ヴェネチアで開催されたコンテンポラリーアーティストのステファノ・オリアリ・バデッシ氏による限定ワークショップ
FEATURE
ART & DESIGN 30 Jun 2021

ヴェネチアで開催されたコンテンポラリーアーティスト、ステファノ・オリアリ・バデッシ氏による限定ワークショップを直撃取材!


イタリアでは未だにイベントの中止や延期が相次ぐ中、ヴェネチアで開催されたコンテンポラリーアーティストのステファノ・オリアリ・バデッシ氏による限定ワークショップ、『Who watches What? 』を直撃取材!

コロナ禍のアートイベントをサポートしたのは、あの世界的時計ブランド?!

世界的にワクチンが供給され始めたとはいえ、新型コロナウイルスの猛威は凄まじく、イタリアでも多くの文化・アート関連のイベントが打撃を受けている。ぽっかりと空いたスケジュールを眺めていたワカペディアの元に、スイスの時計ブランド「スウォッチ(Swatch)」からメールが届いた。「スウォッチ」といえば、2019年には世界中のアーティストが注目する現代アートの国際美術展覧会、ヴェネツィア・ビエンナーレのオフィシャルスポンサーを務めた事が記憶に新しい。他にも、アーティストらをサポートするための住居、スウォッチ・アート・ピース・ホテルを運営するなど、多方面からアート業界を支援しているブランドだ。(詳しくはこの記事をチェック

届いたメールを開くと、それはスウォッチ・アート・ピース・ホテルに滞在するアーティストの一人、ステファノ・オリアリ・バデッシ(Stefano Ogliari Badessi 通称S.O.B.)氏が5月14日〜16日の3日間、ヴェネチアのペギー・グッゲンハイム美術館でワークショップを開催するという招待のメールだった。通称S.O.B.って・・・アンダーグラウンドのラッパーか地元のDJかと思いきや、アーティストなのね!思わず心の中でクスッとしながらも、「スウォッチ」一押しのアーティストという期待を胸に、拠点ミラノからヴェネチアへ取材に向かった。

『Who watches What? 』の全貌とは?

今回の展示は、コロナ対策で招待客がかなり絞られたようだ。実はこのワークショップ、グッゲンハイム美術館がスウォッチ・アート・ピース・ホテルによる協力の元、2018年にASviS(和訳: 持続可能な開発のためのイタリア同盟)と共に開始したプロジェクトの一環だそう。16歳〜25歳までの若者を対象に、無料のワークショップシリーズ「克服:ニューノーマルに向けたアートの実践」を4回実施し、S.O.B.氏のワークショップはその最終回なのだ。ここでは若者たちがアートに触れる事以外にも、アーティストとの対話を通して、日常生活での問題をどう解決すればいいのか、様々なアイデアを提供するのが目的だ。そしてこのプロジェクトは、2015年の「国連持続可能な開発サミット」で掲げられた目標の一つ、「2030年までにインクルーシブで公平な質の高い教育を確保し、すべての人に生涯学習の機会を促進する」の貢献にも繋がっている。つまりこのワークショップは、ただのアートイベントではなく、若者の問題解決を促す場であり、教育分野でのサステイナビリティを意識したイベントでもあったということ。ここまで知ると、ワークショップの中身をさらに知りたくなってきたでしょう?

「誰が何を見ますか?」と名付けられたワークショップ

ワークショップの様子

『Who watches What? 』をそのまま訳したら、「誰が何を見ますか?」という意味だ。S.O.B.氏は、ワークショップの舞台となるヴェネチアをイメージした時、イタリアの画家・彫刻家のアメデオ・モディリアーニの残した「私があなたの魂を知った時、私はあなたの目を描く」という言葉が頭に浮かび、そこからインスピレーションを得たと言う。「ヴェネチアの街」とそこに流れる「水」の繋がりが、まるでモディリアーニの言葉に出てくる「魂」と「目」の関係性にリンクしたからだそう。そこでワークショップ『Who watches What? 』では、ヴェネチアの街における「水」の大切さと、未来への可能性(つまり若者達そのもの!)を強調することにした。彼が用いた方法は、空間全体を作品とし、体験できるアートと呼ばれる「インスタレーション」だ。今回のインスタレーションは、ヴェネチアの「魂」を表す大きな2つの「目」が描かれた2艘(そう)のボートを作るところから始まる。美しくも脆いラグーンを保つため、このボートには木材や布、リサイクルされたプラスチックなど、地球に優しい素材が用いられている。ワークショップのクライマックスでは、これら2つの「目」が運河に着水し、観客はゆっくりと海に向かって流れ出す様子を見送った。

「誰が何を見ますか?」と名付けられたワークショップ

水質汚染が進み、美しさが失われつつあるヴェネチアの街。そこに浮かぶ2つの「目」を見ながら、アーティストは観客に『誰が何を見ますか?』と問いかけたかったのかもしれない。長引くパンデミック、深刻な環境汚染、貧困問題に教育格差。こんなに美しくも、傷だらけで壊れかけたこの地球に生きる私達に投げかけられているのは、「あなたは何を見ますか?」という一文なのかもしれない。

さて次回は、スウォッチ・アート・ピース・ホテルのCEOであるカルロ・ジョルダネッティ (Carlo Giordanetti) 氏と、ペギー・グッゲンハイム美術館館長のカロル・ヴェイル(Karole Vail) 氏の貴重なインタビューを特別公開。お楽しみに!

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WRITER PROFILE
Wakapedia

ワカペディアは、異文化交流の促進を目的としたトータルサイト。 設立者のサラワカは、日本人の両親の元ミラノで生まれ育ち、ロンドン、パリ、東京、イタリアでは、のちにワカペディアのオフィシャルメンバーとなる個性溢れる5名(GIULIA BISON, FEDERICA FORTE, YURIE N, YOKA MIYANO, CAMILLE BRUNET) と出会った。#CULTURECANBEFUNをモットーに、言語の壁を超え、アートやファッションをはじめとする様々な文化情報を、ユーモアを交えて発信している。 また、活動の一環として、世界的に有名なアーティストや著名人へのインタビューの他、企業のクリエティブコンサルティング、デジタルコンテンツの作成や記事の執筆なども手掛けている。 これまで担当したプロジェクトは、BRUTUS、ELLE JAPAN、L’OFFICIEL MAGAZINE、PLAYBOY ITALIA、POPEYE、TOILETPAPER MAGAZINE、VOGUE JAPAN等。