COLUMN
CULTURE 15 Feb 2021

【連載】大塚ヒロタとイタリアと、コメディア・デラルテ「底抜けに楽しかった配信公演で私が見つけたモノ」


「楽しかった!!」

久しぶりの感覚だ。自分のパフォーマンスが、そして仲間と作り上げてきた物語が目の前のお客様を笑顔にし、その笑顔を見て自分たちもどんどん乗ってくる。そうして公演は私が想像していたものを超えていく。「観客も演者もスタッフも楽しい!」これこそコメディア・デラルテなんだ。

昨年12月27日、私たちテアトロ コメディア デラルテ(以後TCD)は初めての試みとなるZOOMによる生配信公演を打った。(そこに至る経緯は是非前回の記事を読んでいただきたい。)そこで得た感覚はこんなポジティブなものであり、やってみて初めてわかるメリットが本当に多くあり、実り多き公演となった。

だが実は本番を迎えるにあたっては多くの技術的な問題をクリアしなくてはならず、稽古期間にはそこに多くの時間を割いた。まずZOOMで出来る事と出来ない事の把握、そしてやりたい内容をお客様にどうコメディアの肝である参加感を持ったままスムーズに見ていただく環境を整えるか…これには本当に苦心した。

ZOOMを使った事のある方ならわかると思うが、ZOOMには意外と多くの制約がある、まず急に大きな音が出た時には音がカットされてしまう。また、明るさを自動で感知して調整してしまうので、こちらの思うような雰囲気が出しづらかったり、見ている方のPCモニターによってもかなり色味が異なってしまったりする。そして、ギャラリービューというモードで参加者を一画面に複数名並べて表示できるモードがあるのだが、誰が何処に表示されるかは見ている人でそれぞれ違うのだ。なので、相互コミュニケーションがとれるというメリットはあるものの、なかなか劇場でやっているものをそのまま流用するわけにはいかなかったのだ。

ただZOOM配信公演ならではのメリットも沢山あった。まず最大のメリットは普段東京の劇場公演に来られない地方や海外など在住の方、小さなお子様がいて気軽に劇場に来られないお母さん、このご時世に人が集まるところに行くのには抵抗のある方等にも視聴しやすい環境であり、今回初めてTCDの公演を見てくれる方が多くいた。そして録画アーカイブを2週間残すことによって、多くの方が年末年始のゆったりした時間にご家族やお友達と見てくださり、予想を大きく上回る方にご視聴いただけた。生配信を子供やペットが駆け回る中、見てくれたり、家族で鍋をつつきながら見てくれている方もいて、新しい演劇の楽しみ方だと思った。もちろん思いっきりこちらからその状況をイジり倒して、お互いオイシイ展開に持ち込んだのは言うまでもない。笑

また嬉しい誤算も沢山あった。今回はスタジオからの配信ということだったので、照明機材はそんなに使えないと踏んでいた。そんな中今回初めてお願いする照明の松本しゃこさんは、実は私の日本での初めての一人芝居を劇場で見てくれていて、悪条件の中楽しいアイディアを沢山盛り込んでくれた。そして、リハーサルでも私のヴァレンティーノを大きな笑い声をあげながら見てくれるという最高のムードメーカーの役割も担っていただき、初めてのZOOM公演で不安な私に沢山の勇気を与えてくれた。そして「ちょっと手伝いにきました」と、旦那様である照明家の松本永さんもスタジオに来てくださり、ちょっというよりがっつり明かりを作っていただいた。さらに永さんは配信公演やZOOM、コンピューターに非常に詳しく、私たちが直面していた問題を次々に解決してくれた上に、私に稲妻が走る一言も下さった。

「これ、後ろが黒幕なのは演劇っぽくて締まるけど、カラフルにしたり背景描いたりしたら雰囲気ガラッと変わって面白いかもね。」

TCDの公演はセットなしのいわゆるブラックボックスと言われるシンプルを極めたスタイルをとっているが、これは私の「お客様の想像力で真っ黒な空間が何処にでも成る」というこだわりからだったが、近年子供向けの作品を作ろうと計画しているTCDにはカラフルで、山や太陽や雲、そして虹が書いてある背景でやるだけで一気に世界観は子供向けになるだろう。私の大好きな監督が「お前これで子供向けの作品作れよ」と言ってくれてから、ずっと頭にはあったのだが、この永さんの言葉でばぁ~~~っとイメージが頭の中で駆け巡った。こちらの完成もぜひお楽しみに♪

他にもうれしい事があった。各回の先着45名様におまけとして配るために紙の仮面を発注したのだが、その仮面が到着した時は思った通りのクオリティや完成度にみんなでテンションが上がったが、試着してみて愕然とした。サイズが大きすぎて目の穴の間隔が広くなりすぎてしまい、つけると全く前が見えなかったのだ…解決する方法を思いつく暇もなく、チケット購入者には仮面を送付するしかなかった…すると、そこは流石TCDのお客様たち!!クレームを言うのではなくピンチをチャンスにして楽しんでくださった!!仮面を山折り谷折りして、自分の顔に合わせてくれた写真を次々に送ってきてくださったのだ。すると同じデザインの仮面が鼻が高かったり、三角の鼻だったり、妙に長細い顔になったり特徴にあわせたそれぞれのオリジナルの仮面になった。さらには工作や色を塗ってくれたりしてオリジナリティを加えてくれる強者も多数現れた!!いや、あれには本当に助かった。

こうして書いていても本当に「楽しかったなぁ」とあの時の高揚感がよみがえってくる。ゲストの板垣雄大のカピターノのスベり芸は見る者全てをニヤニヤ、次第にゲラゲラ、最後にはウルっとさせた。終わった後マスクを取った彼のいい表情が忘れられない。またやろう!!

初めてだったこともあり、沢山の改善点や今後試してみたいアイディアが今回やってみて見つかった、それはそのままZOOMでの公演の伸びしろだということになる。今後劇場での公演が普通にできる日が戻ってもZOOM等でオンラインでも参加できる回を必ず設けていきたいと思う。それだけここに可能性を感じた。

コメディア デラルテの、演劇の、いや芸能の未来がここにある。

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WRITER PROFILE
大塚ヒロタ
大塚ヒロタ

俳優、テアトロ コメディア・デラルテ主宰。NY で演劇を学びコメディア・デラルテと出会いイタリアに渡る。帰国後、映画「64 -ロクヨン-」の宇津木役、「図書館戦争」シリーズの野村役で注目を集める。 映画「キングダム」「唐人街探索」「楽園」、ドラマ「フルーツ宅配便」「ボイス110緊急指令室」、CM「ほっともっと」「中部電力」「よなよなエール」 ■最新の出演作は Twitter@hirotaotsukaでも随時更新中