CULTURE 30 Mar 2020

子供たちの姿が消え、静寂に包まれたイタリアの街。 子供たちはどう過ごしているのか。


規制措置の強化が進む、現在のイタリア

2月末にCOVID-19(コロナウィルス感染症)の感染が、このミラノのあるロンバルディア州から徐々にイタリア全土に広まり、今もなお感染者や死亡者の数は増加傾向にあります。外出に関する規制は、日を追うごとに厳しくなり、車通りは少なく、街には犬の散歩をする人と買い物目的の人を見かける程度。2週間ほど前は、一人で行うジョギングなども許可されていましたが、3月22日の規制措置強化が発令されてからは、より異様な空気に包まれています。

1 公共の場所での2人以上の集会の禁止。違反した場合は上限5,000ユーロの罰金
2 業務開始前の医療従事者の健康状態モニタリング。
3 公共機関及び行政活動を実施する民間主体の活動停止、ただし必要不可欠な公共サービスの供給を除く。
4 非常事態もしくは必要不可欠な生産に関連しない手工業活動の停止。
5 屋外における市場の停止。
6 接客業(例:理髪師,美容師)の停止。
7 専門職事業活動の停止。延期不可で緊急のサービスもしくは期限が定められたサービスに関するものを除く。
8 全ての受入施設の閉鎖。但し、非常事態対応に関わる施設を除く。既に宿泊している客は,知事令の発効から72時間以内に施設を退去しなければならない。
9 建設工事の停止。道路、高速道路、鉄道、医療、病院、非常事態用施設の工事を除く。
10 飲料及び包装食品を販売する、「h24」と呼ばれる自動販売機の閉鎖。
11 屋外におけるスポーツ及び運動の禁止。一人で行う場合を含む。
キオスク、薬局、ドラッグストアは営業するが、1メートルの安全距離を確保しなければならない。スーパーマーケット、薬局、職場における従業員及び客、治安当局が取り締まる者に対する体温測定の実施を推奨する。
引用:在ミラノ日本領事館「イタリアにおける新型コロナウイルス関連情報(ロンバルディア州の規制措置強化他)」

このように、現在はスーパー、薬局での買い物、さらに自宅から200m以内であれば犬の散歩も許可されていますが、外出する際には「Dichiarazione di Autorizzazione(許可宣言書)」に個人情報と外出の目的などを記入し、所持が義務付けられています。虚偽の記載やルールを守っていない場合には、徒歩の場合には400〜3,000ユーロの罰金、車で移動の場合は4,000ユーロの罰金が科せられます。さらに、イタリア政府は携帯電話会社に協力要請を行い、携帯電話のGPSを利用し人々の行動を把握することで、集団行動や人々の接触による感染拡大を防ぐために策を練っているのが現状です。

いつもは人で賑わうミラノ中央駅

子供たちの賑やかな声が聞こえない街

私は犬を飼っているため、1日数回は外へ散歩に出ることができているのですが、犬を飼っていない人は、スーパーや薬局への買い物など、最低限の用事以外は家に出ることができないのが現状です。少し前は、イタリアの感染状況やスーパーの棚に物がないということを聞いた日本の友人からも、心配して連絡が入るほどでしたが、スーパーの商品がなかったのは一時的なもので、現在スーパーでは、食料品から生活必需品は問題なく購入することができています。しかし、スーパーに一度に入れる人数は制限されているため、スーパーの外で人との間隔を1m以上空けて待機する必要があり、いつものようには買い物はスムーズにできないような状況です。

スーパーの外で列を作り、入店を待つ人

そんな中、このロンバルディアのとある自治体で、Andrà tutto bene!(すべてうまく行く!)と書いたポストイットを玄関に貼った行動がSNSなどで広まり、子供たちが描く「Andrà tutto bene!」の文字と虹が描かれた旗を、街のあちこちで見かけるようになりました。公園内の出入りができないよう街中の公園にはテープが貼られ、いつもなら聞こえる賑やかな声もなく、静寂の中、街の教会の鐘だけが響く街に、この「Andrà tutto bene!」の旗が、街に希望と彩を与えてくれています。

リモートワークをしながら子供と過ごす親

銀行に務める私の主人は、3週間ほど前から、定期的に電話会議などをしながら、自宅でリモートワークという形で仕事をしています。友人や知人のほとんどは、主人のように自宅で仕事をしていて、ローマに住む私の義理の姉もその中の一人です。

私も主人も自宅でリモートワークしているから、子供の面倒も問題なく見ることができるし、困ったことは実際にはないわ。学校からは定期的に宿題が送られてきて、ほら、もう彼女は10歳でしょ、だから、自分自身でしっかりと勉強しているし、時々質問してきたりはするけど。それと、うちの場合は、家に庭もあるから適度に運動もできてるし。
でも、家に庭がない親御さんは大変そうよ。体力をつけるためにも、特に子供は外にでないとね。

姪はインターナショナルスクールに通っているのですが、子供たちがこの状況をある程度理解できるように、動画を使ってウイルスに関するレクチャーもあったようです。また、リモートワークで仕事ができる場合には、学校が閉鎖になっても、自宅で子供の面倒を見ることができる環境は大きなメリットです。

息子がどう過ごしてるかって、彼は中学生だし、学校が提供するアプリやメールを活用して宿題をこなしてるよね。先生によっては、ビデオ電話で一人一人に質問に応えてくれたり、授業をしてくれる先生もいるよ。
ウチの場合は1日に2〜3時間ぐらい勉強してるかな。いつもに比べてちょっと宿題が多い程度。外にはもちろん出て友達と遊んだりできないけど、今の時代だからさ、インスタとかSNSで友達とマメに連絡とっているよ。

