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没後700年を迎えたイタリアを代表する偉人ダンテ・アリギエーリに現代版インタビューをしてみたらこうなった!

2021年は、ダンテ・アリギエーリの没後700年にあたる特別な年だ。日本では、ペリーやフランシスコ・ザビエルと比べてあまり馴染みがない人物かもしれないが、イタリアではイタリア語の⽗とも呼ばれ、学校では学生らに彼の詩を暗唱させるほど身近な存在だ。ミケランジェロの『最後の審判』やロダンの『考える人』をはじめ、彼がルネサンス文化に与えた影響は大きく、おそらく誰もが一度はダンテの作品を題材にした美術品や映画を目にしたことがあるだろう。イタリアを代表する偉人、ダンテ・アリギエーリがもし21世紀にタイムスリップしたら?彼の生涯、そして代表作『神曲』について、現代版インタビューをしてみたらこうなった!

イタリアを代表する偉人ダンテ・アリギエーリの横顔

ワカペディア: チャオ!700年の長い旅、お疲れ様です。早速ですが、あなたについて教えてもらえますか?

ダンテ・アリギエーリ: 気づいたら700年も経っていたなんて、驚きだね!私は1265年にフィレンツェで生まれた作家・詩⼈・政治家さ。『新⽣』、『神曲』が代表作として知られているようだね。一時期は政治家として、フィレンツェで国務大臣を務めたんだけど、不安定な情勢だったから政変に巻き込まれて、追放処分を受けたんだ。フィレンツェを離れて執筆した『神曲』は、知識人や貴族だけが理解できたラテン語より、実際に話されていたトスカーナ方言を用いた方がいいと思ったんだけれど、まさかこれが後にイタリア語の基盤になったとはね。故郷を追放された自分が、今ではイタリア語の⽗と呼ばれてるなんて、最高に嬉しいね!

ワカペディア: 波乱万丈な人生だったんですね。政治にも携わっていたなんて、さすがエリート!ところで、『新生』や『神曲』は小説かと思いきや、詩だったんですね。『神曲』はご自身の恋愛経験が関係していると聞きましたが、詳しく教えてもらえますか?

ダンテ・アリギエーリ:(大きなため息をつきながら、アンニュイな表情で)・・・はぁ。今でもこの恋を思うと、胸が締め付けられるような気分だよ。『神曲』は最愛の女性、ヴェアトリーチェに捧げた作品と言っても過言ではないね。9歳の時に彼女を一目見て、恋に落ちたんだ。18歳の時に再会したものの、直接話しかけられなくてね。その後、この恋心を知られたくなくて、カモフラージュとして他の女性に近づいたことが彼女の耳に入ったらしく、私を拒絶するようになったんだ・・・

ワカペディア: 情熱的なわりに・・・シャイな天邪鬼だったんですね(驚)

ダンテ: そう見えるかもな(笑)気づいたらヴェアトリーチェは他の男性と結婚し、私はジェンマという女性と結婚することになったんだけど。後日、ヴェアトリーチェが24歳という若さでこの世を去ったと聞いたんだ。その時は思わず狂乱状態になったよ。27歳の時に彼女を想いながら綴った詩文『新⽣』を発表した後も、想いは募るばかりだったんだ。だからその後、彼⼥が「永遠の淑女」として登場する叙事詩『神曲』を⽣涯かけて完成させたのさ。

ワカペディア: 成人してからほとんど話すことのなかった女性を、これほどまでに一途に想い、一生をかけて彼女へ捧げる大作を書き上げるとは!ス、ストーカ、、じゃなかった、ステキですね!代表作の『神曲』は、どんなストーリーですか?

ダンテ・アリギエーリ: 『神曲』は、地獄編・煉獄(れんごく)編・天国編という3部構成なんだ。歴史上の登場人物だけでなく、聖書の外典(正典ではない)やギリシャ神話を織り交ぜながら、35歳の私が死後の世界を一週間旅行するという独自のストーリーだよ。本来は混ざることの無い、世の中の様々な価値観を詰め込んで、死後の世界を少しでもリアルに描きたかったのさ。あとは三位一体(父なる神、イエス・キリスト、聖霊の本質は同じであり、一つであるというキリスト教の教え)をベースに、作中は3行、33歌、3部構成など、 3という数字にこだわってみたんだ。テンポ感があって悪くないだろう?(笑)

サンドロ・ボッティチェリ作  1480-90年サンドロ・ボッティチェリ作

ワカペディア: こんなに計算された文体で、綺麗に韻を踏みながら、長編小説のように話が展開していくなんて、すごい才能ですよ!あまりに完成度が高いから、学校の試験に出るんですよね。私達も学生の頃、必死に地獄編の序文を暗記しました!そんな『神曲』の見どころを教えてください。

ダンテ・アリギエーリ: 確かに、一番知られているのは地獄編だろうね。ロダンとかいう芸術家の『考える人』という作品のモチーフにもなったらしいな。よく地獄では、悪魔がムチを打ちながら人間が働かされていると思っている人が多いだろう?でも私が描いた地獄は、人々は自分自身の愚かな特性ゆえに、罰から解放されることが出来ないというのがポイントなんだ。お金にがめつい奴は、延々と重い金貨の入った袋を転がし続けないといけないというように、同じ行動を永遠に繰り返さないといけないことが、文字通り「地獄」ということさ。煉獄編では、自身の罪をより早く清め、天国へ行けるように祈りを求める人々の姿を印象的に描写したね。天国編では、ヴェアトリーチェが私の案内役として登場する中、ついに聖母マリアと神の姿を目にするんだ。最終的に私はこの旅を通して、太陽や月などこの世を動かすのは神の愛によるものであり、『神こそが愛そのもの』であることを知る、という壮大な物語さ。

考える人(ロダン)考える人(ロダン)

ワカペディア: なるほど。この作品は寓話的で、あなたが学んだことを、教訓として人々にわかりやすく伝えるために書かれたと言えそうですね!ちなみに当時、軽い罪を犯した場合は煉獄(れんごく)へ行くと信じられていたようですが、実際聖書に煉獄の記述はなく、カトリックや一部の宗派以外はその存在を認めていないようですね。イメージが湧きにくかった死後の世界を、当時の価値観を用いてリアルに描写したことと、一般人が話していたトスカーナ方言で書かれたことが相乗して、さらに多くの市民に広まるきっかけになったのかも。

ダンテ・アリギエーリ: そうかもしれないな。いずれにせよ、自分の作品が題材になったものが、今でも世界中に残っているのは嬉しいよ。そういえば、私がラヴェンナで死去した後、1400年代の終わり頃からフィレンツェがラヴェンナに対して私の亡骸を要求していたそうだな。ようやく帰郷できるとかできないとか言われているらしいが、まさか600年近く待たされるとはな。その間、誰かが墓から私の骨をこっそり抜き取って隠したこともあったようだし、もういい加減静かに眠らせて欲しいぞ(笑)

ワカペディア: 早く帰郷が叶うといいですね(笑)ダンテさん、700年の時を超えてわざわざありがとうございました!また会いたくなったら、あなたが私達に遺していった作品を手に取りますね。それでは、チャオ!

軽い挨拶を交わし、再び長い眠りについたイタリアの偉人。数々の優れた才能を持ちながらも、社会に翻弄されたその生涯の中には、一人の女性を想い続ける恋心が散りばめられていた。彼が後世に残した遺産に思いを馳せながら、ワカペディアは『神曲』の最後のページを閉じた。

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