毎年4月に開催され、世界のデザインとインテリアの潮流を決定づける「ミラノデザインウィーク」。1989年の創業時から参加しているArperの展示は、会期中24,000人の来場者を迎え、高い評価を獲得しました。
Arper Japanで開催された「Milano Salone 2026 報告会」
6月2日、東京・青山にあるアルペール ジャパンにおいて、「Milano Salone 2026 報告会」が開催されました。はじめに登壇したのは、営業本部長 宿南幸江さん。本会場ミラノサローネを含む「ミラノデザインウィーク 2026」を視察し、自ら体感したデザイントレンドについて解説しました。

さまざまな課題を抱える時代だからこそ、ゴールド、ブルーやイエローなど、明るいカラーをアクセントとして取り入れて楽しさを表現した空間。歴史への敬意を感じさせる復刻モデルやオマージュ作品。伝統技術や職人技をクローズアップしたクラフトマンシップ。宿南さんの視点から、多様なトレンドが見えてきました。
また、製品単体ではなく空間全体でメッセージを伝える取り組みが数多く見られ、市内展示からミラノサローネ本会場へ戻るブランドもあったことが報告されました。「ミラノデザインウィークは単なる展示会ではなく、世界へ向けてブランドの考え方や価値観を発信する場であることを、改めて実感しました」。
さらに、歴史的な建造物を舞台に過去と現在が共存するAlcova、サステナビリティを実際のデザインとして成立させていたRossana Orlandiの展示など、各展示のレポートによって、宿南さんのプレゼンテーションは締めくくられました。

「Reconnecting 再接続」をテーマに人と空間の関係を見つめ直す
続いて登壇したマーケティング&ストラテジー マネージャー新井眞由子さんのレポートは、Arperの展示について。Arperは1989年の創業以来、継続してミラノサローネへの出展を続け、現CEOのクラウディオ・フェルトリン氏は、イタリア家具工業連盟の会長も務める重鎮。「Arperにとってミラノサローネは単なる展示会ではなく、ブランドの価値観や未来へのビジョンを発信する、極めて重要な舞台となっています」。

2026年、Arperのテーマは『Reconnecting 再接続』。「Arperは家具が主役とは考えていません。空間や、そこで過ごす人々こそが主役であり、家具はその体験を支える存在であるという考え方を大切にしています。『Reconnecting』というテーマには、人と人、人と空間、人と環境との関係を改めて見つめ直そうという思いが込められています」。

ミラノサローネ本会場の入り口近く、広々としたスペースでの展示は、5つのテーマで構成されていました。
新製品を中心に構成された『Reconnecting with Presence-今との再接続』、図書館やリサーチスペースをイメージした『Imagination-創造性との再接続』、人が集まり、対話を通じて価値観や目的を共有するための『Purpose-目的との再接続』、コンサートホールをイメージした空間でハープが奏でられた『Wonder-好奇心との再接続』、偶然の出会いや新しい発見が生まれる場『Possibility-可能性との再接続』。

どの空間も、常に多くの来場者でにぎわい、製品を実際に触ったり座ったりしながら体験する姿が数多く見られました。
Arperの企業姿勢を物語るRedefining Beauty
「特別展示エリア『Redefining Beauty-美の再定義』は、近年Arperが継続して取り組んでいるテーマの一つです」。これからの時代における美しさとはなにか。その問いに対して、新しい素材や新しい技術によって答えを探る試みが紹介されていました。
とくに注目を集めたのが、接着剤を使用しない新しい張り込み技術です。この技術によって、製品の分解やリサイクルが容易になり、環境性能とデザイン性を両立する新たな可能性が示されました。
今年発表された新製品の一つが、ソファコレクション『AOM』。ヨガの呼吸法『オーム』に由来し、多忙な現代社会の中で、自分自身と向き合う静かな時間を提供することをコンセプトに開発されました。
最大の特徴は、一般的なソファに多用されるポリウレタンを使用していないこと。代わりに東洋紡の高機能素材「ブレスエアー」を採用し、さらに接着剤を使わない構造によって高いリサイクル性を実現しています。環境性能と快適を両立した、新しい時代のソファの誕生です。

もう一つ注目されたのが、Arperのサステナビリティを象徴する「CATIFA CARTA」。人気シリーズCATIFAのシェル部分に紙由来の素材を使用し、木材由来の再生可能資源を活用しながら、高い強度と美しいデザインを両立しているモデルです。
今回は、100%リサイクルプラスチック製シェルへの接着剤不要の張り込み技術も発表。循環型社会のためのさらなる進化が注目を集めました。そして、このCATIFA CARTA」が、イタリアで最も権威あるデザイン賞の一つ『Compasso d’Oro』の特別賞を受賞。Arperが長年取り組んできたサステナビリティへの姿勢、デザインへの探究心が国際的に認められた結果と言えるでしょう。

「ミラノサローネの展示を通じて改めて感じたのは、Arperが単に家具を販売するブランドではないということです。家具を通じて人と人、人と空間、人と環境をつなぐ。そして、新しい働き方や暮らし方の可能性を提案する。その姿勢が『Reconnecting』というテーマを通して非常に明確に表現されていました」と語った新井さん。
ミラノサローネは、製品を発表する場であると同時に、ブランドの未来を示す場でもあります。Arperの展示は、未来へのメッセージとして強く心に響きました。
Arperが生まれた美しい街トレヴィーゾ
最後に登壇したA&Dセールスマネージャー 竹田仁美さんがレポートしたのは、Arper ミラノショールームとトレヴィーゾにあるArper本社のショールーム、そしてトレヴィーゾの街について。

中庭を中心に自然光と植物を取り入れ、ウェルビーイングなワークプレイスが印象的なミラノショールーム。赤や黄色、グリーンなど鮮やかな色彩が使われ、実際の活用シーンを具体的にイメージできるArper本社のショールーム。ミラノサローネの展示とは違う、リアルに活用しやすい空間デザインが提示されていました。

本社のあるトレヴィーゾは、ヴェネツィア近郊の古都。歴史的な街並みが美しく保存され、運河もあるため『小さなヴェネツィア』という印象です。繊維や皮革など職人の手仕事が受け継がれ、なんとあの『ティラミス』の発祥地!Arperスタッフも、ティラミスが生まれた店で召し上がっていました。ITALIANITY読者の皆さんも、ヴェネツィアに行ったらぜひトレヴィーゾまで足を伸ばし、Arper本社のショールームを訪れてください。

『ミラノデザインウィーク 2026』のレポートで感じたのは、デザインが単なる『ものづくり』ではなく、『価値観を伝える手段』へと進化していることです。Arperもまた、『Reconnecting』というテーマを通じて、人と空間、人と人との関係を改めて見つめ直す提案を行っていました。

ミラノデザインウィークは、世界中のブランドやデザイナーが未来について提案し、そのアイデアを世界各国のゲストが共有し、世界へと広げていくデザインハブ。来年はどんな潮流が生まれるのか、いまから楽しみです。