サン・ミニアートはピサとフィレンツェの間に位置する、トスカーナ州の歴史深い町。サン・ミニアート周辺は世界有数の白トリュフの名産地として知られ、1954年には世界最大級(2.52kg)の白トリュフも発見されました。
トスカーナの森が育む白トリュフ
豊かな森とブドウ畑、粘土質の土壌、穏やかな気候が生む奇跡の産物の白トリュフは、「トリュフ猟」のエキスパートたち(犬とともに夜明けの森を歩く猟師)が、静寂と共にトリュフを探し出します。
秋になると、黄金色に輝く美しい紅葉と白トリュフの芳香がサン・ミニアートの街中を包み込みます。毎年11月、この町にはイタリア各地から美食家が集まり、「サン・ミニアートの丘”白トリュフ祭”」が開催されます。

幻の白トリュフづくし豪華ディナー、白トリュフ祭り発表会
今年で54回目を迎えるこのイベントは、単なるグルメフェアにとどまらず、地域の伝統やイタリアの誇りを祝う特別な祭典です。白トリュフ祭りの開催発表イベントはサン・ミニアートの観光名所ペガソ宮のサッソリ・メディアセンターで行われ、トスカーナ州知事エウジェニオ・ジャーニ氏や、サン・ミニアート市長シモーネ・ジッリオーリ氏らが勢揃いし、地元団体も一体となって盛り上げます。

今回はこの白トリュフ祭り発表会に招待していただき、幻の白トリュフづくしの豪華ディナーを堪能してきました。ディナーの内容も豪華そのものですが、仮設とは思えないディナー会場のゴージャスなテーブルセッティングとラグジュアリーな雰囲気にも圧倒されました。

ディナーを監修し手掛けたのはサン・ミニアートの白トリュフの良さを熟知している地元サン・ミニアートにあるレストラン「Papaveri e papere(パパヴェリ・エ・パペレ)」。幻の白トリュフざんまいのコース料理のメニューは以下の通り。
●Fondente di zucca, Uovo Morbido e Tartufo Bianco delle Colline Sanminiatesi
サンミニアート丘陵地方産白トリュフ添え かぼちゃのフォンダンととろとろ半熟卵

白トリュフを味わう最もポピュラーな一品は卵と一緒にいただくこと。初めて白トリュフを味わう方にとっては、この食べ方は外せません。絶妙の調理具合のとろとろ半熟卵とのハーモニーが最高で、白トリュフの香りを最大限楽しめました。
●Gnudi Di Ricotta e Pecorino, mentecati al burro d’Alpeggio e Tartufo Bianco delle Colline Sanminiatesi
リコッタチーズとペコリーノチーズのニョッキ風(ニューディ)、アルプバターソースとサンミニアート丘陵地方産白トリュフ添え

トスカーナの伝統料理であるニューディと白トリュフの組み合わせが印象的な一品。芳醇な白トリュフの香りを邪魔しないバターソースとの相性も抜群でした。
●Filetti di Suino brado CBT, Pure’ di patate, salsa ai funghi e Tartufo Nero
低温調理した野生豚のフィレ肉 ポテトピューレ、きのこソースと黒トリュフ添え

やわらかしっとりな豚肉とサクサクっとした黒トリュフの食感のコントラストが魅力的なメイン料理。きのこソースと黒トリュフという秋の味覚がつまった味わい深い一品です。
●Torta al cioccolato con gelato alla crema e Tartufo
トリュフが香るカスタード風味ジェラート添えチョコレートケーキ

もちろんデザートにもトリュフ !カスタードクリーム風味ジェラートを口に入れるとふんわりトリュフの香りが広がり幸せいっぱいな気持ちでディナーをしめくくることができます。
豪華な時をゆっくり愉しむイタリア流ディナー
そして、驚くのは豪華さだけではありません。開催時間にもイタリアらしさが表れています。このディナーが始まったのは、なんと夜9時を過ぎてから。関係者のスピーチやトリュフ収穫の紹介映像を挟みつつ、ゆっくりとしたテンポで料理が運ばれ、終了は日付をまたいで深夜0時を回りました。しかも平日の開催だったにもかかわらず、皆さん翌日も普段通り出勤されます。イタリアの方々は夜更かしに強いのでしょうか……。

日本の場合、イベント後は二次会や三次会と飲み会が続くことが多いですが、イタリアのディナーは一回がとても長く、これ自体が最大の社交の場となっています。こうした“時の流れ”の違いにも、文化の豊かさとイタリアならではの魅力を感じます。
街全体が白トリュフで盛り上がる祝祭に染まる3週間
11月15日から30日にかけて、サン・ミニアートは3週連続で白トリュフづくし。町内外の約30自治体が連携し、文化・味・おもてなしに触れられる「トスカーナ五感の旅」を体験できます。

期間中はサン・ミニアートの歴史ある広場―ポポロ広場、サン・ドメニコ回廊、ダンテ広場、ドゥオーモ広場など―に100を超える出店が賑わい、白トリュフや地元ワイン、チーズ、サラミ、伝統スイーツが並びます。どのレストランでも特別メニューが登場し、由緒ある石畳の道を歩くと、トリュフと新酒ワインの芳香が漂い、アコーディオンの音色が秋の光に映えます。
このフェスティバルは単なる市場を超え、トスカーナ流「生きる美学」に触れる体験。夕焼けの散歩や試食、地元生産者との語らいを通して、時の流れに身を委ねながら “本物のイタリア” を堪能できます。
2025年11月15日から30日、ぜひサン・ミニアートの白トリュフを求め、味・香り・歴史・文化の旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
サン・ミニアート&白トリュフ祭り情報(イタリア語&英語)
https://www.sanminiatopromozione.it
ちなみに、イタリア語ではトリュフのことを「Tartufo=タルトゥーフォ」といいます。白トリュフはタルトゥーフォ・ビアンコ、黒トリュフはタルトゥーフォ・ネロ、そしてサマートリュフはタルトゥーフォ・エスティーボといいますので、次回のイタリア旅行の際にメモしてご活用くださいませ !
フィレンツェ在住の筆者のインスタグラムでは、動画を中心にお伝えしますので、あわせてこちらもご覧ください。
https://www.instagram.com/makokobayashi_firenze
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