INTERVIEW
ART & DESIGN 12 Jul 2021

スウォッチアートピースホテルのキュレーター&CEOとペギー・グッゲンハイム美術館館長に独占インタビュー


5月にヴェネチアで開催されたステファノ・オリアリ・バデッシ(通称S.O.B.)氏による若者向けワークショップ『Who watches What?』をはじめ、多くのアーティストやアートイベントをサポートしてきた、スウォッチ・アート・ピース・ホテル。アートとオーディエンスを繋ぐキュレーターであり、ホテルのCEOでもある、カルロ・ジョルダネッティ(Carlo Giordanetti)氏と、ヴェネチアのペギー・グッゲンハイム美術館館長のカロル・ヴェイル(Karole Vail)氏の独占インタビューを公開!

カルロ・ジョルダネッティ氏が明かす、アートレジデンスの誕生秘話!

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ワカペディア: カルロさん、お会いできて光栄です!聞きたいことは沢山ありますが、まずはCEOを務めるスウォッチ・アート・ピース・ホテルとは何か、教えてください!

カルロ・ジョルダネッティ: スウォッチ・アート・ピース・ホテルは、アーティストをサポートするためのレジデンスなんだ。「スウォッチ」のストアや、滞在しているアーティストらの作品を展示するスペースも併設されてるよ。上海にあるから、パンデミックの影響でここ1年半は行けてないけれど、実は僕も住んだことがあるんだ。

スウォッチアートピースホテルスウォッチ・アート・ピース・ホテル

ワカペディア: 羨ましい!実はワカペディアチームも、このレジデンスの存在を知ってから、「いつかここに住めるくらいグローバルに活躍するぞ!」と意気込んでいたんですよ(笑)ところで、スウォッチ・アート・ピース・ホテルは、どのように始まったのですか?

カルロ・ジョルダネッティ: 2008年に企画して、2011年にオープンしたんだけど、実は前から、「スウォッチとはどんなブランドか」がわかるような場所を探していたんだ。模索して辿り着いたのが、このアートレジデンスなんだよ。でも当時の上海は経済的に急成長していて、派手なアクセサリーが好まれていたから、プラスチック製で一見おもちゃにも見える「スウォッチ」の時計を上海の市場で売り出すのは、とてつもないチャレンジだったね。そこで、アートと「スウォッチ」を組み合わせるのはどうだろう、というアイデアに至ったのさ。

ワカペディア: マーケット参入のためにアートを取り入れたとは、ユニークですね!

カルロ・ジョルダネッティ: そうだね。ちょうどプロジェクトが動き出した頃、再開発の為のコンペが開かれると知って、すぐさま応募したんだ。そこは赤レンガと白い壁が特徴的な歴史的建築物で、1850年以降、ずっとホテルとして使われていた建物だったんだ。一度火事で再建されたとはいえ、この建物を見た時、アートの要素を取り入れながらも、ホテルとしての名残を生かしたいと思ったのさ。

ワカペディア: アートレジデンス開業の裏に、そんなに長い歴史があったとは!

カルロ・ジョルダネッティ: ここだけの話、コンペの最終選考に残ったのは、「スウォッチ」を含めた2社だったんだ。もう一つの会社は、世界的に有名なラグジュアリーブランドだったから、勝負の行方をドキドキしながら見守っていたよ。それだけに、勝ち抜いた時はチーム一同、感動の嵐が巻き起こったんだ。こうして始まったスウォッチ・アート・ピース・ホテルだけど、時計メーカーが運営するアートレジデンスであることや、コンテンポラリーアートが浸透してからまだ日が浅い上海に開設するということもあって、本当にアーティストが集まるのか不安だったな。でもそんな心配とは裏腹に、入居アーティストを募集すると、すぐに作曲家や映画監督、画家など様々な分野のアーティストから、申し込みが殺到したのさ。

ワカペディア: アートの分野で活動するワカペディアも、できることなら今すぐにでも入居したいくらいです!(笑)異なる分野のアーティストが出会うことで、お互いにとって良い刺激となるだけでなく、コラボレーションの機会なども生まれそうですね。アーティストだったら誰もが憧れる環境だと思います。

カルロ・ジョルダネッティ: ははは。興味を持ってくれてありがとう!一つ言っておきたいのは、アートレジデンスに滞在する為には、重要な条件があるんだ。それは、滞在費の代わりとして、退去する時に自分の作品を残していくことなんだけど。ワカペディアは何を残してくれるのかな?(笑)

一瞬どきりとしつつも、茶目っ気たっぷりに話す姿に、ノックアウトされたワカペディア。例えリップサービスでも勘違いでも、この熱烈ラブコール(?)が相手に届いたのは嬉しい。「いつか上海まで会いに行きますね」と心の中で呟いたところで、おっと、次のインタビューが始まっちゃう!