そのように話してくれたのは、シチリアに住む友人のリカルド。奥さんと一緒に自営業を営んでいて、今は家で仕事をしているので、子供の面倒を見ることができています。

このような状況下においても、仕事に行く必要のある人々

このような外出制限が出ている中でも、病院、警察、交通手段、スーパー、薬局などで働く人は、普段通り仕事に出かける必要があります。そのような人たちが、学校に行けず外出ができない子供たちの面倒を見るためには、法的に定められた「Congedo Parentale(育児休暇)」を使うことができます。公務員と一般会社員とでは規制が異なりますが、12歳以下の子供を持つ一般会社員の親の場合には、給与が半額の条件付きで15日間の育児休暇を取ることができ、それでも休暇の日数が不足する場合には年間に与えられた有給を消化し、さらに勤務先の許可があれば、給与なしで休暇を取ることができます。

実際に、この状況下で、有給休暇を取っている人がいるかどうかを、病院に務める義理の兄に聞いてみました。

僕の同僚の看護師で、シングルマザーで小さな娘さんがいる人がいるんだけど、親御さんに子供を預けて仕事に来てるよね。彼女は近くに親御さんが住んでるから、娘を預けて、今は自宅に帰らずに親御さんのところから、仕事に来てるって。でも、感染のことを考えると親御さんと会うのも気にはなってるみたいだけど、他の方法がないって嘆いていたよ。

通常であればベビーシッターなどに子供に預けることができるものの、今はベビーシッターも機能していないため、仕事の都合で子供の面倒をみることができない場合に、親や家族を頼り仕事を続けている人もいるようです。

リサーチ会社「EUROSTA」(参考文献:Share of young adults aged 18-34 living with their parents by age and sex – EU-SILC survey, 2020年3月11日付)によると、18歳〜34歳の成人が親と生活している率は、全人口の67.1%(2018年)という調査報告が出るなど、イタリアは成人しても親と同居している人が多いのも国民性の一つです。他人と多く接触する機会の多い大人が親と同居しているケースや、子供がいる親がその両親と一緒に同居している人が多いことも、今回のコロナウイルスの感染が広まった要因の一つとも言われています。しかし、一方で、この状況下においては、親と一緒に同居していたり、近隣に親や家族がいることで、子供の面倒を見てもらうことができていて、仕事に行くことができている人も多いのも現状です。

多忙を極める、リモートワークで仕事をする教師

ミラノで11歳〜13歳まで児童、9クラスの美術の教える友人は、一般の会社員同様、職場である学校の閉鎖が執行されて以来、自宅で仕事をしています。この異例な事態への対応は、学校ごとに異なるようですが、やはりネットやアプリを活用して、子供や親とのやりとりをしているようです。

この状態になってから、いつも以上に忙しいよ。
何が大変かって、230人ほどの生徒やその親との連絡をパソコンを通して、日々直接やりとりしなくちゃならいってことだよね。
親や生徒からの質問など、1日に100通ほどのメールの処理。もちろんパソコンやタブレットなどの環境が整っていない家には、直接電話をして対応しなくちゃならない。クラスルームで一斉に教えるより、一人一人に直接的に対応しなくちゃならないから、普段より手間がかかるよね。
今後の定期テストとかも検討してるけど、ネットを使ってテストするようなシステム環境が整っていないから、テストとなると学校に来る必要があるし、先送りになりそうだよ。

シチリアの友人リカルドも話してくれましたが、ミラノでもパソコンなどのネット環境が整わない家庭環境の子供もいるようで、全ての子供たちが同じ環境下で勉強ができているわけではないようです。このような非常事態において、子供たちが平等に授業を受けることができる環境を整えておくことも災害対策の一つとして検討する必要があると感じました。

先が見えない不安と向き合う人々の希望

いつまで、この状況が続くのか、先が見えず不安な日々。コロナウイルスの感染が広まった当初に比べれば、圧倒的に危機感を感じ、人々は外出を控え、他人との接触を避け、この最悪な状況が落ち着くのを待っています。そんな中、「コロナウイルスの薬が日本からイタリアに送られるって決まったって、本当なの。やっぱり日本はすごいわ。」とまるで私が薬を開発したかのように、義理の母が電話をしてきました。いろいろと調べてみたところ、富士フィルム富士科学の抗インフルエンザ薬「アビガン」がコロナウィルスに効果が出ているという結果を受け、国内でもまだ臨床研究が進む中、早々にイタリアはこの治療薬「アビガン」の輸入に踏み切ったとのことでした。

まるで「映画のよう」とこの状況を表現する人もいますが、映画のように90分でこの状態は完結しません。実在する多くの人の命を奪い、亡くなった人の葬儀もできずにいる人。今もICUで生死をさまよっている人。これ以上の犠牲者が出ないよう、たとえ若者の致死率が低くても、自分が感染し、人に移し誰かを殺してしまう可能性があるということを忘れず、自己中心的な考えは捨て、今自分たちにできることをすることが一番大切なことだと感じています。

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WRITER PROFILE
Manami Palmieri
Manami Palmieri

イタリアのミラノ在住、フォトグラファー兼ライター。アメリカの大学にて芸術学部を卒業後、日本の一部上場企業に就職しアートディレクターとして活躍。国内外で写真展を開催するなど、アーティストとしての幅を広げ、2016年に渡伊。結婚を機にイタリアに移住。現在は、写真と文字でファッションやアートを中心としたグローバルな最新情報を発信中。