメントーネ)は…”という話題も良く出ます。トルメントーネとは、元来の意味はネガティヴで“苦痛を感じるほどやかましい”なのですが、転じて夏の間ヘヴィロテでかけられた楽曲を意味します。こうして夏のヒット曲は毎年どんどん増えていきます。

それでも何十年経っても人々の記憶から消えずにエヴァ―グリーンの地位を獲得していく楽曲群があり、毎夏のようにリリースされる“夏休み向け音楽集”のコンピレーションCDの収録曲の中には、50年も前の“夏の定番ヒット曲群”も普通に入れられているのです。

注:例年のイタリアの夏の情景をご紹介していますが、2020年の夏は世界的なコロナ禍の後、あるいは最中となり、状況が変動することが予想されます。

イタリアの夏のエヴァ―グリーン・ヒット曲

Adriano Celentano(アドリァーノ・チェレンターノ)の「Azzurro(アッズーロ/意:空色)」は1968年のヒット曲ですが、イタリア人なら誰でも歌える曲として有名で、その証拠にスポーツの分野ではイタリアのナショナルチームのイメージカラーにもなり、応援歌として、まるで国歌のような存在です。歌詞中に歌われているのは、不覚にも夏に都市部に取り残されてしまった男の焦燥です。カノジョは海辺の避暑地に行ってしまった…ココにはもうおしゃべり相手をしてくれる神父さまさえいない(司祭も避暑に行ってしまうのでしょう)・・・真夏に避暑地に行けない、ということがイタリア人にとってどれだけの死活問題なのかをうかがい知れる楽曲です。

Azzurroカバージャケット

Edoardo Vianello(エドアルド・ヴィアネッロ)の「Abbronzattissima(アッブロンザッティッシマ/意:日焼けした女性)」(1963)、Los Marcellos Ferial(ロス・マルチェッロス・フェリアル)の「Sei diventata nera(セイ・ディヴェンタータ・ネーラ/意:君は黒くなった)」(1964)は、真っ黒に日焼けした女性の美しさを褒め称える歌。50年以上に渡ってこの曲が歌い継がれて来たことは、イタリア人の日焼け信仰と表裏一体となっています。過度の日焼けは皮膚のトラブルの元となる、という学説がどれだけ蔓延しようとも、多くのイタリア人たちは今でも夏になると老若男女とも熱心に日焼けをしたがります。日焼け=健康的=ヴァカンスに行けるだけの経済力はある、という構図のようです。

Sei diventata NERAカバージャケット

現在でも7月になると必ずラジオ局から流れるのはRiccardo Del Turco(リッカルド・デル・トゥルコ)の「Luglio(ルーリォ/意:7月)」(1968)。7月が来て、終わらない夏が始まるはずだったのに、姿を消したカノジョ。君が来ないと僕の心はまるで11月のように冷たくなってしまう…と明るくキャッチ―なメロディーなのに絶望的な心象風景が歌われていく。歌の後半になってようやく姿を現すカノジョ、というハッピーエンドの曲。主人公が待ちわびているのはイタリア語の文法上でも明らかに女性なのですが、太陽(男性名詞ですが)なのかも。冷夏の夏にぴったりの曲かもしれませんね。

60年代からトップスターであり続ける国民的アイドルGianni Morandi(ジャンニ・モランディ)の「Notte di Ferragosto(ノッテ・ディ・フェッラゴスト/意:フェッラゴストの夜)」(1966)。フェッラゴストとは、カトリックの教義である聖母被昇天のことで、毎年8月15日の祝日です。イタリアでは昼食をたらふく食べ、海や山に清涼を求めて出かける風習が根強く存在しています。その誰もが浮かれた気分になっているフェッラゴストの夜、愛しの女性は他の男を腕に抱いている…という片思いの青年の心の叫びを歌い、母性本能の強いイタリアの女性たちの心を鷲づかみにしました。

Un’estate fa(ウネスターテ・ファ/意:ひと夏前)」(1972)は、日本ではサーカスが日本語でカヴァーした「Mr.サマータイム」(1978)が大ヒットしているので、耳馴染みがあるはずの1曲です。原曲はフランス語曲ですが、隣接国イタリアではすぐにイタリア語詞が作られ、後にサンレモ音楽祭初のロックバンド優勝者となるHomo Sapiens(ホモ・サピエンス)が最初にカヴァーしました。プレイリストには、イタリア語詞を書いたFranco Califano(フランコ・カリファーノ)のヴァージョンを入れましたが、その後もイタリアでも様々な歌手がカヴァーし続けています。

Un estateカバージャケット

イタリアのフォーク/ロック界の兄貴分Edoardo Bennato(エドアルド・ベンナート)と、イタリアのロック女王Giannna Nannini(ジャンナ・ナンニーニ)がタッグを組んだ「Un’estate italiana(ウネスターテ・イタリアーナ/意:イタリアのひと夏)」(1989)は、1990年にイタリアで開催されたサッカーのワールドカップ大会用に作られた楽曲で、世界で大成したイタリア人プロデューサーGiorgio Moroder(ジョルジオ・モロダー/ドナ・サマーらのプロデュース、映画『フラッシュダンス』、『トップガン』の音楽作曲)が作曲しています。