ペギー・グッゲンハイム美術館館長のカロル・ヴェイル氏に、初インタビュー!

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ワカペディア: カロルさん、お会いできて嬉しいです!5月にペギー・グッゲンハイム美術館で開催された、ステファノ・オリアリ・バデッシ(通称S.O.B.)氏による若者向けワークショップ、『Who watches What?』についてお話を聞かせてください!

カロル・ヴェイル: こちらこそ、ワークショップへようこそ。「スウォッチ」は、当館の歴代スポンサーのうちの1社で、今回のワークショップも「スウォッチ」の協力で実現したものなの。彼らと一緒に、若者を支援するワークショップを開催できて、本当に光栄よ。

『Who watches What?』ワークショップの様子

ワカペディア: ペギー・グッゲンハイム美術館に展示されている洗練されたアートと、「スウォッチ」のポップさが上手く調和されたワークショップでしたね。それにしても、なぜ若者を対象にしたのですか?

カロル・ヴェイル: アートはね、ただ美的感覚を刺激するものではなく、人の役に立つし、(私達の心を潤す)良質なものなの。そして、私達に物事をより深く考えさせるきっかけを与えてくれるものであると、若い人達に知って欲しかったのよ。だから、16歳から25歳を対象にしたこのプロジェクトは、私たちにとっても意味のあるものだったわね。今回のようなワークショップでは、それぞれが抱える課題に対して、乗り越えるための方法を提案してきたの。だからこそ、今回の『Who watches What?』を含む4回に渡るワークショップのタイトルには、『克服』(正式名称: Overcoming: Art Practices for the New Normal)という単語が含まれているのよ。

ワカペディア: 確かにアートに触れると、そこから新しい感情やエネルギーが生まれたり、違う考え方に気づけたりしますよね。ワカペディアメンバーも、これまで多くのアートやアーティストと出会ったことで、沢山の刺激を受けてきました!物事の見え方が変わることで、自然と解決策が見えてきたり、自分達の内面の成長に繋がるんですよね。

カロル・ヴェイル: その通り!このワークショップは、ただ他の若者やアーティストと繋がるだけでなく、アートとの関わりを通して、自分自身を知るツールでもあるのよ。こうしたワークショップが更に浸透し、彼らの日常における課題を克服する鍵となる事を願っているわ。

若者たちと一緒にワークショップ

ワカペディア: そういえば、人との直接的なコミュニケーションが極端に減った今の若者は、社会で気づきを得る機会が減っているように思いますが、このようなワークショップでは、人と関わることの重要性を再確認できるでしょうね。私たちワカペディアにとっても、とても深く考えさせられたワークショップでした!(25歳未満ではないけど、ギリギリ若者枠で発言希望)

カロル・ヴェイル: そう言ってくれて嬉しいわ、ありがとう。

ワカペディア: 次のワークショップも楽しみにしてますね。今度は私達も参加したいので、是非若者枠を広げてもらえたら嬉しいです!(笑)

アートとアーティスト、そしてそれらを支える人々との繋がりで見えてきた、様々な思い。人々と直接触れ合う中で再確認できた、自分達の原点。アートを通して得た気づきを噛み締めながら、出口へ向かって歩き始めた時、スタッフの声が聞こえてきた。「ご来場、ありがとうございました」

WRITER PROFILE
Wakapedia

ワカペディアは、異文化交流の促進を目的としたトータルサイト。 設立者のサラワカは、日本人の両親の元ミラノで生まれ育ち、ロンドン、パリ、東京、イタリアでは、のちにワカペディアのオフィシャルメンバーとなる個性溢れる5名(GIULIA BISON, FEDERICA FORTE, YURIE N, YOKA MIYANO, CAMILLE BRUNET) と出会った。#CULTURECANBEFUNをモットーに、言語の壁を超え、アートやファッションをはじめとする様々な文化情報を、ユーモアを交えて発信している。 また、活動の一環として、世界的に有名なアーティストや著名人へのインタビューの他、企業のクリエティブコンサルティング、デジタルコンテンツの作成や記事の執筆なども手掛けている。 これまで担当したプロジェクトは、BRUTUS、ELLE JAPAN、L’OFFICIEL MAGAZINE、PLAYBOY ITALIA、POPEYE、TOILETPAPER MAGAZINE、VOGUE JAPAN等。