CULTURE

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ロンバルディアの代表的なカルネバーレ「Carnevale Canturino」が開催中のコモの街「カントゥ」

コリアンドリが舞う2月のイタリア

2月に入ると、街のスーパーなどにはカーニバル用のコリアンドリ(紙吹雪)や紙テープが並び、カーニバルシーズンに入ったことを実感します。ヴェネチア、トスカーナのヴィアレッジョ、シチリアのアチリアーレなどがイタリアのカーニバルで有名ですが、この時期にはイタリア全土で大小様々なカーニバルが開催され、街々が賑わいます。

イタリアのカーニバルの風景

毎年この時期にカーニバルが開催されるのには、イタリア語ではPasqua(パスクア)と呼ばれるイースターが関係しています。春分を過ぎた、最初の満月の後の日曜日に定められているキリストの復活を祝うパスクア=復活祭。復活祭の前の40日は四旬節とされ、食事の制限や償いなど、これまでの行いなどを悔い改める時期とされています。そして、その四旬節に入る1週間ほど前に肉を食べて祝祭する、ラテン語の肉=Carnemと禁止=Levaleが語源となった、“Carnevale(イタリア語:カルネバーレ)”がこの時期に各地で開催されるようになりました。現在は、四旬節に入る1ヶ月ほど前から毎週末に開催するカルネバーレも多く、地域おこしの一環としての役割も担っています。

イタリアのカーニバルの風景

家具の街「Cantù(カントゥ)」で毎年開催される「Carnevale Canturino」

ミラノのあるロンバルディア州でも様々な地域でカーニバルが開催されていて、2月末にはミラノのドォーモ広場などでも行われます。中でも今回ご紹介するのは、2月の毎週日曜日に開催されているロンバルディア州コモ県にあるCantù(カントゥ)という街で開かれているCarnevale Canturino(カルネバーレ・カントゥリーノ)です。

イタリアのカーニバルの風景

カントゥはミラノの中心部から車で約1時間、北イタリアの湖水地方を代表するコモ湖からほど近い場所にある人口約40,000人の小さな街です。市内にはMuseo del Legno(木の博物館)があるなど、カントゥは木の街や家具の街として有名で、年に一度“Festival del Legno(木のフェスティバル)”と呼ばれる木をマテリアルにした商品や作品の展示会が開催されています。また、昔から工務店や木工工場があったカントゥを象徴するのは、このカーニバルのキャラクター、イタリア語で木材のチップを意味する「Trucicolo(トゥルチコーロ)」で、どこの工務店などにもいる子供がモチーフになっています。そして、このトゥルチコーロが登場するところからカントゥのカーニバル“カルネバーレ・カントゥリーノ”が始まります。

イタリアのカーニバルの風景

94回目を迎えるカルネバーレ・カントゥリーノは、毎年約20,000の人が訪れる、ロンバルディアを屈指のカーニバルです。実際にはいつ始まったものなのか、詳しい書物は残っていないのですが、1920年に木工工場のPaleari社がカーニバルワゴンを建設したということがわかっていて、その歴史や約100年にも及びます。この100年もの間、第二次世界大戦中に一時中断せざるを得ない時期もありましたが、1948年に再開して以降、現在のような毎年山車を使ったカーニバルが開催されるようになりました。

イタリアのカーニバルの風景

カルネバーレ・カントゥリーノでは、今年は7つのグループの山車が参加し、Parrocchia Santi Michele e Biagioから約1kmの距離を鮮やかにそして賑やかに周ります。道幅ギリギリの山車が通る歩道では、人気のDCコミックスやマーベルのキャラクターに扮した男の子、アナと雪の女王などのお姫様コスチュームの女の子、話題のスペインドラマ「ペーパー・ハウス」の赤のオーバーオールとダリのマスクをつけた大人など、仮装した人々の姿も楽しめます。

社会風刺的メッセージを込めた山車の数々

カルネバーレカントゥリーノではコンテストが開催されていて、カントゥのキャラクター「トゥルチコーロ」がマーチングバンドと共に入場し、その後に続くのは前年のカーニバルの優勝者のチームです。各参加グループの山車やパフォーマンスは、見た目の迫力や面白さ以外に社会風刺的なテーマやメッセージが込められていて、メッセージ性などもコンテストの評価基準となります。昨年の優勝者「Buscait」が選んだ今年のテーマは“GIRO GIRO TONDO… NON FATE CADERE IL MONDO!!” (周遊… 地球を崩壊させるな!)

イタリアのカーニバルの風景

山車の上には、マスクを片手にした中国の李首相、アメリカのトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領3人、その後ろには大きく手を広げた子供の姿が。そして、ベビー服に身を包んだ参加者のパフォーマンスが山車を盛り上げます。そんな社会性メッセージの込めた山車以外にも環境問題をテーマにした、オーストラリアの森林火災を模した炎に包まれて火傷をした巨大な木の山車、海とプラスチックをテーマにした山車など、私たちが身近に痛感している問題、そして目を背けてはならない問題をわかりやすく定義するのもカルニバーレの重要な役割だと感じました。

イタリアのカーニバルの風景

イタリアのカーニバルの風景

高さ15mにも及ぶ迫力の山車、大音量で奏でる音楽とダンスパフォーマンス、そしてコリアンドリ(紙吹雪)や色鮮やかなコリアンドリが空に舞うカルネバーレ。参加グループには小さな子供からお年寄りまで、ジェンダーや年齢も様々で、参加者も観客も一体になって盛り上がれるのがカルネバーレの楽しさです。冬の寒さが落ち着いてきたこの時期に始まるカルネバーレ、道に散らばるコリアンドリがまるで溶け始めの雪のように、春の訪れを感じる今日この頃です。

イタリアのカーニバルの風景

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