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フランシスコ教皇|その功績を振り返る

Katsuya Takahashi

2025.05.05

フランシスコ教皇(2015年)【WIKIMEDIA COMMONS】

2025年4月21日、キリスト教カトリック教会のローマ教皇庁(ヴァチカン)は、フランシスコ教皇のご逝去を発表(享年88歳)。
4月26日には、ヴァチカンの聖ペトロ広場において、多くの人々が見守る中、葬儀のミサが厳かに執り行われました。
2013年3月、第266代ローマ教皇に就任して以来、カトリック教会の最高位聖職者として、様々な分野で活躍されたフランシスコ教皇。
今回は、フランシスコ教皇について、また残された言葉についてご紹介します。

美しい夕日に照らされたヴァチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂。

とても珍しい欧州以外出身の教皇

イタリアのローマ市内に位置するヴァチカン市国。人口618人(2023年)の世界最小の独立国家であり、カトリック教会の総本山であるサン・ピエトロ大聖堂が位置するこの国の元首として、2013年から12年にわたり、大いなる活躍をされたフランシスコ教皇。

出身地はアルゼンチン・ブエノスアイレスで、北アメリカ大陸並びに南半球初の教皇として広く知られています。
さらに、欧州以外の生まれで教皇になったのは、741年に逝去されたグレゴリウス3世以来ということで、就任当時より世界各国から大きな注目が集まっていました。

【WIKIMEDIA COMMONS】

質素と謙虚を重視

教皇に就任した2013年3月、聖ペトロ広場を見渡すバルコニーに姿を現したフランシスコ教皇。しかし、その姿は華やかな祭服ではなく、質素な白い服装でした。
その姿勢はその後も貫かれており、壮大な豪華絢爛よりも、質素と謙虚を重視。
教皇専用のリムジンの利用を避け、枢機卿たちを執務室から居室に送り届けるバスに同乗していたそうです。

さらに、12億人を超えると言われる信者たちに対して「貧しい者のための、貧しい教会を望んでいる」と述べていました。

ちなみに「フランシスコ」という名前は、13世紀に清貧と平和を説き、生きとし生けるものを愛せよと教えたアッシジの聖フランチェスコにあやかって名付けたと言われています。
質素と謙虚を重んじるこの姿勢は、敬愛する聖フランチェスコに倣ったものと言われています。

【WIKIMEDIA COMMONS】

入退院を繰り返した12年間

脳卒中とそれに伴う心不全により、ご逝去されたフランシスコ教皇。
教皇となってからの12年間は、大いに活躍されるとともに、病気との戦いの日々でもありました。
フランシスコ教皇は、過去には重い肺炎を患い、21歳の時に肺の一部を摘出。そのため細菌やウイルスなどによって引き起こされる肺炎にかかりやすかったようです。
それもあって、教皇就任後、何度も入退院を繰り返していました。
今年2月には、感染症による重度の肺炎で入院し、5週間の治療を経て退院したばかりでした。

その後、数週間、公の場に元気な姿を見せていたフランシスコ教皇でしたが、伝統行事をはじめ、いくつかの予定を欠席。

亡くなる前日の4月20日には、復活祭の式典のため、聖ペトロ大聖堂のバルコニーに車椅子に乗って登場し、広場に集まった群衆を前に祝福の弁を述べていました。
また、復活祭のメッセージの中で教皇は「信仰の自由がないところ、思想や言論の自由、他者の意見に尊重がないところに、平和はありえません」と述べるとともに「世界各地の様々な紛争の中で、どれほど多くの死が望まれていることでしょうか」と、現在の世界情勢に対する嘆きともいえる言葉を通して、平和を呼びかけるコメントを残していました。

【WIKIMEDIA COMMONS】

率直でわかりやすい言葉が印象的

初の中南米出身者として、ヴァチカンの改革に挑み続けてきたフランシスコ教皇。
インタビューや談話、そしてSNSを通じて、様々な問題に率直な意見を発表していたことでも有名です。これまでの教皇からは決して発せられなかったコメントや発言から、カトリック教徒はもちろん、幅広い人たちから高い人気を誇っていました。
なかでも、フランシスコ教皇ならではの印象的なコメントをいくつかご紹介します。


「神の名のもとに憎しみをいだいてはなりません。神の名のもとに戦争をしてはなりません」 (2014年10月8日)


「教会における女性は、司教や司祭よりも重要な存在です」 (2013年6月28日)


「私は神を信じていますが、カトリックの神ではありません。なぜなら、カトリックの神などいないからです。おられるのは神だけで、私が信じるのはイエス・キリスト、つまり、人間の姿を借りて、この世に現れた神です」 (2013年10月1日)


「心の中に、亡くなられたおじいさんや、おばあさんとの思い出がありますか? 彼らは、家族の知恵のようなものであり、まさに人類の知恵なのです」 (2013年10月26日)


「真の愛は、愛すると同時に愛されることです。愛を受け取ることは、愛を与えることより難しいものです」 (2015年1月18日)


「扉を開いて歓迎し、受け入れるばかりの教会ではなく、新たな道を見いだす教会にもなろうではありませんか。(中略)信仰を捨てた人や信仰に関心のない人たちのために」 (2013年9月30日)


これから行われる「コンクラーベ」で、どのような次期教皇が選出されるのか、世界中から注目が集っています。しばらくは、ヴァチカン市国のニュースから目が離せない日々が続くことでしょう。


これまで、様々な実績や数々の名言を残されたフランシスコ教皇。

ヴァチカンやヨーロッパはもちろん、世界各国に与えたその功績は、計り知ることはできません。
フランシスコ教皇のご冥福を、心よりお祈りいたします。