ART & DESIGN

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プラダ財団美術館で「Who the Bær」展を開催。日本人とイギリス人の両親に持つ世界的アーティスト、サイモン・フジワラ

ワクチン接種の普及により、少しずつ活気を取り戻しつつあるイタリアで、展覧会が開催されると聞きつけ、ミラノのプラダ財団美術館へ向かったワカペディア。その展覧会で注目の世界的アーティストとは、日本人とイギリス人の両親に持つ、サイモン・フジワラ氏だった。二つの文化を知る彼は、一体どんな世界観を持っているのだろう?今回の特集では、前編で彼のアートと注目の展覧会を紹介し、後編では彼の素顔とインスピレーションについてのインタビューを掲載。とっても不思議でユニークなフジワラ・ワールドをご堪能あれ!

日本とイギリスのダブル、サイモン・フジワラってどんなアーティスト?

サイモン・フジワラ

1982年にロンドン近郊で生まれたサイモン・フジワラ(Simon Fujiwara)氏は、ベルリンを拠点に活動する現代アーティストだ。彼の独創的な世界観は、絵画やインスタレーション、映画、彫刻と変幻自在に形を変え、ロンドンにあるイギリス国立近現代美術のテート・モダン、パリのパレ・ド・トーキョー、ニューヨーク近代美術館(MoMA)や東京オペラシティアートギャラリーなど、世界トップクラスの美術館で展示されている。彼の作品のテーマは、政治や時事、フィクション、自伝的要素などを融合したものが多く、特に「一般的な人々の見方」と(自分自身の中にある)「固定概念」との曖昧な境界線について切り込んだテーマが興味深い。例えば、オブジェも製品もどちらも一般的には「物」として認識されているものが、ある人にとってそれは「オブジェ」であり、別の人にとってはそれが「製品」であるように。そんな彼の作品の中で印象的なのは、アムステルダムにあるアンネ・フランクの家の実物大レプリカ「ホープ・ハウス」(2017)や、引退間近のドイツの首相、メルケル氏の皮膚の色素を切り取って拡大した抽象画「マスク (メルケル F6 .1) 」(2016)、テーマパークでの公共の体験をシミュレートする体験型インスタレーション「共感」(2018)だろう。世界を牽引していく若手アーティストとして、今後の活躍が期待されている人物の一人なのだ。

サイモン・フジワラ 作品「ホープ・ハウス」(2017)

サイモン・フジワラ 作品

プラダ財団美術館で9月末まで開催した「Who the Bær」

ミラノのプラダ財団美術館では、2021年9月27日まで、フジワラ氏による「Who the Bær」展を開催した。デッサン、コラージュ、彫刻、アニメーションから構成されたこの展覧会は、ほとんどが段ボールとリサイクル可能な材料で出来ており、まるで巨大な迷宮のようだ。会場に足を踏み入れた瞬間から、フジワラ氏が生み出したメインキャラクターであるクマ(Bear)のストーリーが始まる。特定の年齢や性別、人種といったアイデンティティを持たないこのキャラクターに、観衆は自分自身を重ね合わせるかもしれないし、他の誰かを思い浮かべるのかもしれない。フジワラ氏のシンプルなグラフィックデザインにより誕生した、このクマの形をした「Who(どこかの)誰か」は、展示の中で私たちの人生同様に旅行をし、SNSを使い、幸せな出来事やトラウマになるような出来事を経験する。(常にハッピーでクールな自分自身であるかのように発信する)多くの「加工されたアイデンティティ」をつくり出す現代のSNSと、「アイデンティティを全く持たない」クマの主人公。それらはまるで、あちこちで「偽りのアイデンティティ」が大量に作られ、時に使い捨てのように扱われるSNS上の世界と、それに依存した現代社会の中で「本来の自分」を探そうと葛藤する人々の歪んだ姿を表しているのかもしれない。

フジワラ氏による「Who the Bær」展

ワカペディアの見るサイモン・フジワラ氏

「Who the Bær」展のオープニングに参加したワカペディアチームは、(ソーシャルディスタンスを取りながら)フジワラ氏に直接インタビューをすることができた。彼の独特なスタイルの作品から、どんなに奇抜なアーティストだろうと想像していたけれど、実際に会った彼はとても優しく繊細な人だった。優しくて穏やかに包み込むような雰囲気は、まるでテディベア!日本人の両親を持つイタリア生まれ育ちのサラワカとは、お互いに日本人の親を持ち、異なる文化の中で育ったという境遇が似ていることもあってか、すぐに意気投合した。若干30代ながら、すでに世界の主要な美術館で展覧会を開催してきたフジワラ氏は、このプロジェクトの深い意味と、これからそれをどのように進めていくのかというビジョンについて、熱く語ってくれた。先を見据えたビジョンを持つ彼のことだから、もしかしたらこのクマのストーリーは序章に過ぎないのかも。才能の塊とも言えるようなアーティストが、今後目指す先とは?ワカペディアも思わず引き込まれた、彼の素顔とインスピレーションについてのインタビューは必見。本特集の後編もお楽しみください!

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