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ラウラ・ルケッティ監督に単独インタビュー!「美しい夏」8月1日公開 ②

Keiko Shimada

2025.07.18

20世紀のイタリアを代表する文豪パヴェーゼの名作を、期待の若手俳優を主演に迎えて映画化した『美しい夏』。昨日に続いてお届けするラウラ・ルケッティ監督への単独インタビューでは、この珠玉の作品を通じて、監督が私たちに伝えたかったことに迫ります。



イタリアを代表する文学の美しい映像化

1938年、田舎からトリノに出て、お針子として洋裁店で働く16歳の少女ジーニアは、3つ年上の美しく自由なアメーリアと出会う。画家のモデルとして生計を立てる彼女によって芸術家たちが集う新たな世界への扉を開かれ、ジーニアは大人の階段を上り始める。

©2023 Kino Produzioni,9.99Films


歴史を物語るトリノの街も主役

ジーニアとアメーリアが一緒に歩いていた「ポルティコ」と呼ばれるアーチ状のアーケード。ITALIANITY読者にとって、映画のロケ地も気になるところです。物語の舞台は1938年のイタリア・トリノで、映画もトリノとその近郊、すべてピエモンテ州で撮影されました。


「古い建造物が多く残るトリノは、1930年代の雰囲気が出せるロケ地がたくさんありました」と監督が語るように、スクリーンに映し出されるトリノの街も、この映画の魅力のひとつです。

「ポルティコ」のあるトリノの旧市街
「ポルティコ」と呼ばれるアーケードが数多くあるトリノ旧市街

筆者の印象に残ったのは、ジーニアが勤める洋裁店の外観。大好きな仕事を任され、張り切って通勤していくジーニア。新しい出会いを経て知らなかった世界への関心が高まり、仕事が疎かになって遅刻を繰り返す彼女。一度解雇され、失意の後に一からやり直す厳しい冬。すべてのジーニアがガラスに映し出され、その変化が映像で表現されていました。


「あの洋裁店は外観と内側で違う建物が使われていますが、外観は軍の病院だった建物なんです。私が気に入って使いたいと言ったとき、建築家でもある美術担当者は『病院だとわかってしまう』と言って反対して、ケンカになったほどでした。でも、私はどうしてもガラスと金属の建物、ジーニアが息せき切って走って、それがガラス越しに見えるようなところを撮りたいって言ったんです。結果的にはすごくいい絵が撮れて、美術担当者も気に入ってくれました」。

洋裁店で客にドレスを見せるシーン
ジーニアが勤める洋裁店の内部もエレガント

官能的な女性ふたりのダンスシーン

「画家のグィードと初めて結ばれるシーンよりも、ジーニアとアメーリア、女性ふたりのダンスシーンのほうがエロスを感じた」と筆者が問いかけると、「そう!そうなんです。それに気づいてくれて、とってもうれしい!」と喜んでくださった監督。

「ジーニアが初めて男性と愛を交わすシーンは、決してすばらしいものではなかった。彼女はあのとき、『私が生きたいのは、ここじゃない』とわかったシーンです」。


対照的に、ジーニアとアメーリアが踊るシーンは、映画であるのに触覚や吐息を感じるような濃密な描写。観ているほうがドキドキするような圧倒的な歓びを感じました。「ふたりが欲望をたぎらせて、これからどうなりたいかという想いが一致したシーンとして描きました」。

女性ふたりでダンスを踊る
ふたりのダンスシーンは『美しい夏』で最もドラマチックなシーン

ラストシーンに込められた想い

『美しい夏』のラストシーンは、いくつもの解釈ができるように創られていて、その点についてルケッティ監督にうかがいました。

「私はやっぱり、観た人たちが自らに問いを投げかけるようなシーンが好きなんですね。監督が決めるのではなく、ラストシーンはスクリーン外で起こってほしい。観た人たちが自分の感受性で、いちばん幸福なラストシーンを思い描いて欲しいと願っています」。


監督のその言葉を聞いて、私自身が「こうなのかな?」と想像したラストシーンが受け入れられた気がして、改めて感動を覚えました。

映画の主人公のキャラクタービジュアル

誰を愛するかを自分で選ぶ自由


インタビューの最後に、ITALIANITY読者へ向けて、ラウラ・ルケッティ監督からメッセージをいただきました。

「この映画を愛してくださったらとてもうれしい!パヴェーゼの原作も日本で人気があると聞いていますが、原作に対するリスペクトも感じてくださるとうれしいです。そして、いちばん大切なのは『自由』。誰を愛するかを自分で選びとることが大切だと思っているので、それを感じとっていただきたいです」。

ラウラ・ルケッティ監督
どんな質問にも熱心に答え、映画愛あふれるラウラ・ルケッティ監督

パヴェーゼの原作が発表されてから85年の時を経て、才能ゆたかな女性監督のもとにイタリア映画界を担う若手キャストが結集し、完成した宝石のような作品。

この夏、イタリアを愛する人たち、日本の映画ファンのもとに、イタリアから美しい贈り物が届きました。東京に続いて、順次全国で公開予定なので、ぜひ劇場のスクリーンで「イタリア映画の今」を体感してください。

映画の主人公のキャラクタービジュアル

『美しい夏』

8月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督・脚本:ラウラ・ルケッティ

出演:イーレ・ヴィアネッロ、ディーヴァ・カッセル

原作:『美しい夏』チェーザレ・パヴェーゼ作 河島英昭訳(岩波書店)


「美しい夏」公式サイト

https://mimosafilms.com/labellaestate


ミモザフィルムズ Instagram

https://www.instagram.com/mimosafilms


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