イタリアの夏のヒット曲21世紀編

前出の通り、毎年夏のヒット曲が生まれるイタリア。まだ歴史の浅い21世紀に生まれた楽曲の中にも、後世にまで残っていくと予想される楽曲があります。

前出のエドアルド・ベンナートがAlex Britti(アレックス・ブリッティ)と組んで「Notte di mezza estate(ノッテ・ディ・メッザ・エスターテ/意:真夏の夜)」(2006)や、Negramaro(ネグラマーロ)が歌う「Estate(エスターテ/意:夏)」(2005年)が大ヒットして21世紀の夏の定番曲のひとつとなりました。

Notte di Mezza Estateカバージャケット

Jovanotti(ジョヴァノッティ)はイタリア語ラップの始祖と称される人気歌手。1980年代にイタリア語でラップを始めて人気を博し、ラップ界の神のような存在に上り詰めるも、次第にメロディを歌うようにもなり、メロディを歌う歌手としても大成しました。現在、連日のスタジアム公演も瞬時にソールドアウトとなるようなスーパースターのひとりです。「L’estate addosso(レスターテ・アッドッソ/意:夏を背負って)」(2015)は翌年、名匠Gabriele Muccino(ガブリエレ・ムッチーノ)監督の同名の映画の主題歌となりました。

L'estate Addossoカバージャケット

Laura Pausini(ラウラ・パウジーニ)の「E.sta.a.te(エ・スタ・ア・テ)」(2018)。90年代にデビューすると瞬く間にイタリアを代表する国際的スターに成長し、イタリア女性初のグラミー賞受賞に加え、ラテングラミー賞を4度も受賞するほどです。同曲はタレント発掘番組出身のシンガーソングライターVirginio(ヴィルジーニオ)が書き下ろした楽曲で、「Estate(夏)」をモジって「E sta a te(そしてあなたのところにいる)」の2つの意味をかけた新しい夏のヒット曲のひとつとなりました。

異色のイタリアの夏の楽曲

Bruno Martino(ブルーノ・マルティーニ)が自作して歌った「Estate(エスターテ/意:夏)」(1960)は、ブラジルのボサノヴァの神João Gilberto(ジョアン・ジルベルト)がイタリア語歌詞のままカヴァーして歌ったことで、世界中に知られるようになり、今ではボサノヴァの定番曲ともなっていますが、通常はポルトガル語詞のボサノヴァの中で、この曲に限りイタリア語で歌うのがお約束となっています。

この曲と同様に、夏の定番曲なのにブルージーな雰囲気の楽曲があるのもイタリアの特徴のひとつです。Sergio Endrigo(セルジョ・エンドリゴ)の「Era d’estate(エラ・デスターテ/意:夏だった)」(1963)もそのひとつ。夏の終わりや秋になってから真夏を振り返って懐かしむ、後悔の念を含んだ楽曲と言えるでしょう。

一方、晩夏をテーマにしながらも能天気な明るさと派手なパフォーマンスで大ヒットしたのがRigheira(リゲイラ)の「L’estate sta finendo(レスターテ・スタ・フィネンド/意:夏が終わろうとしている)」(1985)は80年代のイタリアを代表するヒット曲とも考えられます。

Areaカバージャケット

 プレイリスト中、おそらく最も異色となる楽曲はArea(アレア)の「Luglio, Agosto, Settembre [Nero](ルーリォ、アゴスト、セッテンブレ [ネロ](意:7月、8月、9月[黒])」(1973)でしょう。アラビア語の女性ナレーションで始まり、強力なリズムセクションと印象的なリフの応酬で作られるサウンド。中近東的な音色で奏でられる楽器群。当時のイタリアで提唱されつつあった”地中海音楽”的なアプローチで作られた楽曲です。イタリアは地中海の真ん中に位置し、対岸のアフリカや東側のバルカン半島や中東からも大きな影響を受けて独特の文化を形成してきた背景を具現化するサウンドです。伝説のヴォーカリスト故Demetrio Stratos(デメトリオ・ストラトス)が在籍していたジャズ・ロック・グループで、彼は声を「無限の可能性を持つ楽器」と捉え、様々な発声法を編み出し、とうとうポリフォニー発声(独りで同時に2音以上の音を出す)による歌唱までするようになりました。

このプレイリストはイタリアの夏のヒット曲のほんの一部にしか過ぎませんが、日本でもイタリアスタイルの夏の過ごし方を取り入れたり、イタリアの夏の気分に浸りたい時にはぜひ、このプレイリストを活用していただければと思います。

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WRITER PROFILE
よしお アントニオ
よしお アントニオ

音楽ジャーナリスト。イタリア音楽専門誌『MusicaVita Italia(ムジカヴィータ イタリア)』 http://musicavitaitalia.com/ 編集人。 イタリア音楽普及促進グループPiccola RADIO-ITALIA(ピッコラ・ラディオ・イタリア) http://piccola-radio-italia.com 主宰。 毎月開催のイタリアPOPSフェスタも15年を超えている。イタリアン・ポップス出版物(CD等)の歌詞監修・対訳多数。日本の伝統も重んじる剣道家(四段)でもあり、少年剣道教室の指導役も務めている。