Copy link
bookmarked-checked-image

ジャズ・ピアニスト 西山瞳がイタリア音楽を深掘り!⑥スタンダード・ジャズの巨匠ダド・モロニ

Hitomi Nishiyama

2025.08.25

ヘヴィメタルをカヴァーしたシリーズも話題のジャズ・ピアニスト 西山瞳が、イタリア音楽を深掘りする大好評連載。今回は、イタリアを代表するジャズ・ピアニスト「Dado Moroni ダド・モロニ」について語ります。



ジャズピアノの歴史を体現するピアニスト

イタリアのジャズピアニスト、ダド・モロニDado Moroni。
この名前でアルバムを探すと、確実に、最高のスタンダード・ジャズの演奏に出会えます。


イタリアを代表するジャズ・ピアニストの一人で、スタンダードを中心に演奏し、アーリー・ジャズからビバップ、コンテンポラリーまで造詣が深く、ジャズピアノの歴史を一人で体現しているようなピアニストです。しっかり体重の乗った煌びやかな音色、そのブリリアントでゴージャスな音色で、様々な歴史的ジャズスタイルを踏襲したジャズ絵巻のような演奏が繰り広げられます。とても豊かな気分になれるので、ぜひ聴いて頂きたいです。

長らく国際的に活躍し、世界各国のジャズフェスティバルやクラブに登場、アメリカのジャズ・レジェンズからも信頼の厚いピアニストです。


1962年、ジェノバで生まれたダド・モロニは、4歳でピアノを始め、独学でファッツ・ウォーラーやアート・テイタムなどのジャズピアノの巨人の演奏を耳で覚え、14歳からプロとしてイタリア国内で演奏を始めます。


1979年、17歳の時にスイスのトランペット奏者フランコ・アンブロセッティに出会い、国際的なステージに立つようになりました。
その後、ニールス・ペデルセン(ベース)、ロン・カーター(ベース)、レイ・ブラウン(ベース)、レッド・ミッチェル(ベース)、トム・ハレル(トランペット)との共演など、ジャズ・ジャイアンツとの共演は枚挙にいとまがなく、ビバップと伝統に根差したピアニズムは、日本のジャズファンにもよく知られています。


私は、2000年頃にディスクガイド本で紹介されていた、1980年『Jazz Piano』というアルバムに興味を持って探し始めたのが出会いでした。スタンダード曲のアルバムですが、1曲目からスインギーなプレイ。しかし、どこかからっとした明るさがあり、爽快感のあるアルバムです。アルバム全体が、伝統的なジャズピアノに根ざしながらもパワー一辺倒にならず、静かな局面で見せる品の良い音色も印象的でした。



レイ・ブラウンとの共演も圧巻

ジャズ・ベースの巨人、レイ・ブラウンとの共演は、1988年『Two Bass Hits』で聴くことができます。コントラバス2本とピアノという、珍しい編成のアルバムです。レイ・ブラウンの弟子であるフランスのベーシスト、ピエール・ブサゲが右チャンネル、レイ・ブラウンが左チャンネル。録音のピアノの音も非常に良く、鮮やかなジャズピアノが聴けます。



もう一枚、レイ・ブラウンとの録音としては、1995年『Some Of My Best Friends Are…The Piano Players』があり、こちらはレジェンド中のレジェンド、オスカー・ピーターソン、アーマッド・ジャマル等と並んでの参加。ジャズスタンダード「Giant Steps」、「My Romance」を演奏しており、特に「My Romance」はリズムセクションとのコンビネーションも抜群。スタイリッシュでコンパクトに決めており、快演です。



コンテンポラリーからスティーヴィー・ワンダーまで

日本には、1995年にマウント・フジ・ジャズフェスティバルでの来日や、2005年の「100 Gold Fingers」でも来日。この「100 Gold Fingers」コンサートシリーズは、ジャズピアノの歴史を作った超一流のピアニスト10人が一堂に会するコンサートで毎年開催されていたのですが、アメリカのピアニスト以外での参加は非常に珍しく、その実力が高く買われていたことが伺えます。


また、オーセンティックなジャズのイメージの強いダド・モロニですが、イタリアのサックス奏者ロザリオ・ジュリアーニとの共演では、ジュリアーニの作曲でコンテンポラリー寄りの演奏を聞かせてくれます。これがまた素晴らしくエネルギッシュ。



管楽器奏者との共演としては、イタリアのサックス奏者マックス・イオナータとの『Two for Stevie』はジャズを初めて聴く方にもお薦め。スティーヴィー・ワンダーの名曲を中心にデュオで演奏しており、とても素晴らしい作品です。


皆さんよくご存知の「Isn’t She Lovely」、「Don’t You Worry About A Thing」、「Overjoyed」など、素敵なアレンジと温かくスモーキーなサックスで奏でられ、ジャズを長く聴いている方にも聴きごたえ十分の、大変充実しつつもポップな作品になっています。ダド・モロニは、「Have a Talk with God」ではウッドベースも演奏しています。



イタリア文化会館でのエキサイティングなライヴ

2014年には、このマックス・イオナータとデュオで来日。イタリア文化会館アニェッリホールでのコンサートには私も行きましたが、ピアノは非常によく鳴るし、素晴らしいテクニックであることに加え、曲間には沢山楽しくお話しになり、ベースも弾き、歌ったりもして、ファンサービス満点。大変なエンターテイナーぶりに驚いたのでした。アルバムを聴いていただけだったので、実際にパフォーマンスを見て、こんなにエネルギーに満ち溢れた方だったのだと驚きました。


終演後に楽屋でご挨拶したのですが、近くで見ると大きな体格で、これは良い音がするなあと思いましたよ。がっしりとした体格にぴったり合ったスーツ姿がとても格好良く、眼鏡をアクセントにされていて、とってもお洒落でした。
とても素晴らしいコンサート体験でしたので、また機会があれば、ぜひ生で聴きたいです。


最後に、イタリア最大のジャズフェスティバル、ウンブリア・ジャズフェスティバルでのライブ模様をご紹介します。また来日してくれることを願っています。



Dado Moroni公式サイト https://dadomoronijazz.com/


西山瞳のソロアルバムのジャケット

Songs / Hitomi Nishiyama 3,520

西山瞳初期のオリジナル曲を、ピアノソロで収録した「Songs ソングス」。秘めやかに紡がれる、珠玉のピアノ・コレクションが10月1日に発売されます。ライヴでは先行発売しているので、一日でも早く聴きたい方はライヴへ。


西山瞳 公式サイト https://hitominishiyama.net/


◼️おすすめ関連記事
ジャズ・ピアニスト 西山瞳がイタリア音楽を深掘り!④ついに登場!ロックスター マネスキン


ジャズ・ピアニスト 西山瞳がイタリア音楽を深掘り!③ジブリソングも話題のミラバッシが熱い!


ジャズ・ピアニスト 西山瞳がイタリア音楽を深掘り②日本でも人気のアレッサンドロ・ガラティに迫る!


ジャズ・ピアニスト 西山瞳がイタリア音楽を深掘り①巨匠エンリコ・ピエラヌンツィを語る